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09 対決

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「逃げて……は、早く……早く~~~!!」

 ツムギが逃げるように言っても、ハナにはツムギが空中浮遊しているようにしか見えないので緊迫感が伝わらない。
 カケルに至っては、悪霊の禍々しさが以前より増していたので腰を抜かしてる。

「どうなってるかわからないけど、ヤンキー君、出番よ! ビビってないでなんとかしなさい!!」
「ビビってねぇし……」
「さっき『うっきゃああぁぁ』とか言ってたじゃん。怖いんでしょ? ヤンキーのくせに度胸ないヤツね」
「うっ……怖くねぇし」

 ここまで挑発されては、ヤンキー設定を続けているカケルもやるしかない。カケルは震える足を叩きながら前に出た。

「テメェ! パイセンを離しやがれ!!」

 そして、大きな声を出して恐怖を追い払う。

『オンナ、オレノ。オトコ、チカヅクナ』

 すると悪霊がおぞましい声で返答したので、カケルはギギギっと振り返ってハナを見た。

「喋ったんすけど……」
「あたしには聞こえないけど、悪霊なんだからそんなこともあるでしょ」
「ちょっ、押すな押すな」

 カケルとハナが揉めていると、悪霊が一本の腕を伸ばしてカケルの左手を掴んだ。

『オレノ、トル、コロス』
「うっきゃああぁぁ!!」

 悪霊にいきなり腕を掴まれたからには、カケルはまた悲鳴。しかし、空手でつちかった体はその危機に反応する。
 カケルは左手を力強く回して悪霊の手を振り払おうとしたのだ。だが、これでは悪霊の手が伸びただけなのですぐさま作戦変更。右手で手刀を入れて、左手はまた腕を回してから肘打ちを落とす。

「透き通って行くんすけど……」
「お、黄金の、左……」
「あっ!!」

 いきなりのことでカケルはうっかりミス。悪霊が腕を直接握って来たから、霊に触れられるのは左足だけだいうのを忘れていたので、ツムギの弱々しい声でそのことに気付く。

『シネ』

 カケルが蹴る体勢に入る前に悪霊は凄い力でカケルの腕を引き、自身の腕をムチのようにしならせてベランダ側の窓に投げ捨てた。

「ぐはっ……」

 その結果、カケルは窓を突き破り、道を挟んだ家の壁に打ち付けられた。

「キャーーー!? な、何これ……何がどうなってるの……」

 ここでようやくハナにも悪霊の恐怖が伝わる。カケルが何かに引っ張られて飛んで行ったのだから、へたりこんでも仕方がない。

「ハナ……逃げて……お願い……」

 ツムギが弱々しい声を出した瞬間、外から大声が聞こえる。

「オラー! クソ悪霊が~!! 相手になってやんよ! 表出ろやオラ~~!!」

 カケルだ。頭から血を流すカケルがキレて、悪霊に啖呵たんかを切ったのであった……
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