アイムキャット❕❕❕~異世界の猫王様、元の世界でやらかす記~

ma-no

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猫歴15年

平行世界22日目にゃ~

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 温泉施設でリフレッシュしたら、今日はこのままホテルに撤退。ダラダラ休む予定であったが、お母さんたちはエステの文字を見て、わしに子供を押し付けて行った……
 まぁ子供はアニメとゲームに夢中なので、わしの労力はまったく必要ない。すでにタブレットとかの使い方も慣れた物だから、わしは優雅に動画サイト鑑賞してやった。

 夕方ぐらいに帰って来たリータたちは、ピッカピカ。わかったから服を着てくれ。子供の前で誘わないでください。さっちゃんは旦那さんがいるじゃろ?

 エステの効果をわしに見せ付けようと服を脱ぐ皆を押し返していたら、どさくさに紛れてさっちゃんが浮気しようとしていたので、皆から注意してもらった。
 その隙に、わしはコリスのモフモフに隠れて一眠り。この日は発情期に入ったリータたちのために、もう一部屋取って頑張るわしであった。


「さあ、今日は食い倒れにゃ~~~!!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」

 平行世界22日目は、気合いを入れて街ブラ。大阪と言えば、食い倒れというぐらい飲食店があるので、片っ端から入ってはモグモグ。
 基本的に大食い組は一人前だけ食べて次の店へ。魔力濃度の高い高級肉さえ食べなければ、わしたちの腹は底無しだ。

 さっちゃん家族は小食なので、気になる物だけちょいかじり。あとはコリスの頬袋行き。それでも食べ過ぎたのか、わしたちが食べる姿を気持ち悪そうに見てる。
 ちなみに妖精ゴーレムのノルンはイチゴみっちゅ分入る胃袋があるので、ベティからちょっと貰って食べてる。ノルンも底無しに見えるけど、店を出る前に食べた物をそのまま排出しているので少しもったいない。

 そんな感じで食べ歩いていたら関西人が山のように増えたので、機動隊の出動。わしたちのことを体を張って守ってくれているようだが、「こっちもやりたくてやってへんわ!」とか、野次馬とケンカしないでくれ。
 まぁ機動隊のおかげで充分なスペースがあるので歩きやすいし、奇抜な看板も見やすい。わしたちは機動隊に迷惑を掛けると知りつつ、記念写真なんかも撮りながら食べ歩きを続けるのであった。


 食べ歩きはお昼をすぎたけど、たいした距離は進んでいない。引っ掛け橋でタコ焼きを食べながら皆に「まだ食べる?」と聞いていると、なんだか騒ぎ声が聞こえて来た。
 皆で野次馬の方向を見ながら「なんだろね~?」と話をしていたら、集団の中からイケメンの若者が飛び上がって機動隊の前に着地。
 もちろん機動隊はイケメンを止めようと掴みかかったが、イケメンは側転、宙返り、華麗なステップでかわし、最後は5連続バク転からのムーンサルト宙返り。わしたちの前で、10点満点の着地を決めた。

「おお~。異世界猫。こんな所で会うとは奇遇やな~」

 このイケメンは、つい先日会った広瀬珠丸ジュマル。どう考えてもとぼけているようにしか見えない。

「そんにゃにバッチリ着地を決めておいて、にゃにが奇遇にゃ。ララちゃんの差し金にゃろ」
「まぁ……登場したらこう言えって言われてたから……」
「そんで……ララちゃんはどこにゃ?」
「あっち側にいるけど、人が多すぎるから待ってるねん」
「わかったにゃ。ちょっと警察と相談してくるから、ここで待ってろにゃ。メイバイ。相手してやってにゃ~」

 いまにも機動隊が襲って来そうなので、警察には友達だからと説明。もう1人友達がいるから通してくれと言ったら難しいと返って来たので、わしの大ジャンプ。
 空詩ララのそばに着地したら、大きな荷物は次元倉庫に入れて、お姫様抱っこで民衆を飛び越えて戻るのであった。


「みんにゃ~。この子は、こにゃいだ友達になったララちゃんとジュマル君にゃ~」

 まずは皆に自己紹介したら、ジュマルは会釈だけだったが、ララは変なことを言い出した。

「皆様。夫が大変お世話になっております。妻のララと申します」
「にゃに冗談ぶっ込んで来てるんにゃ!」
「あ……あはは。てのは冗談で、美人すぎるJK、ララだお」
「それも冗談だよにゃ?」

 テレビクルーのカメラの前で、ララは落ち着いた生前の自己紹介なんてするものだからわしは焦って止めた。けど、なんかキャピキャピした自己紹介に変わったので、そっちにもツッコミ。でも、笑ってごまかされた。

「それで、わしににゃんか用?」
「せっかくだから、ガイドさんしてあげようと思って来たのよ」
「ふ~ん……実は再生回数を稼ぎに来たわけじゃないよにゃ?」
「え!? 見たの!?」
「アレのせいで、わしがどんだけ怒られたか……全部見てやったにゃ! さっきの自己紹介も『ララちゃんネル』でいつもやってたにゃろ!!」
「ちょっ……恥ずかしいんだから見ないでよ~」

 わしに全てを暴かれたララは、顔を真っ赤にしてしゃがみ込んだ。そのせいで、わしがララを泣かせたと思ったジュマルが殴り掛かって来たが、後の先で膝カックン。
 人差し指ひとつで立たせないマジックとかテレビクルーには説明して、仲良しアピールをしておいた。本当は、ただの力業ちからわざでジュマルの頭を地面に押し付けているだけだけど……

 テレビクルーには「広瀬兄妹の関係は迷子になったところを助けてもらった」と嘘の説明をしていたら、ララはリータたちとちょっと喋って、すぐにマブダチ。一緒に「イエーイ!」とか言いながらグリコのポーズをして自撮りしてた。

「仲良くなるの早すぎにゃい?」
「あ、動画撮ってくれる? もっと下から……寝転んで撮って!」

 そして、わしをこき使う始末。わしは地べたに寝転びながら、ララの気の済むまで動画撮影に付き合わされるのであったとさ。


「てか、これからどこ行くの?」

 ララの撮影会が終わったら、いまさら行き先を聞かれたけど、わしも決めていない。

「だいたい食べたい物は食べたし買い物も終わったしにゃ~……迷惑ににゃるから、ぼちぼちホテルに戻ろうかにゃ~?」
「それなら船に乗ったらどう? 屋形船なんてえそうよ」
「それ、自分のためのプランにゃろ~」

 ララはリータたちを味方に付けるから、わしは妻が増えた気分。一対多数では口で負けるので、テレビクルーにララプランを提出してみたら「アリかも?」ってなって屋形船を押さえてくれた。
 機動隊もわしたちのお守りから外れられるので、反対意見はない。地上よりは警備が楽なのだから、笑顔で出航を見送ってくれた。

 航行プランは、わしたちのホテル近くまでの川の移動。橋を下から見るのはなかなか面白いので、子供たちにも好評だ。
 リータたちは、外にも出て来ないでララを中心に何やら話が弾んでいる。たぶん、わしの悪口を言っているのだろう。時々寒気がするもん。
 ジュマルは……ずっとエリザベスを見てる。そのせいで、エリザベスはわしに抱っこをせがんで来たから、この機会にめっちゃかわいがってやった。久し振りで嬉しかったんじゃもん。へぶしっ!

 ちょっと頬ずりしすぎてエリザベスからネコパンチはもらっていたら、エミリが外に出て来てわしの隣に立った。

「ここはひとつの国なのに、料理がいっぱいあって凄いですね。すっごく勉強になりました」
「うちの世界では滅びてる国が多いからにゃ~。この世界は移動が楽にゃから、世界中の郷土料理がお金持ちの国に集まるって寸法にゃ~」
「いったいどれぐらいの料理があるのですか?」
「それは数え切れずの数にゃ。このスマホで調べれば……」

 有名な料理のホームページを見せてあげたら、エミリは驚きの表情。料理の数もそうだが、一品にも多くのレピシがあるので質問が多い。

「こんなにあったら、どれを作ったらいいかわかりませんよ~」
「だから順位がついてるんじゃにゃい?」
「あ、そっか」
「それにこれはベースであって、アレンジは人それぞれの好みにゃろ。エミリぐらいの腕があるにゃら、材料を見ただけで味が想像できるんじゃないかにゃ?」
「なるほど~。確かに食べたことのある料理はできるかも……この本を買ってください!!」
「これは持ち帰れないからにゃ~……アルバイトでも探して見るにゃ~」

 エミリから無茶振りが来たので、その話はテレビクルーに業務委託。給金を払うからホームページを全て印刷してスクショのデータもくれと頼んでみたら、恐ろしく渋い顔。うん千枚は印刷することになるのでわからんこともない。
 なので、平行世界の品も付けると言ったら即オッケー。孫請け会社に業務委託してくれるそうだ……

 子供たちに世界の縮図の話を聞かせてあげていたら、リータたちも外に出て来て「イエーイ!」と撮影会。今度はジュマルがララにこき使われていた。
 そうして屋形船が陸に着岸したら、回してもらっていたバスに乗り込んで、ホテルに帰ったわしたちであっ……

「お前はどこまでついてくるにゃ?」
「どこって……部屋が空いてるって聞いたから、スウィートルームまで?」
「夜には帰るんにゃよ~」
「え? 空き部屋に泊まるわよ? 言わなかったっけ??」
「聞いてないにゃ~~~」

 ララが当然の顔でホテルに入っていたので追い返そうとしたが、リータたちとお泊まり会をすると決定事項だったため、まったく帰ってくれないのであったとさ。


 ホテルの部屋に入ったら、子供たちはゲームやアニメ。リータたちはララと井戸端会議。その会議の内容はわしだったので、肩身の狭いリビングを脱出して、お勉強中の玉藻の部屋にあるベッドに寝転び、新聞やテレビで時間を潰す。
 何故かエリザベスとルシウスもわしのベッドに飛び込んで来たので、甘えているのかと思って撫でたら、エリザベスに噛まれ。

「にゃんで噛むんにゃ~」
「撫ですぎ。そんなことのために来たんじゃないし……」
「にゃ~?」
「アレ、なんとかしてくんない? 気持ち悪いのよ」
「にゃ~~~?」

 エリザベスが前足で指した先にはドアが少しだけ開いており、誰かが覗いていた。こんなことをするヤツに心当たりがないので、誰か忍び込んだのかと思ってドアを勢いよく開けたら、そこにはジュマルが尻餅ついていた。

「ジュマル君にゃ……そういえば、船でもエリザベスを見てたよにゃ? わしの兄弟に、にゃにか用かにゃ??」
「あの……その……」

 わしが質問すると、ジュマルは顔を赤くしてモジモジ。そして、いきなり背筋を伸ばしたかと思ったら、綺麗なお辞儀をした。

「エリザベスさんを俺にください! お兄さん!!」
「にゃに~? エリザベスをペットにする気にゃの~??」
「ペットなんてとんでもない! 俺はエリザベスさんに一目惚れしたんです!!」
「……はい??」
「どうか、エリザベスさんとつがいになることを許してください! お願いします!!」
「にゃんですと!?」

 四足歩行の猫と結婚なんてどんな変態だよと驚いたわしであったが、よく考えたらジュマルの前世は猫。エリザベスはたぶん猫の界隈では美人なのだから、惚れてもうても仕方がない。ちなみにわしは、猫は好みではない。

「えっと……エリザベスはキモイからこっち見るにゃと言ってるんにゃけど……」
「そんな~~~」

 なのでエリザベスに事情を説明して通訳してあげたら、速攻フラれたジュマルであった。

「お兄さん! 仲を取り持ってください!!」
「わしはお前のお兄さんになった覚えはないにゃ~~~!!」
「そんな~~~」

 あと、かわいいエリザベスを奪おうとする輩には、辛辣な態度に変わるわしであったとさ。
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