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猫歴15年
平行世界1日目その1にゃ~
しおりを挟む「こう言っちゃあにゃんだけど、ひとつ目の質問って、それでよかったにゃ?」
皇居外苑にて、女性アナウンサーがわしの見た目を聞いて来たから簡潔に答えてあげのに固まっていたので、こちらから質問してあげた。
「えっと……もっと宇宙人らしい宇宙人が出て来ると思っていましたので……なんで猫?ってなるじゃないですか?? 聞こうと思っていたこと、全部吹っ飛んじゃいました~」
「にゃんかゴメンにゃ~」
アナウンサーはまだ質問を探していたので、わしは咳払いしてから自己紹介をやり直す。
「わしの名はシラタマにゃ。平行世界上にある地球の住人にゃ。こう見えて、猫の国の王様をやってるにゃ。そして、この2人が王妃の……」
玉藻だけ少しごまかした全員分の紹介が終わると、次はわしからの本題だ。
「天皇陛下との会食をお願いしていたんにゃけど、その話はどうなったにゃ?」
「えっと……私の一存ではちょっと……」
「そんにゃのわかってるにゃ~。にゃんか情報が入ってないのかと聞いているんにゃ」
「そ、そうですね! 申し訳ありません。数分前には、まだ話し合いの最中だったはずです」
「てことは~……にゃん年掛かるんにゃろ?」
「き、聞いて来ますね! いや、自衛官の皆さん、なにか指示は入っていませんか??」
突然アナウンサーにマイクを向けられた自衛官はお手上げ状態。なのでわしがカメラの向こう側にいる政府の人間に愚痴を交えて「出て来い」と言っていたら、七三分けでメガネを掛けたスーツ姿の若い男がダッシュでやって来た。
「あ、あちらで対応しますので、もう少々お待ちください」
「ここでいいにゃよ? 偉い人が出て来るまで、日本政府の対応が遅いと全世界に愚痴ってやるからにゃ」
「それが困るんですよ!」
「お腹すいてるんだから急いでくれにゃ~」
七三メガネは密室にわしたちを監禁したいようだが、わしは断固として動かない。そして皆には超美味しい串焼きを支給。テレビクルーと自衛官にもあげた。コリスは涙目で見ていたから、10本あげた。
コリスたちとテレビクルーはすぐに食べていたが、自衛官は職務上受け取れないとか言っていたので「王様のわしに恥を掻かすのか?」とムリヤリ食わせてやった。
すると、味に驚いてあっという間に完食。でも、おかわりは断った。
そうしてわいわいムシャムシャぐちぐちやっていたら、大勢のスーツ姿の男を連れたじいさんがやって来た。
「私は外務副大臣の岸です。お話はあちらで承りますので、どうか移動をお願いします」
「副大臣にゃ~……ここで話そうにゃ。たぶん、国民のみにゃさんも聞きたいにゃろ?」
「そうでしょうが、こちらにも都合がありまして……」
「んにゃもんわかっているにゃ。どこに移動しようともにゃにも決まらないから、こっちは急かしてやってるんにゃ。いますぐ決めないにゃら、アメリカに移動するにゃ。アメリカのみにゃさ~ん? ちょっと待っててにゃ~? たぶんすぐに決裂するから歓迎してくれにゃ~」
「なっ……」
最後のセリフは英語で言い直して放送に乗せたら、アメリカでは大歓声があがったそうだ。それとは逆に、ここ日本では政府関連の施設に苦情の電話やメールが殺到して情報網はパンク。「猫を逃がすな!」とか言われたんだって。
その甲斐あってか、外務副大臣の元へ血相変えた七三分メガネが走って来て、わしが頷ける人物と会えるらしいので、皇居の中に連行されたわしたちであった。
ちなみにUFOは戸締まりだけしてそのまま放置。いちおう近付くなと言っておいたけど、この世界の者では絶対に入れないし、カメラマンが山程いるから盗もうとするヤツも現れないだろう。
やって来たのは長和殿、春秋の間。そこで白髪の目立つ皇太子殿下が出迎えてくれた。
「シラタマ王。陛下は多忙のため、私が対応することをお許しください」
「いやいや、こちらこそ無理を言って申し訳ないにゃ。天皇陛下がわしにゃんかとすぐにお会いできると思っていないのに、ゴネまくってしまったにゃ~」
皇太子殿下が頭を下げるので、わしはそれよりも頭を下げたら焦り出した。
「い、いえ。陛下も本当はお会いしたいと申していたのですが、中には危険だと止める者もいまして」
「だろうにゃ。だってわしは猫にゃもん。にゃははは」
「プッ……失礼しました。では、そちらにお掛けになってください」
「もっと笑ってくれにゃ~。にゃあにゃあ??」
皇太子殿下は笑いを堪えているように見えたので、笑いを誘いに行こうとしたらリータに首根っこを掴まれた。ちょっと調子に乗りすぎたみたいだ。
なので、テーブル席に移動して、わしから皇太子殿下の近くに座り、隣に玉藻。その他は好きなところに座らせた。
「では、この出会いに乾杯といきましょうか?」
「うんにゃ。平行世界の交わりに乾杯にゃ~」
お酒とジュースが並べば、会食の始まり。やや質素だが、天皇の料理番が作ったかどうかよくわからない料理をゴチになる。
「こちらの玉藻を先に紹介しておくにゃ。この玉藻は日ノ本出身で、天皇家に長く仕えていたから、是非ともこの世界の天皇陛下とお会いしたがっていたんにゃ。にゃんだったら千年ぐらいの知識量があるから、失伝している歴史だって教えてくれるんにゃよ~?」
「おいおい。妾を千年も生きてるようなババアみたいに紹介するな。妾の名は正式には玉藻前。先代、先々代から名を受け継いでいるだけじゃ」
「いや、九百年も生きてたら、百年にゃんて誤差のうちにゃ~」
「百年が誤差のわけがあるまい。普通の人間ならとっくに死んでおるぞ」
「人間基準で若いみたいに言うにゃよ~」
玉藻はどう考えても晩年なのに認めてくれないので「にゃ~にゃ~」ケンカ。しかし、皇太子殿下は何かを考えていて止めてくれないので、リータに止められたから話を戻す。
「にゃんか言ってくんにゃい?」
「え、ええ……まさか平行世界でも天皇家が存続していたとは驚きで、言葉を失っていました」
「にゃはは。そりゃそうだにゃ。でも、これで一安心にゃろ? 天皇家を愛してやまない者が同行しているんにゃ。わしたちは、決して日本の敵にならないにゃ~」
「はい。我が国にようこそいらっしゃいました。国民共々、シラタマ王と玉藻様。皆様を心より歓迎いたします」
ここでやっと皇太子殿下から歓迎の言葉をいただいたので、わしは立ち上がって歩み寄る。するとSPが動いたが、皇太子殿下が制止して前に出て来た。
そこでわしたちはにこやかに握手。メイバイに写真を頼み、拍手を催促。その拍手のなか、玉藻を呼び寄せて三人の握手もパシャリ。玉藻と皇太子殿下とのツーショットも撮っておいた。
あとは会食の続き。コリスがまったく足りないとわしの頭を噛んで来たので、皇太子殿下が悲鳴。わしが食べられたと思ったようだ。
なので、猫の国料理を大量に並べて好きに食べさせるけど、コリスは手加減してくれ。皇太子殿下にも食べてもらいたいんじゃ。エリザベスとルシウスも手加減してね。
「料理はこちらの物と変わりませんが、凄く美味しいのですね」
「ああ。うちは……玉藻。このアルバムで殿下に説明してやってにゃ~」
「ああ。この肉はな……」
皇太子殿下の相手は玉藻に頼んでいる間に、近くに立っている宮内庁の女性に頼みごと。テレビが見れないかと無理を言ってみたら、わしの頭を撫でてから薄くて四角い板を持って来た。なんで撫でたかはわかり兼ねる。
「これで見れるにゃ?」
「はい。初めてでしたら、私めがお手伝いさせていただきます」
「じゃあ、子供たちのところでお願いにゃ~」
女性はさっちゃんの子供はわかるのだが、わしの家族はどれが子供かわからないみたいなので、イスに座る白猫と白髪の猫耳娘のところまで連れて行った。
「「「にゃっ!?」」」
女性が板をトントンと叩くと、画面には皇居や人々が現れたので子供たちが驚いた。だけじゃなく、全員驚いていたのでもう何個か持って来てもらったら、女性の元へ質問の嵐。
なので、答えられる人も追加してもらったのだが、さっちゃんがわしの尻尾を離してくれない。
「なんなのこれ!? 石版の中で人が動いているわよ!?」
「大声を出すにゃ~。そのうち係の人が来るから、それを待てにゃ~」
「待ってられないから聞いてるんじゃな~い」
さっちゃんはお母さんになってもワガママさんなので、誰にも聞かれないように念話でちょっとだけ相手してあげる。
「ほら? うちでも写真を動かそうと頑張ってたの覚えてないかにゃ??」
「あ~……動画だっけ? 失敗に次ぐ失敗で諦めたとか言ってたヤツね」
さっちゃんの言う通り、テレビ製作は大失敗。なんとか液晶モニターは作れたのだが、画面もドットもデカイし、計算機の数字を出すのがやっと。
さらにビデオカメラもないので天才たちに作らせようと頑張ったが、保存機能もゼロからだからまったく完成の目処が立たなかった。
てか、一足飛びでLEDモニターとハードディスク内蔵カメラは、天才平賀源済でも無理だったのだ。ちなみに太陽光発電を作れたのは、マグレっぽい。
「まぁそうにゃんだけど、これはわしが作ろうとしていた物の進化版だにゃ。確かタブレットとか呼ばれる物にゃ」
「へ~……で、どうやって動いているの?」
「たぶん電波が飛んで来て、リアルタイムの外の映像を映していると思うんだけどにゃ~」
「もっとわかりやすく説明してよ~」
「わしも説明する口を持ち合わせてないんにゃ~」
テレビも知らない者に説明するのはめちゃくちゃ難題。子供たちも大人たちも、映像よりどうなっているかと曖昧な質問ばかりなので係の者を困らせている。
なのでここは、報道番組以外の番組を見せて映像に集中させたい。その結果、全員アニメに釘付け。
なんかインターネットに上がってるヤツらしいが、わしもサブスクリプションとか言われてもよくわからないので、バレないうちに玉藻の元へ逃げるのであった。
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