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第二章
61 妖狐とご主人様 閑話
しおりを挟む俺は妖狐。
どうやらご主人様は、俺とひよりが一緒に暮らすことに喜んでいるみたいだ。
今はひより達と昼食を食べながら仲良く談笑している。
俺も仲間の管狐達と再会を祝している。
「へ~。そんな方法で、管狐が妖狐になれるんだ。誰か妖狐になりたいヤツいる~?」
管狐のみんなは、いきなり言われて戸惑っているな。
当然だ。
俺を見ても、信じられないと言っていたからな。
「いないか~。ま、あんた達はそのままでも好きだから、そのままでいいし~」
やはりご主人様は優しいお人だ。
無理なこと言ったと理解し、咎める事もしない。
「そうだ! ウチもヨウコの夢に協力してやるし~」
「なにするの~?」
「ま、見てるし!」
俺の夢ではないのだが、何をするか若干不安だ。
ご主人様が優しく俺を抱いてくださった。
この温もり……
いつもこの胸の間で寝ていた事を思い出す。
ん?
なにか呪文を唱え出した。
これは……
零号じいさんが、遠い未来を見るときに使う呪文。
俺に使われるのは初めてだ。
いや、その時より霊気を使う量が、かなり多い。
部屋中に眩しい光が包み込むほど……
目を開けていられない。
………
「みんな、もう終わったし~。目を開けて大丈夫だし~」
なんだ?
すごい力が湧いて来た。
それに尻に違和感が……
「わ! ヨウコの尻尾が五本になってる!!」
本当だ……
あやかし退治して、苦労して増やしてきた尻尾が、この短時間で二本も増えた。
「うまくいったし~! 話を聞いててビビッときたんだよね~!!」
「ハナチー。ありがとう!! ヨウコも嬉しいよね~」
「あ、ああ。ご主人様。ありがとう!」
「いいって。ウチからの餞別だし~。ひよひよと仲良くするし~」
「ああ!」
言われなくとも、もう仲良くしている……
ていうか、ひよりは尻尾に包まれてモフモフ嬉しそうだ。
………
「先生。お時間です」
「もうそんな時間!?」
楽しく談笑していたら、さっきの若い女性がノックをして入って来たな。
「今日は疲れたから、もう休みたいし~」
「昨日もそう言って、予定時刻より早く終わったじゃないですか」
「そ、それは……」
ご主人様は俺の事をチラッと見たな。
俺に会えると聞いて、早く終わったのか?
「占い無双するのですよね? なら、仕事をしてください」
「うぅぅ。りりっちは鬼畜だし! ブラック企業だし!!」
「何を言っているのですか。週休二日。五時間労働のどこがブラックなのですか。ホワイトどころか、仕事しなさ過ぎです」
「かあちゃんみたいなこと言うなし~!」
「はいはい。仕事しますよ~」
「うぅぅ。ひよひよ、ヨウコ。今度は私から遊びに行くから、待ってるし~!」
ご主人様はりりっちさんに、イスに縛り付けられているな。
そこまですることなのか?
まぁご主人様はご主人様で、自分の夢を追い掛けているのだな。
「ヨウコ。帰ろう!」
「ああ!」
ご主人様とのお別れは言えた。
もう俺に心残りはない。
これからはひよりの家族として、末長く暮らそう。
「五尾か~。ちょっとやそっとじゃ死なないんじゃない?」
「そうだな。練習台に持ってこいだ!」
お姉さんとおじさんとは、末長くしたくないのだが……
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