アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

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第十二章 王様編其の三 猫の国の発展にゃ~

319 試乗会にゃ~

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 さっちゃんの誕生日パーティーに出席すると、女王とさっちゃんにプレゼントをおねだりされ、わしは困りながらプレゼントを取り出す。

「まぁ着物を先に渡してしまっていたから、わしも物足りないと思っていたにゃ。これ、あげるにゃ~」

 そう言って、部屋の隅に次元倉庫からプレゼントをドーンと置く。

「これって……シラタマちゃんの家にある畳??」
「そうにゃ。にゃん枚用意していいかわからにゃかったから、三十枚用意したにゃ」
「そんなに!? ずっと欲しかったんだよ~。ありがと~う!」
「にゃ!? ゴロゴロ~。もうちょっとあるにゃ」

 今度はテーブルの上に、みたらし団子と日本酒、甘酒を取り出す。すると、女王が反応する。

「これって、キャットトンネルで売っているお菓子?」
「女王は耳が早いにゃ~」
「聞いた話では、変わった食感と味で、人気らしいわね」
「わしも聞いただけにゃけど、売れてるみたいだにゃ。みんにゃもどうぞ~。あ、透明な飲み物はお酒だから、子供はこっちにゃ~」

 皆も食べたそうに見ていたので、みたらし団子と甘酒を勧める。皆が美味しそうに頬張る中、一通り飲み食いした女王が尋ねて来る。

「どれも、なかなか面白い味わいね」
「全部、最近製造した、猫の国の特産品にゃ~」
「はは~ん。プレゼントと言いながら、私達で反応を見ようとしたのね」
「にゃはは。ご明察にゃ。この国に無いから、売れそうにゃろ?」
「まったく……商魂たくましいわね」

 わしと女王が話をしていると、さっちゃん達は積んである畳を広げ、そこに座ってお喋りをしている。なので、皆が離れている内に、女王にあの件を切り出す。

「そうそう。捕虜の返還の件にゃんだけど……」
「こんな祝いの場でする話?」
「特産品の話が出たからついでにゃ」
「ついででする話でも無いわよ……」
「まぁまぁ。それでタダにしてくんにゃい?」
「出来るわけないでしょ」
「いんにゃ。女王にゃら、したくなると思うにゃ~」
「どうしたらタダにしたくなるのよ……」
「わしの話を聞けばにゃ」

 女王は交渉に挑む鋭い目に変わり、わしはニヤニヤして言葉を続ける。

「そろそろビーダールでの出来事が、女王の耳に入っているんじゃないかにゃ~? にゃあにゃあ?」
「ビーダール? まさか……凄い速さで走る蛇のような乗り物……」
「にゃははは。やっぱりにゃ~」
「くっ……やはりシラタマが関わっていたのね」
「欲しいんじゃないかにゃ~? にゃあにゃあ?」
「にゃあにゃあ、うるさ~い!」

 ちょっと調子に乗り過ぎて、女王に怒られたわしであったが、質問には答えてあげる。

 どうやらビーダールのキャットトレインは、各国の話題のひとつで、さっちゃんの誕生日パーティーでもまことしやかな噂話として盛り上がっていたそうだ。
 動力のわからない蛇のような乗り物が走っているのだから、初耳の者は信じられないのであろう。だが、女王とさっちゃんは車に乗った事があるので、真っ先にわしの顔が浮かんだらしい。
 当然、双子王女に連絡を取って確認していたようだが、猫の街で手いっぱいな双子王女では、他の街で行われている事を知らないので情報は手に入らず、わしの線は微妙だったようだ。
 バハードゥには素直に聞いてみたが、開発者は国家機密となっていたのでわからずじまい。その代わり、性能の素晴らしさを懇々こんこんと説明されたようだ。
 もちろん、他国から聞かれたら、性能を盛って説明してくれとわしから頼んでいた。


「にゃ~? 欲しいにゃろ~?」
「欲しいわよ! 喉から手が出るほど欲しいわよ!!」
「にゃはは。一台持って来たから、プレゼントするにゃ~」
「本当!?」
「だから、捕虜をタダで返してくれにゃ」
「交換ってわけね……それなら、一台では足りないわ」
「いんにゃ。プレゼントは、一台だけにゃ。もっと欲しいにゃら、お金を払ってもらうにゃ」
「捕虜で払うって言ってるでしょ!」
「興奮するにゃ~。まずはわしの話を聞いてくれにゃ~」

 わしは女王をなだめると、これから行う事を丁寧に説明する。
 まず最初に線路を引くのは猫の国からビーダール海までの直通便。そして、特に必要無いのだが、西の国とその先の小国へと線路を伸ばす。
 どれも他国を跨ぐ大プロジェクト。ここで問題となるのが、利権と他国を仲間に引き入れる交渉だ。大国どうしが手を組んでくれるなら、すんなり話が進むのだが……

 わしの話を聞き終えた女王は、ゴクリと息を呑む。そして、深く考えてから声を出す。

「つまり、東の国が手綱を握って、このプロジェクトを成功させろと?」
「そうにゃ。一からルールを作るんにゃから、女王のやりたいように出来るにゃ。そうにゃったら、お金だっていっぱい手に入るにゃ~」
「たしかに……人や物が頻繁に動くんだから、これまでに類を見ない額のお金が動くわね」
「にゃ~? その権利を譲るんにゃから、捕虜の身代金にゃんて、些末さまつな額にゃ」
「うっ……私が身代金に固執すれば……」
「この話は無しにゃ。キャットトレインも輸出を取りやめ、猫の国とビーダールだけで使うにゃ」
「あ~~~! もう!!」

 女王は突然叫び、わしを雑に撫で回す。皆も女王の取り乱した姿を見て、心配そうに眺める事しか出来ない。
 部屋の中には、ゴロゴロと喉を鳴らすわしの音しかなくなり、しばらくして、女王が口を開く。

「わかったわよ。無償で返還に応じましょう」

 よし! これでかなり安くで捕虜が返って来る。実質は、白魔鉱の大剣と合わせて三分の一の出費ってところかな?

「さすが女王にゃ! 決断が早いにゃ~」

 女王は怒りの表情、わしはニヤケ面で握手を交わす。そうすると、さっちゃんが不思議そうな顔で質問する。

「シラタマちゃん。お母様と何を話していたの?」
「捕虜をにゃ、タダで返してもらえる事になったにゃ~」
「え……うそ……」

 さっちゃんは言葉に詰まるので、これまでの経緯を話す。すると、キャットトレインを今すぐ見たいとおねだりが始まり、女王も見たいのか、明日、お披露目となった。
 さっちゃんの誕生日パーティーはもうしばらく続き、ほとんどモフモフパーティーとなって夕刻、お開きとなる。
 パーティーが終われば別れの挨拶を丁寧にして、わし達は家に帰る……

 ガシッ!

 さっちゃんと女王に尻尾を掴まれ、わしとコリスはお泊まりする事となった。
 いちおうは外交なのでリータとメイバイに送り出され、女王の寝室で寝るが、さっちゃんがコリスの下敷きになって苦しそうな、嬉しそうな、声を出していた。


 そして翌朝、わしは早くに目を覚まし、女王のふくよかな物から抜け出そうと、女王を起こす。すると女王は、強くわしを抱き締めるので、準備があると言い聞かせてコリスの事を頼む。
 女王はどうしていいかわからないと言うので、目を覚ましたら美味しい物を食べさせて、わしの事を説明したら問題ない旨を伝える。コリスは言葉も勉強しているし、念話も使えるので大丈夫だろう。

 その後、バルコニーから飛び出し、屋根を飛び交い東門から外に出ると、東に向けて線路を引いて行く。土魔法で穴を掘り、マーキング。その上から土を被せて道を整備。
 2キロほど線路を引くと走って戻り、我が家に顔を出す。リータ達には朝ごはんが終わったら東門に来るように言って、いそいそと城に戻る。
 門兵に女王の元まで案内してくれと頼んだが、どこに居るかわからないらしく、勝手に食堂に行くと言って走る。止まれと言われたが、忙しいので置いて行くしかない。

 食堂では予想通り、女王達は食事中だったのでわしも勝手に座り、多く積んであるパンを鷲掴みにして頬張る。行儀が悪いと言われたけど、パンとはこうやって食べる物じゃ。
 女王に怒られたので、反省してモグモグ。わしの態度に諦めた王族の乗る馬車でわしとコリスは東門に運ばれると、そこには多くの人が集まっていた。

「にゃんか人が多くにゃい?」
「サティのパーティーに出席していた者にも声を掛けたのよ。宣伝するには、ちょうどいいでしょ?」
「にゃるほど~」

 だから、綺麗な服を着ている人が多いのか。子供は、領主の子供や他国の子供かな? これなら、宣伝にはバッチリじゃな。女王はわしを商魂たくましいと言ったが、女王も捨てたもんじゃないな。


 馬車が東門から離れると、わしの指示で線路まで移動する。そこでリータ達を探したら、すぐに発見した。黒猫ワンヂェンがいるのだから当然だ。
 猫騒動が起こっている場所まで皆を呼びに行き、線路まで連れて来ると三両編成のキャットトレインを取り出す。
 東門に集まった者は、突然大きな物体が現れたので、騒ぐ声は大きくなる。もちろん、さっちゃんと女王も驚いていた。

「シラタマちゃんの車よりおっきいのね」
「まぁ大人数、大量の物を運ぶ乗り物だからにゃ」
「でも、蛇と言うには短いわね。ビーダールとは形が違うの?」
「ああ。ビーダールではサービスして、十両編成にしているにゃ」
「うちにはサービスはないんだ……」
「東の国は、キャットシリーズの馬車があるにゃろ? 貨物部分は設計図を回す予定にゃから、増やそうと思えばここで作れるにゃ」
「あ……それは他国に売ってもいいの?」
「にゃ~? おいしいにゃろ~?」
「ホントに……」

 動力部は譲れないが、その他はやってもらわないとうちが困る。何両も作るとなると、人手も資材も全然足りない。早い普及を狙うなら、他国の協力は必須じゃ。
 それにうちの国だけ儲けてしまうと、他国と軋轢あつれきが生まれてしまう。女王に任せておけば、他国との折り合いをつけた利益分配も考えてくれるじゃろう。ぶっちゃけ、そこが面倒じゃから、全て女王に丸投げじゃ。
 せっかく便利な乗り物を作ったんじゃから、こんな事で大戦の引き金になっては困るからのう。


「それじゃあ、乗りたい者を集めてくれにゃ」

 女王が騎士に指示を出している間に、猫の国組は先頭車両に乗り込ませる。コリスも乗り込んだから少し狭くなるが、王族ぐらいなら余裕を持って乗れる。
 その後、乗りたい者を数十人、二両目に並んで乗り込ませると、王族を先頭車両に乗せて、わしはヤーイーに出発の指示を出す。

「ヤーイー。練習通りにやれば大丈夫にゃ。出発進行にゃ~」
「はい!」

 ヤーイーはわしの指示を聞いて、レバーを上げる。するとキャットトレインはゆっくりと車輪が回る。そしてスピードが上がると、二段、三段とレバーを上げ、さらにスピードが上がる。
 王族は緊張の面持ちでヤーイーと前方を眺め、スピードが徐々に上がると興奮した声を出す。

「すごいすごい!」
「シラタマは何もしていないわね……」
「当たり前にゃ~。誰でも操縦できるのは、これで立証できたにゃろ?」
「わたしでも出来るの!?」
「さっちゃんは、ちょっと無理かにゃ~?」
「なんでよ~!」
「王女様だからにゃ~!」

 さっちゃんとケンカをしていたら、線路を作った終着地点近くに来たので、ヤーイーにゆっくり止まるように指示を出す。
 徐々にスピードが落ちて完全に停止すると、先頭車両に乗っていた者は三両目に移動して、王都に向けて発進。
 王都に着けば、運転手のヤーイーを残し、操縦の仕方の講習と試乗会を開催する。わしはその間、線路の作り方や魔力の補充の仕方、整備方法を教え、女王と今後について話し合う。

 キャットトレインに乗り込んだ者は若干の不安と驚きの表情のあと、降りる頃には笑顔となって、試乗会は大盛況のまま幕を閉じるのであった。
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