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第一章

32 あやかし狩り 其の一

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 俺は管狐。
 今日はお隣のお姉さんに連れられ、遠くの山に来ている。
 お姉さんのお父さんの車で二時間かけてやって来た。
 お姉さんのお父さんは、名のある霊能者らしく、以前からお嬢ちゃんからあふれ出る霊気が気になっていたらしい。

 そのせいか、お嬢ちゃんがあやかし狩りをしたいと言うと、見学だけじゃなく、狩り体験をさせてくれるらしい。

 よけいな事を……

 おかげで移動する車の中では、お嬢ちゃんは張り切って、俺を指示する練習をしていた。


 ………


「人がいっぱいいるけど、ここが狩りする所なの?」
「そうよ」
「ゴミがいっぱ~い」
「ここには霊気が出てくる吹き出し口があってね、人間が不法投棄したゴミが九十九神に変わってしまうの」
「つくもがみ? 神様なの?」
「ううん。分類で神って言っているけど、悪さをするあやかしなの。弱いんだけど、放っておくと力を付けて、もっとひどい悪さをするあやかしになるから、早めに退治しないといけないの」
「ふ~ん」
「それじゃあ、私達は組分けをして来るね」
「うん!」

 たしかにここは、霊気の匂いが強いな。
 それにゴミのにおいも……
 大きい物で、テレビや冷蔵庫。
 小さい物は雑多に捨てられているから、どれだけの種類があるかわからないな。

「ヨウコ~。汚いね~」

 そうだな。

「木がかわいそう。なんでこんな所に捨てるんだろうね」

 俺は管狐。
 そんな事を聞かれても、わからない。

「どこにあやかしがいるんだろう? かわいいあやかしゲット出来るかな?」

 ゲット??
 捕まえるために来たのか?
 ここに集まった多くの人は、あやかしを退治するために来たのだろ?

「ヨウコもお友達が出来て、うれしいよね~」

 いや。嬉しくないから!

「あ、ひょっとしてかわいいあやかしが家に来たら、わたしが取られると思ってる? ヨウコは甘えただもんね~」

 俺が甘えた事があったか?
 ないはずだ。

「よく寝る時に、すりすりして来るよね~」

 違う!
 お嬢ちゃんが、すりすりして来るんだ。
 俺は苦しくて、抜け出そうとしているだけだ。

「ひよりちゃん。お待たせ」

 お姉さん達が戻って来たな。
 しかし、お姉さんのお父さんの体は、縦にも横にもデカイ。
 お嬢ちゃんぐらいなら、片手で持てそうだ。

「お姉さん。どうだった~?」
「ひよりちゃんは、私たち親子と組む事になったわ。まぁ無理はせず、私たちに任せて」
「う~ん……わたしも頑張りたい!」
「がははは。嬢ちゃんは元気だな。よし。おじさんが退治の手本を見せてやるから、その後、やろうな!」
「うん!」
「お父さん。無理させないでよね~」
「わかってる。それにそこまで危険な事は起きないさ。それと管狐。嬢ちゃんも戦うんだから、お前も頑張れよ!」

 いや、俺は見学でいいのだが……
 俺は管狐。
 戦いなんて無縁なあやかしだ。

「ヨウコ。頑張ろうね~」

 だから、強制参加させないでくれ!
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