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拾壱 ライブ

67 総攻撃前の巻き

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 ジヨンが半荘の隣のベッドで眠りに就くと、半荘はジヨンに背を向けてタオルケットを被る。
 半荘は何かを期待していたようだが、ジヨンの寝息が聞こえて来ると、そのまま眠りに就いたようだ。


 そして翌日……

 ジヨンより先に目覚めた半荘は、いつものようにあくびをしながら朝食の準備をするが、準備の途中で基地から飛び出して行った。

 その十数分後、食堂に戻った半荘は、ジヨンから声を掛けられる。

「おはよう。食事の準備が途中だったから、私がやっておいたわよ」

「ああ。ありがとう。あと、おはよう」

 半荘が席に着くと、ジヨンも席に着いて食事を食べながら質問する。

「何かあったの?」

「韓国から荷物が届いたんだ」

「荷物??」

「手漕ぎのゴムボート。それと手紙。早く出て行けってさ」

 ドローンで届けられたボートと聞いて、ジヨンは食事の手が止まる。

「私ひとりじゃ無理よ」

「わかってる。たぶん、俺も一緒に出て行けってメッセージじゃないかな?」

「なるほど……じゃあ、一緒に島を出ない? それなら、二人とも必ず助かるじゃない?」

 ジヨンの案に、半荘は悩みながらパンを飲み込む。

「ありっちゃ、ありだな~」

「でしょ? そのほうがいいわ! 一緒に出ましょう!!」

 今度は、スープを飲み干してから、半荘は考えを述べる。

「でも、俺が居なくなると、確実に戦争になるよな?」

「あなただって、早く帰りたがっていたじゃない? 戦争なんて、国の責任なんだから、あなたが矢面に立つ必要はないわ」

「でもな~……俺がここに来たせいで、戦争が起こるのも気が引ける」

「ここまでこじれてしまったんだから、あなたのせいじゃないわよ」

「う~ん……ひとまず定時連絡の時間だし、東郷さんに聞いてみるよ」


 それからスマホで連絡を取った半荘は、上からの指示はどうなったか聞くが、進展は無し。
 それならば、ボートに乗せたジヨンを拾えないかと聞くが、艦隊まで近付かない事には上の報告がいると断られてしまった。

「じゃあ、俺がボートを漕いで日本艦隊に行って、竹島に戻るってのは……」

 まったく進展の無い展開に、半荘は代案を出したが、スマホから東郷のうなる声が聞こえる。

「う~ん……私個人としては賛成なんだが、上に確認を取らない事には……」

「すぐに戻っても、韓国にバレるかな?」

「たぶんな。……今日、外に出ただろ?」

 半荘は、韓国からのドローンでの届け物を受け取りに出た際、港から見えた光景を思い出す。

「ああ」

「それなら、あの大艦隊を見たよな? あの大艦隊に押し寄せられたら、俺達はアウトだ。竹島を取り戻すために戦うが、おそらく一時的に負けるだろう」

「一時的?」

「報復……次は、負けないための戦力を用意するだろうな」

「東郷さんは、死ぬわけだ」

「まぁな。でも、無駄死にではない。現状を打開する布石になるからな。向こうが先に仕掛けたんだから、自衛隊の職務を果たしてやるさ。がはははは」

 死を覚悟して笑う東郷に、半荘はいたたまれなくなる。

「よく笑っていられるな」

「私達自衛隊が、これまでなんと言われていたか知らないのか?」

「……殺人集団だっけか?」

「おお! 若いのに、よく知ってるな」

「でも、地震や津波で、そんな心ない意見はひっくり返っただろ?」

「それでもだ。国を守るために散る事は、本望なんだよ」

 東郷の発言に、半荘は顔を歪める。

「神風なんて、やめろよ……」

「がはは。よく勉強してるな~。がははは」

 東郷の覚悟と、響く笑いに、半荘はため息を吐く。

「はぁ……日本の増援は、あとどれくらいで着くんだ?」

「そんな事を聞いてどうするんだ?」

「時間稼ぎしてやるよ。無駄玉打たせたら、下手な攻撃はできないだろ?」

「がははは。お前も、大和魂が宿っていたんだな」

「そんなものない!!」

 笑う東郷に、突如、半荘は怒鳴り付ける。

「あんたの命の心配をしているんだ! その船に乗る、多くの命を心配しているんだ! お国のため? お国のためより、命が一番大切だろ!!」

 半荘の怒声に、しばらくの沈黙の後、東郷は真面目な声を出す。

「政治家は役に立たん。頼めるか?」

「ああ! 任せておけ!!」

 半荘が力強い返事をすると、東郷は増援の正確な到着時間を告げ、「絶対に無理はするな」と言って、電話を切るのであった。

「前にも言ったけど……私は!?」

 当然、ジヨンの事を、二回もすっかり忘れていた半荘は、めちゃくちゃ怒られるのであった。
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