73 / 93
拾弐 最終配信 其の一
73 沈没の巻き
しおりを挟む「えっと……両端の船が沈んで行っているように見えるんだけど……」
竹島から韓国艦隊を撮影していたジヨンは、小さく見えている両サイドの船が、隣の船と高さが合わなくなった事に気付いた。
「まぁ思った通りの結果だな。船員も飛び込んでいるぞ」
「見えるの!?」
半荘の驚異的な視力を持ってすれば、遠くの景色を見るのもお茶の子さいさい。
「まぁな」
「あ! 両端に船が寄って行ってる……。あなた、いったい何をしたのよ!?」
「最初に沈めるって言っただろ? 有言実行したまでだ」
「どうやってよ!!」
「簡単な事だ。そこのナイフを拾って……」
半荘の簡単な説明に、ジヨンはついて行けない。
ついて行けない理由も簡単だ。
投げたナイフが3キロも飛んで、高速船の装甲を突き破り、船底まで貫通した事が信じられないのだ。
なので、わかる説明から求めるジヨン。
いつ投げたのかと聞くと……
「さっきだ」
何本投げたかと聞くと……
「四本だ」
どうやって投げたかと聞くと……
「こうやってだ」
半荘の、ゆっくりとした動作の遠投フォームを見たジヨンは……
「そんなので船が沈むわけないでしょ!」
ツッコム。
なので半荘は、ピースをしながら答える。
「忍チューバーだからできるんだ」
半荘の答えに、ジヨンはため息しか出ない。
「はぁ……仮に当たったとして、ナイフで船を貫けるわけがないじゃない」
「できたから、船が沈んだんだろ?」
「何か違う武器を使ったんでしょ?」
「いや、このナイフだけだ。このナイフを角度を付けて……」
半荘の説明はこうだ。
すんごく速く投げたナイフは、船の前方、水面よりやや上に当たり、後方の船底から飛び出したとのこと。
事実、半荘の言った通り、高速船は船底にできた長い切り込みから浸水し、塞ぐ事もできずに各部屋に水が溜まっている。
その結果、船が沈む事で最初の穴からも水が流れ込み、さらに沈んで行った。
その説明を聞いてもジヨンは信じられず、半荘に食い掛かる。
「はあ? ナイフでそんな事ができるわけがないじゃない!」
「じゃあさ~……今度は俺の投げる姿を撮ってくれよ。それで信じられるだろ?」
「わかったわ。でも、今度は絶対にトリックを暴いてやる!」
ジヨンのやる気が出たところで、半荘は沈める船を指定して、韓国艦隊に警告をする。
それから半荘は四本のナイフを手に持つと、三本を左手に、一本を右手に握ってジヨンの準備を待つ。
ジヨンの撮影準備が整えば、半荘はピッチャーのように振りかぶった。
「え……ナイフは……」
ジヨンは驚く。
それは当然。
半荘の動きは速すぎて、ジヨンの目にもカメラにも、半荘の振りかぶった動作と、腕を振り切った動作で止まっている姿しか見えなかったからだ。
「ナイフは、きっちり船に当たったぞ。じゃあ、次を投げるな」
ジヨンは今度こそはと瞬きせずに見ていたが、何度やっても、半荘の動きは捉えきれずにナイフが消えていた。
最後の一本も消えると、ジヨンは艦隊を写して呟く。
「うそ……また二隻が沈んでる……」
遠目でも、救出に慌てる船の姿が見て取れ、ジヨンは愕然としている。
「なぁ~? タネも仕掛けもないだろ~?」
半荘の実演を見ても、ジヨンは半信半疑。
呆然と沈み行く四隻の船を見ているしかない。
そんなジヨンの事はほったらかして、半荘はカメラの前に立って声を掛ける。
「さてと……クノイチの撮影はここまでにして、一度切りま~す。では、しばらくしたら復活しますので、チャンネルはそのまま! 忍チューバーでした。ニンニン」
半荘はそれだけ言うと、煙に包まれて姿を隠し、スマホをいじってⅤチューブの接続を切った。
「じゃあ、行こっか?」
半荘は手を伸ばして、ジヨンからカメラを受け取ろうとしながら声を掛ける。
「どこに行くの?」
「シェルターだよ。そろそろ攻撃して来そうだ」
「確かに……」
ジヨンは艦隊の動きを見ながらカメラを手渡し、半荘に続いて基地へと向かう。
「ヤベッ。ちょっと失礼」
「きゃっ」
しばらく歩くと「ドーン」と音が鳴り、半荘はジヨンをお姫様抱っこする。
「何するのよ!」
「大砲が来た! 走るから喋るな!」
「えっ……は、はい!」
さすがにこの事態には、ジヨンは素直に従い、口を閉じて半荘に身を任せる。
韓国艦隊から放たれた艦砲は大外れ。
島にも届いていないが、次が来るかもしれないと感じた半荘は、凄まじい速さで走り出すのであった。
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる