アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

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第二十五章 アメリカ大陸編其の四

703 時の賢者記念館のアトラクションにゃ~

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 時の賢者に恥を掻かされたわしは涙目。しかし目の前の壁が開いたので、わしはリータとメイバイに手を引かれて真っ白な小部屋に連れ込まれた。

 「残念な猫王」略して「ニャーニャー」って……略し方、諦めましたよね? あと、その日本語遊びって、他の人に流行らせたりしてませんよね? 女王もやってたんですが……

 「ニャーニャー、ニャーニャー」言う皆はわしの質問には答えてくれず、バカらしくなって笑いに変わった頃に目の前の壁が開いた。

『さあ、ここからはアトラクションフロアです。各地で手に入れたクリスタルスカルを一人一個持って、前方の台座に近付いてください』

 いつものアナウンスが流れると、わし達は少し進んで話し合う。

「クリスタルスカルが、ここの入場券ってことかにゃ?」
「「「「「………」」」」」
「にゃんか答えてにゃ~」

 皆はわしのように恥を掻きたくないからか口を閉ざすので、とりあえずクリスタルスカルを配ってみたが、一個足りない。

「わしの分が無いんにゃけど……」

 配る順番を間違え、最後がオニヒメだったので、アトラクションに参加したいとお願いして来たからお父さんが我慢するしかない。
 皆も目を合わせてくれないので仕方がない。真っ白で見えづらいが、前方に台座があるのを信じて近付くリータ達のあとをわしも追う。

「ようこそ! 時のダンジョンへ、だよ~!!」
「「「「「わっ!?」」」」」

 台座が確認できた瞬間にパカッと開いて、背中に羽が付いた20センチぐらいの幼女が現れたので皆は驚いた。

「シラタマさん……なんですかこの子? 羽が生えてますよ??」
「かわいらしい服も着てるニャー。妖精ってやつニャー?」

 リータとメイバイが質問してくれたので、わしはここぞとばかりに知識を披露する。

「これはゴーレムだにゃ。妖精の形をした魔道具みたいにゃ物を作り出したんにゃろ」
「ノンノンノン。ノルンちゃんはゴーレムじゃなくて、妖精のノルンちゃんだよ」

 しかし、プログラムされているであろう妖精は自己紹介を始めたので、わしは首を傾げる。

「にゃあにゃあ? いま、こいつ、受け答えしにゃかった?」
「こいつじゃなくて、ノルンちゃんだよ」
「にゃ!? やっぱこいつ……」

 わしが皆に質問しているのに、ノルンは圧が強く、わしの眼前に徐々に近付いて来る。

「ノルンちゃんだよ」
「ほら? こいつ……」
「ノルンちゃんだよ」
「ノルンが受け答え……」
「ノルンちゃんだよ」
「ノルンちゃんが受け答えしたよにゃ?」

 わしの目の前まで近付いたノルンの目がダーク過ぎて怖かったので、わしは正式な名前を呼んだら空をパタパタ舞って離れてくれた。

「ノルンちゃんは自立式ゴーレムだから、受け答えぐらい余裕なんだよ」
「あ、やっぱゴーレムだったんにゃ……」
「ノルンちゃんだよ」
「さっき自分で自立式ゴーレムって言ったにゃ~」
「あっ! ……てへ。きゃはははは」

 ノルンがわしのツッコミをかわいこぶりっこと笑いで誤魔化している内に、リータ達と喋る。

「にゃんかまた変にゃのが出て来たにゃ~」
「でも、凄いですね。人と喋っているようです」
「どうやって動いてるんだろうニャー?」
「あ~……そう言えば、フロアが変わる度に魔力濃度が増えてるにゃ。吸収魔法の魔道具でも搭載されてるのかにゃ~?」
「ノルンちゃんのスリーサイズは秘密なんだよ」

 わし達が喋っているとノルンがパタパタ飛んで邪魔して来るのでうっとうしい。

「誰がスリーサイズにゃんか聞いたんにゃ~」
「ノルンちゃんの体のこと喋ってたんだよ」
「それは動力の話にゃ。スリーサイズってのはだにゃ。胸の大きさとかにゃ~。じゃあ、胸囲はにゃんセンチ?」
「セクハラ発言ハ殺シマス」
「こわっ!? にゃんで急に機械的になるにゃ!?」

 スリーサイズにまったく興味は無いのだが、どう受け答えするか気になったので聞いてみただけなのに、ノルンは声質がまったく変わったのでめっちゃ怖い。
 リータ達も怒っているみたいだったので、わしが誠心誠意謝罪したら、どちらからも許しが出た。

「そろそろダンジョンの説明をしてもらってもいいかにゃ?」
「あっ! すっかり忘れてたんだよ。一回しか言わないから、耳の穴をよくかっぽじって聞くんだよ~?」
「意外と口が悪いにゃ~」
「返事は『イエスマアム』だけなんだよ!」
「はいにゃ~」
「じゃあ、説明するんだよ~」
「『イエスマアム』は、いいにゃ??」

 わざと違う事を言って試したのに、ノルンは無視。説明を始めた。

 時のダンジョンの概要は、地下10階までのフロアを踏破すること。各フロアには迷路や罠があり、モンスター型のゴーレムも出現する。その迷路を抜けるとフロアボスが待ち構えており、倒したら豪華景品を貰えるそうだ。
 一階ごとに難易度や景品のランクが上がるので、限界を感じたら戻るほうが無難らしい。ただし、次に挑戦する場合は景品のランクは下がるし、一点物は早い者勝ちのようだ。

「最後に、怪我や死んだ場合は、当施設は一切関与いたしませんのであしからず。賠償金も慰謝料も発生しませんので気を付けてください」
「にゃんでそこだけ語尾に『だよ』付けないにゃ?」
「では、挑戦者の皆さん……スタンバイだよ~!」

 ノルンはわしのツッコミは受け付けず、パタパタ飛んで行こうとするので、素早く動いて捕まえてやった。

「ノルンちゃん二危害ヲ加エル者ハ殺シマス」
「にゃ!? 離すから怒らないでにゃ~」

 ノルンがまた機械的な声で喋るから、わしは慌てて手離して止めた理由を説明する。

「クリスタルスカルが人数分無いんにゃ。無くても参加できるのかにゃ?」
「なるほどなんだよ。クリスタルスカルが無いと参加できない決まりになってるんだけど、ノルンちゃんがなんとかしてあげるんだよ!」
「やったにゃ~!」

 わしが喜んで握手でもしようと右手人差し指を伸ばしたら、ノルンはわしの指は取らずに部屋の隅を指差した。そして……

「あそこにいっぱい入ってるから、持って来るといいんだよ」

 とのこと。なのでわしは部屋の隅にダッシュで行ったら、見えづらかったからわからなかったが白い箱があり、その中にはクリスタルスカルがゴロゴロ入っていた。

 おいノルンよ! いや、時の賢者よ! こんなに用意してるなら、持って来いなんて言うなよ!!

 またしても時の賢者にしてやられたと思いながらトボトボ戻ったら、ノルンに苦情。

「にゃあにゃあ? あんにゃにあるにゃら、参加自由でよくにゃい?」
「さあ、全員揃ったんだよ。レッツゴーだよ~!」
「聞けにゃ~~~」

 ノルンはまたしても無視。わしは苦笑いするリータ達に頭を撫でられ、トボトボとついて行くのであったとさ。


「じゃあ、みんなそこの円になってる所に立つんだよ」

 ノルンが指差した場所も真っ白でわかりづらいが、しゃがんで見たら大きな円の窪みがあったので、わし達はその中で固まる。

「そこでクリスタルスカルを掲げて合い言葉だよ。『時の賢者様、かっこいい~!』だよ。さんはい! だよ~」

 わし達はとりあえずクリスタルスカルを掲げて、目配せして言おうかどうか悩んでいたら……

「言わなくても開くんにゃ!?」
「「「「「あははは……」」」」」

 目の前の壁が開いた。なので、リータ達も苦笑いが止まらないようだ。

「それじゃあ、第一の試練の始まりだよ~!」
「合い言葉はいいにゃ?」

 都合の悪い事は無視。ノルンはパタパタと先に飛んで行くので、わし達も続くしかなかった。


 先に進んだ場所は、真っ白な壁。右と左に道がありそうだが、ずっと真っ白なのでよくわからない。

「さあ、どうしたんだよ? このフロアはモンスターも出ないんだから、早く迷路を進むんだよ」
「迷路と言われてもにゃ~……ノルンは道を知らないにゃ? ついて来るんにゃら教えてにゃ~」
「ノルンちゃんだよ」
「あ、ノルンちゃん。教えてにゃ~」
「ノルンちゃんは不正が無いかの審査役だよ。教えるわけないんだよ」

 チッ……教えてくれないならさっさと言えよ。言い直させやがって……

「じゃあ、壁を乗り越えるのはアリにゃ?」
「天井までびっしり壁が続いてるから無理なんだよ。ちなみに壁を壊したら一発アウトだよ。宝は手に入らないし、強制退場になるんだよ」
「じゃあ、目印を書くのはどうにゃ? 物を置くとかもにゃ」
「う~ん……禁止はされてないんだよ。でも、一定時間で清掃されるから、消されるかもだよ。ゴミも捨てられるんだよ」
「あと、魔法や道具の規制はあるのかにゃ?」
「一切ないんだよ」
「にゃるほどにゃ~」

 ノルンの説明を聞いて、わしは皆を集めて会議する。

「こりゃ、迷路だけでも難易度が高いにゃ」
「真っ白ですもんね」
「走っても危ないニャー」
「わしの探知魔法でも、ちょっとしか道がわからないんだよにゃ~……ここは、手分けして地図を作りながら進んだほうがよさそうだにゃ」
「それは早そうですけど、どうやって合流するかですね」
「だにゃ。進んだ道の記号を決めておこうにゃ~」

 自分の進んだ道、行き止まり、様々な記号を決めたノートと筆記用具、使えるかどうかわからないけど通信魔道具、それとおやつを配ったら、チーム分け。
 わしとメイバイとオニヒメの三人。イサベレとリータとコリスの三人で割り振る。これは、どちらにも危険察知能力のある者と戦力が十分な班分けだ。
 それにしっかりしたわしとリータが別々に居るから、もしもの事態が起きても大丈夫だろう。

「シラタマ殿は抜けてるところあるから、私とオニヒメちゃんがしっかりしないとだニャー」
「そうだね」

 わしだけしっかりしていないらしいので、メイバイとオニヒメは不安があるようだ。やる時はやる猫なのに……
 反論したいところであったが、口では負ける可能性が高いので不利な勝負は避ける。わしが出来る猫だという姿を見せてチヤホヤしてもらったほうが得策なので、迷路突破作業は率先して行うのであった。

「ねえねえだよ~?」

 しかし、二手に分かれて作業を開始したら、ノルンがわしの目の前を飛び回るのでうっとうしい。

「ねえねえだよ~?」
「さっきからにゃに~? わしは忙しいんにゃ~」
「暇だからお喋りしようだよ~」
「ノルンちゃんも仕事中にゃろ」
「目は至る所にあるから大丈夫なんだよ。ねえねえだよ~?」
「うっとうしいから目の前でパタパタするにゃ~」

 何故かわしばかりに喋り掛けるノルンに負けて、わしの作業は止まるのであったとさ。
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