7 / 38
07 冒険者としての初仕事にゃ~
しおりを挟む「さあ、マジカルキャッツ……本格始動よ~!」
いろいろトラブルがあった翌日、城からこそっと抜け出し、西門から冒険者カードを見せて通してもらったら、べティがなんかカッコつけてる。
「そんにゃに気合い入れても、やるのは薬草採取にゃよ?」
「ちょっ! 『にゃっ!』とか『にゃ~!』とか言ってよ~!!」
「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~。これでいいにゃろ?」
「違うにゃ~~~!!」
べティは気合いの入った返事がほしかったようだが、これは昔、親友のさっちゃんともやったこと。同じ返しをしてみたら同じことを言っていたので、この二人は同じ思考回路をしているのだろう。
「とりあえず森に入って探そうにゃ。走るけど、コリスに乗らなくてもいいにゃ?」
「聞いてよ~」
「いっくにゃ~」
「乗るからちょっと待って~~~!!」
文句を言うべティは無視して走り出したら、べティはダッシュで追いかけてコリスに乗せてもらうのであった。
「ねえねえ?」
街道をひた走り、森に向かっていたら、べティはコリスをわしの近くに寄せて話し掛けて来た。
「にゃに?」
「遅くない? これぐらいなら、あたしでも出せるよ」
「まぁにゃ~……振り切ってしまうと悪いと思ってにゃ~」
「振り切る? ……あっ! もしかしてつけられてるの!?」
べティは今ごろ気付いたみたいなので、城からずっとつけられていたと教えてあげる。その時、探知魔法でしか発見できないと説明したので、べティも自分の探知魔法を使って確認していた。
「視覚で捉えられないなんて、相当な手練れかもね。てか、城からってことは、あのお姫様の使いってことかしら?」
「もしかしたら、刺客かもにゃ~」
「それは~……あるか。だってシラタマ君って魔王だもん」
「魔王疑いにゃ。魔王疑いだからにゃ?」
「それでこれからどうするの?」
「疑いを晴らしてくれにゃ~」
「無理よ」
べティは会った頃からわしのことを「魔王寄り」と言っていたから辛辣。ツッコミたいところだが面倒くさいのでこれからの話をする。
「真面目に薬草採取してる姿でも見せれば、わしがただの猫だとわかってくれるにゃろ」
「え~! もっと面白そうな魔物探そうよ~」
「それはランクを上げてからにゃ~」
べティと揉めながらも街道をひた走ると、森に到着。ここで次元倉庫から取り出した薬草のにおいを嗅いで、辺りをクンクンして歩く。
「猫のクセに犬みたいなことしてるし……」
「こっちのほうが早いんにゃからいいにゃろ~」
べティがちゃちゃを入れてムカつくが、わしはクンクンしながら森の奥へ。すると、五匹のゴブリンと遭遇した。
「喰らえ! エクスプロー…むぐっ!?」
「派手にゃ魔法を使うにゃ~」
先手必勝でべティは無駄に攻撃範囲の広い爆裂魔法を使おうとするので、わしは後ろに回り込んで口を塞いだ。
「なんで邪魔するのよ~」
「この近くに薬草があるんにゃ~。燃えたらどうするにゃ~」
「えぇ~! じゃあ、あたしにどうやって戦えって言うのよ」
「風魔法があるにゃ~」
べティは派手な魔法で戦いたいみたいでブーブーうるさいので、わしは次元倉庫に入っていたとっておきの物をあげる。
「何これ? 穴だらけの……ナイフ??」
わしの出した物は、頑丈な白魔鉱というレアメタルで作ったナイフに軽量処理をした物。これは鉄魔法でちょちょいのちょいで作った、わしの自信作だ。
側面には大きな穴が五個も開いているのですぐに折れそうに見えるが、それでも強度は普通のナイフの三倍はあるので、べティの筋力ならば折れることはない。
「魔力を注げば、さらに切れ味も強度も上がるからにゃ」
「こんな高いの貰っていいの?」
「最近、訓練頑張っていたらしいし、ご褒美にゃ~」
「やった~! チュチュチュ!!」
「ちゅーするにゃ~」
わしがべティを押し返してゴブリンと戦わないのかと聞いたら、べティはやる気満々。
「この勇者の剣の錆にしてあげるわ!」
「それ、ただのナイフにゃんだけど……」
「あれ??」
「にゃ~??」
しかし、さっきまで居たゴブリンは見当たらず。
「ノルンちゃんだよ~~~!!」
ノルンが勝ち名乗りをしているところを見ると、どうやらゴブリンはノルンが倒したらしいのであった……
「そんな~」
「危ないから、せめて一声掛けろにゃ~」
ゴブリンの群れはノルン一人で蹴散らしたので、べティは超ガッカリ。わしは壊れていないかノルンの全身を確認する。
「あれぐらいなら、ノルンちゃんでも余裕なんだよ。でも、力を使いすぎたから、ごはんちょうだいだよ~」
「もう勝手にゃ行動はするにゃよ~?」
ノルンは頷いていたから、エサやり開始。わしの指にむしゃぶりつくノルンから、いちおうどうやってゴブリンを倒したか聞き出してみた。
どうやらノルンのスピードのほうがゴブリンより遥かに速かったので、一切触れられず。背後から近付き、頭から出した角に電撃をまとってひと突き。これだけでゴブリンは倒れたらしい。
「ノルンちゃんの必殺技【妖精の怒り】は最強なんだよ!」
「ああ。あのビリッと来るヤツにゃ」
「あ……シラタマには効かなかったんだよ……」
「相手が悪いだけにゃ~。元気出すにゃ~」
ノルンがへこんでしまったがゴブリンはもう居ないので、ドロップアイテムを回収したら前進。少し行ったところで薬草の群生地を発見したので、皆でブチブチちぎり取る。
「もうそんにゃもんにしとこうにゃ。取りすぎたら生えなくなっちゃうかもしれないしにゃ」
「わかってるって。でも、あんまり収穫量ないわよ?」
「ああ。においの確認で寄り道しただけにゃから大丈夫にゃ。この先に、もっと強いにおいがあるから、たぶん大量に生えてるんじゃないかにゃ~?」
「ふ~ん。薬草より魔石のほうが高く売れるんだから、魔物が出て欲しいな~」
「それも問題ないにゃ。この先にウヨウヨ居るにゃ~」
「なるほど……あんなに簡単に折れていたのは、こっちが目的だったのね」
「借金返さなくちゃいけないからにゃ~」
「踏み倒そうとしてたクセに……」
べティは一言多いので、お喋りはここまでにして奥へと走る。すると、立って歩く豚、オークが3匹現れたので、わしとコリスのパンチで一撃。残り1匹は、べティに回してあげる。
「接近戦でもいけるかにゃ?」
「たぶん……」
「侍講習で習った通りやったら大丈夫にゃ。ま、ビビビッと来なくても、べティのスピードにゃら余裕で捌けるから、落ち着いてやるんにゃよ~?」
「うん! やってみる!!」
べティは基本は後衛なので、初の接近戦に挑むのは緊張していたから簡単なアドバイス。余裕と聞いたからか、べティの緊張は軽くなったようだ。
オークがズシズシと前進する中、べティもトコトコと前進。距離が詰まり、体の大きなオークのほうが射程範囲が広いので、先に棍棒を振り下ろした。
「ふぅ~。避けられたけど、後の先が取れなかった……」
「その調子で感じを掴むんにゃ~」
べティは素早く避けていたので、オークの動き出しはビビビッと掴めていると思われる。なので、わしが練習台にしてもいいと言うと、しばらくべティはオークの攻撃をひょいひょい避け続けるのであった。
「うん。いい感じ……行くよ!」
侍講習で習ったことを思い出しながら避けていたべティは、ここからが本番。オークの動き出しを先に捉えての、べティは先の先。
おそらくオークは棍棒を振り下ろそうとしたのに、気付いたらべティに左足を斬られていたのでオロオロしている。
「ほらほら~? オニサンこちら~♪」
片膝を突くオークはべティから目線を外していたのでわざと注意を引くと、オークはその体勢のまま横薙ぎ。これもべティは先の先で回り込み、オークの首を斬り裂いてトドメを刺すのであった。
「ふぅ~~~」
オークがチリとなって消えると、べティは大きく息を吐いて緊張を解く。
「にゃはは。疲れたにゃろ?」
「ええ。実践だと倍は疲れるのね。それに得物が短いからよけい疲れたわ」
「う~ん……それ以上長くすると、べティの筋力じゃ振り回されそうだしにゃ~」
「あの光の盾って攻撃に使えないの? リータが使ってた魔法」
「【光盾】にゃ? アレはわしの作った魔道具にゃ。いちおう【光一閃】って、剣にアレンジしてる魔法があるけど、魔力の消費が激しいからにゃ~」
「何それ! このナイフにも付けて~!!」
「まずはその長さに慣れろにゃ~」
いらんことを言ってべティのおねだりが始まったが、無い胸を強調しても効くわけがない。
「なんですって!?」
「さっさと狩りに行こうにゃ~」
わしの心を読むべティには、魔物のことを思い出させて話を逸らすのであった。
それからも、森の奥へ奥へとひた走ると、魔物の強さが上がって行く。オークの群れやオーガの群れ。大きなスライムだったり人骨が襲い掛かって来たり。様々な魔物が出現する。
基本、わしはネコパンチで一撃。触れるのが気持ちが悪い魔物には魔法で対応。
「いったい腰の物はいつ使うの?」
べティにツッコまれても、神剣【猫撫での剣】の出番はまだ来ない。だってスライム斬ったらヌメッとしそうなんじゃもん。
コリスもわしと同じくこの世界のオーバーレベルなので、リスパンチで一発。尻尾で薙ぎ払ったり、上からベチコーンッと叩き潰している。気持ち悪い魔物は、わし任せ。だって気持ち悪いって言うんじゃもん。
べティは接近戦ばかりやらせるとすぐに動けなくなるので、基本は得意の魔法。派手な魔法は魔力消費が激しいので使わせない。
「エクスプロー……」
「にゃん回言わせるにゃ~!!」
それでも無駄に派手な魔法を使おうとするので、わしは何度も止めて風魔法だけを使わせるのであった。
「ふふん。楽勝ね」
「楽勝にゃんだから、【エクスプロージョン】は封印しろにゃ~」
最後にノルンは……
「【妖精の怒り】なんだよ~!」
「勝手に攻撃するにゃと言ってるんにゃ~」
主であるはずのわしの言葉を無視。気付いたら一人で突っ込んで行って、頭から生やした角で魔物を倒してる。
「お腹ペコペコなんだよ~」
「燃費悪すぎにゃ~」
それも、ノルンの必殺技は魔力を使いすぎるらしく、使い切ってはわしの魔力を奪いに来るから厄介だ。
「次の休憩までごはん無しにゃ~」
「そ、そんな……ひどいんだよ! ネグレクトなんだよ! え~~~んだよ~~~!!」
「人聞きの悪いことを言うにゃ~」
それに魔力をあげないと泣き叫ぶので、わしは渋々補充するのであったとさ。
「甘やかしすぎてワガママな子供になるいい見本ね」
べティの教育論がわしの心に突き刺さる今日この頃であった……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる