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10 反撃
しおりを挟む「プッチーン」
道路の壁に打ち付けられたカケルはキレてなんか言った。
「オラー! クソ悪霊が~!! 相手になってやんよ! 表出ろやオラ~~!!」
そしてマジギレ。これは、今までキレたことのないカケルの初体験。さすがにここまでキレていたら、悪霊も怖くないみたいだ。
『イキテル。コロス』
その声に反応して、悪霊もツムギを抱えたままベランダから飛び下りた。
「おうおうおう。やってくれたな~」
そこに、ヤンキーっぽく凄みながら肩で風を切って前進したカケル。メンチを切って悪霊を睨んでいる。
『コロス』
「それはこっちのセリフだオラッ!」
悪霊が六本ある腕の一本を伸ばすと、カケルは左足で蹴りあげる。
『??』
その蹴りで、悪霊の腕は空に舞い上がって消えて行った……
「覚悟しろよオラッ!!」
そこからは、カケル劇場の始まり。回し蹴りに横蹴り。飛び蹴りをしたり後ろ回し蹴り。悪霊の腕や体を左足で蹴りまくる。
しかし悪霊は、新しく腕を生やすだけでなく何十本も増やしてカケルを掴もうとした。
「オラ~~~!!」
数が増えてもカケルは慣れたモノ。逆立ちしての回転蹴りだ。この攻撃で、次々と悪霊の腕は空へと消えて行く。
「きゃっ……」
そうこうしていたら悪霊の体も小さくなり、ツムギは倒れるように地面に落ちた。
『オンナ、オレノ……』
「パイセンは誰の物じゃねぇ~~~!!」
ラストは、ヤンキーらしくケンカキック。空手で言うところの、前蹴りだ。
「どんなもんだ~~~!!」
そして、両手を腰に引いての勝ち名乗り。そのカケルの雄叫びは、近所に響き渡るのであった……
「ツムギ~~~!!」
悪霊が成仏すると同時に、ハナが家から飛び出してツムギを抱き締めた。お互い涙ながらに心配し合い、しばらくして泣き止んだら、ハナの肩を借りたツムギはカケルの前にやって来た。
「カケル君……ありがとう。あのままじゃ、私、死んでたよ。本当にありがとう」
「べ、別に……俺はムカついたから蹴っただけっす」
初めて両親以外から感謝の言葉を掛けられたカケルはツンデレ。ツムギの顔も見てられないみたいだ。
「それでもだよ。やっぱりカケル君は私の王子様だったんだね。ありがとう」
「おっふ……」
「あああぁぁ~!!」
ツムギの突然の行動にハナが叫ぶ。そりゃ、カケルに抱きついて頬にキスしたならば、ツムギのストーカーとしては許せないのであろう。
ハナがギャーギャーと罵っていてもカケルの頭に言葉が入って来ない中、後ろからポンポンとカケルの肩を叩く人物が現れた。
「ちょっといいかな? ここでヤンキーが暴れていると通報があってね。話を聞きたいから交番行こっか?」
お巡りさんだ。近所の奥様方が通報していたのだ。
「そうです! こいつです! 連れて行ってください!!」
「ハナ、何言ってるの! その前に病院~~~!!」
それに乗っかるハナ。しかし、カケルの頭から血が流れているので、ツムギが必死に止めるのであったとさ。
「はぁ~……」
その数日後、カケルはいつものように河川敷きで幽霊を蹴飛ばし終えてから、土手に座って黄昏ていた。
「またいっぱい集まってたみたいね~」
そこにのんきにツムギが声を掛けた。
「パイセン……」
カケルはツムギが隣に座ると、相談を持ち掛ける。
「あの日以来、俺にもジジイやババアがハッキリ見えるようになったんすけど」
「まぁ! それじゃあ、ご老人を容赦なく蹴ってたってこと??」
「絵面、マジパネ~」
「あはは。マジパネ~。あはははは」
こうして完全に見えるようになったカケルは、向かってくる老人霊の群れを蹴散らし、たまにツムギが持って来る依頼の悪霊を怖がりながらも蹴り飛ばすのであった。
おしまい
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