アイムキャット❕❕~猫王様の異世界観光にゃ~

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18 勇者の旅立ちにゃ~

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 勇者誕生パーティーは夜が更けるとお開き。わし達と勇者パーティは城の同室を与えられたので、その和室で布団を並べて一夜を明かす。

「王女様とアオイさんは自分の部屋はないにゃ??」
「「えっと……」」
「アオイさんはわしの見張りにゃろ! そして王女様はハルト君の寝込みを襲いに来たにゃろ!!」
「「あ……あはははは」」

 そう。二人の行動は目的があってのこと。わし達をこの和室に監禁しているのも、女性でも大勢で寝るのだから大丈夫というアピールに他ならない。

「てか、王女様……ハルト君がめっちゃ引いてるんにゃけど、訂正しなくてよかったにゃ??」
「あっ! 違うんです違うんです。勇者様が寝ている内に既成事実を作ろうなんて思ってないんですぅぅ」
「作ろうとしているようにしか聞こえないんにゃけど……」
「ちがっ! 今日のところはラッキースケベが起きれば重畳ちょうじょうなんですぅぅ」
「コリス。王女様と一緒に寝てあげてにゃ~」
「う~ん。ねよ~」
「いや~! モフモフ~~~!!」

 犯罪に走りそうなサトミはコリスのモフモフロック。嫌とか言っていたわりには、幸せそうに寝てるな……
 これで危険は排除できたので、皆も安心して熟睡していたら、わしは誰かに鼻をこちょばされて目が覚めた。

「ねえ? あの子、なんなの??」

 わしを起こしたのは、妖精のモカ。

「ノルンちゃんとしか言わないんだけど~?」

 ノルンとの会話に疲れたみたいだ。

「にゃんかしんにゃいけど、鼻はわさわさしにゃいでくんにゃい?」
「目もダークで怖いの~。アレって本当に妖精なの? 教えてよ~」
「ひっくしょん! にゃろめ~。だから鼻をこちょばすにゃ~」

 モカはノルン並みにうっとうしいので、妖精ではなくゴーレムだとちゃんと説明してあげた。でも、お喋り好きらしく、ずっと話し掛けて来るので、わしの睡眠時間が削られるのであったとさ。


 翌朝、睡眠不足だからもう少し寝させてくれと訴えたけど、これから武闘王シンゲンと会わないといけないらしく、早く支度しろとサトミにモフられた。ハルトとの仲を深めるチャンスを潰したから怒っているみたいだ。
 どう考えても自分の行いが悪いとわしは文句を言いながら朝食を済ませ、準備を整えて玉座の間に移動。これから勇者の旅立ちの儀式があるそうだ。

「……ゴホンッ!」

 この機会は見逃せないのでわしがパシャパシャ撮っていたら、なんか全員に見られていたけどシンゲンはわしの行動に諦めて、咳払いしてから話を始めた。

「装備と支度金は昨日渡したからいいとして、その仲間だけでは少々不安だろう」

 ハルト達がいい装備に変わっているとは思っていたが、これはシンゲンが用意していたらしい。さらにはお金や仲間もくれるなんて至れり尽くせり。
 「わし達にはそんなのくれなかったのにね~?」とべティと喋っていたら、サトミと共に、大きな盾を背負った金髪の女騎士、リンが一歩前に出た。

「悩んだ結果、盾役を用意した。上手く使ってくれ」

 勇者パーティの構成は、アタッカーのハルト、たぶんアタッカーの白狼レオ。んで、これもたぶんだけど支援職の妖精モカ。そりゃ悩んで決めたのだろうが、わしは気になることがあるのでちゃちゃを入れる。

「王女様もパーティに入ったにゃ?」
「ああ。これでも国一番のヒーラーだから力になるはずだ」
「ふ~ん……本心はどうにゃの?」
「どうしても行くと聞かなくて……だから、サトミの暴走を止められる騎士を……」
「心中お察ししますにゃ~」

 シンゲンが珍しく嫌そうな顔をしていたので心の内を聞いてみたら、簡単にゲロッた。おそらくだが、娘に頭が上がらないのだろう。だからこその、女騎士。男では羽交い締めにできないからの配置だ。

「では、勇者一行よ……これからの活躍に期待しているぞ」
「「「「はっ!!」」」」
「ワンッ!!」

 こうして勇者パーティは結成され、凛々しい姿をわしにパシャパシャ撮られるのであった……


 勇者パーティが部屋から出て行くのでわし達も続こうとしたら、シンゲンから待ったが掛かったので話をする。

「それでシラタマ達は、これからどうするのだ?」
「う~ん……やることもにゃいし、適当に冒険者活動でもしよっかにゃ~?」
「そうか。ならば引き続き、案内役にアオイをつける」
「案内役じゃなくて見張りにゃろ? てか、にゃんでわしのパーティにはアサシンを送って、勇者パーティにはヒーラーと騎士にゃの? 差別しすぎにゃ~」
「もう行っていいぞ」
「支度金も装備も貰ってないにゃ~。そうにゃ! 暗殺されるところだったのも謝ってもらってないにゃ~。にゃあにゃあ?」

 わしが文句を言いまくっているのにシンゲンは聞いてくれない。それどころか「シッシッ」と邪険にされて摘まみ出されてしまうわしであった。


 部屋から追い出されて適当に歩いていたらバルコニーに出たので、そこから下を見たらちょうど勇者パーティが城門に向かって歩いているのが目に入った。

「あ~あ。にゃんだか納得いかないにゃ~」
「まぁアレじゃない? 正規ルートと裏ルートの違い。シラタマ君じゃ仕方ないわよ」
「裏ルートとわしがにゃんで関係してるにゃ?」
「だって……魔王じゃん?」
「誰が魔王にゃ~。てか、このルートって、べティが作った魔法少女ルートにゃろ~」
「うっ。たしかに……えっ? 魔法少女ルートって貰える物はアサシンだけなの!?」
「にゃはは。胡散うさんくさかったもんにゃ~」
「いやいや、どう考えても魔王ルートでしょ!」

 わしとべティがどちらのせいで裏ルートに入ったのかを揉めていたら、勇者パーティは消えていた。なのでわし達も撤収することになり、ここから飛び下りようとしたらアオイに止められた。
 アサシンやってるクセに、高い所は怖いみたいだ。仕方がないのでアオイに案内を頼んで城から出ようとしていたら、わし達をつけている人を発見。
 なかなか声を掛けて来ないので、どちらが声を掛けるかでべティと肘で牽制していたら、追跡者は城門近くになってようやく回り込んでわし達の道を塞いだ。

「王子様がにゃんの用?」

 わし達をつけていたのはケンシン。つけられる理由がわからないからべティに押し付けようとしていたのだ。

「貴様には決闘を申し込んだはずだ。忘れたとは言わさないぞ」
「忘れたにゃ。ほにゃさいにゃら~」
「言うなよ!!」

 本当に忘れているのに、ケンシンは見逃してくれない。

「これを受け取れ!」

 ケンシンがまた手袋を投げて来たので、わしはまた爪で引っ掻きまくって消してやった。

「フッ……やはりな」

 すると、ケンシンはわしを指差しながらドヤ顔。

「アイテムボックスを目にも留まらぬ早さで開閉して消していたんだな!」
「ブッ……」
「「「「にゃはははははは」」」」

 あまりにも的外れなことをドヤ顔で言うものだから、わし達は大爆笑。アオイは王子様相手に笑えないので、軽く吹き出したあとは後ろを向いている。

「なっ……何がおかしいんだ! 笑うな~~~!!」

 笑うなと言われても、無理。数分時間をくれとお願いして、笑いが止まるのを待ってもらった。

「はぁ~。おっかしいにゃ~。あ、そうそう。謎解きの答えは……アオイさんって見えてたにゃ?」
「やり方は昨晩聞いていましたが、まったく目で追えませんでした」
「と……いうことが答えにゃ」
「ど、どういうことだ……」

 ケンシンはわかっているのに聞き返して来るので、わしは言葉にしてあげる。

「爪でちょちょいと切っただけにゃ。ホコリみたいに小さくなるまでにゃ」
「やはりそうだったか……」
「さっきアイテムボックスって言ったにゃ~」

 ケンシンが自分の思い描いていた展開に戻そうとしているので、わしは邪魔しまくったけど止まらない。

「先に決闘を言い渡したのは、貴様だ! 手袋にも触れていたのだから、受け取ったも同じだ!!」
「だからにゃんの為にゃ~」
「俺に恥を掻かせたからだ!」
「そういうのはハルト君とやってくれにゃ~」

 逆恨みに付き合う気もないのだが、ケンシンは早くも斬り掛かって来たのでわしは対応する。

「なっ……」

 ケンシンの剣は空振り。というより、剣はわしが先の先で奪い取っていたので、エアー素振りをしただけ。そこでわしが剣を持っていたから、ケンシンは驚いているのだ。

「実力差はわかってくれたかにゃ?」
「いや! まだだ! 俺がゼロレベルに負けるはずがない!!」

 わしの情報を知って勝てると踏んで来たのか、ケンシンは元気なので剣は返してあげた。

「喰らえ! フィフススラーシュッ!!」

 すると、ケンシンはおそらくスキル発動。たぶん五回斬る技なのだろうが、わしがまた先の先で剣を奪ってしまったので、剣無しの素振りを見せられただけだ。

「にゃはっ。にゃはっ。いつまでやってるにゃ~」
「きゃはっ。これ、五回振らないと終わらないヤツじゃない? きゃははは」
「それは悪いことしたにゃ~。にゃはははははは」

 別に恥を掻かそうと思ってやったわけではないのだが、ケンシンが無様すぎて大爆笑。

「ほい。もう一回やってにゃ~」

 面白かったのでアンコール。剣を返してあげたらケンシンは涙目だ。

「誰がやるか! ファイヤースラッシュだ~!!」

 当然わしのお願いは却下され、次なるスキルがわしを襲うので、今回は剣を奪わずに見学する。

「おお~。炎が出てるにゃ~」
「熱くては奪えないようだな!」

 わしはケンシンの剣をピョンピョン避けていたら勘違いしていたので、今度は見える速度で強引に奪い取ってやった。

「まぁ……我慢できないほど熱くはないにゃ」
「はい?」

 燃える刀身を素手で握って奪い取ったので、ケンシンもとぼけた声を出してしまった。

「これって魔剣ってヤツにゃ? それともスキルってヤツで燃えてるのかにゃ?」
「ス、スキルだが……」
「他にもないのかにゃ~? ドンドン見せてにゃ~」
「ば、化け物……」

 ここでやっと、ケンシンは何と戦っていたか理解して顔を青くする。

「化け物にゃんて失礼にゃ~。こ~んにゃかわいらしいのににゃ~」

 わしは両頬を人差し指でブニプニしつつ、かわいいアピールをしながら隠蔽魔法を解く。その時間、わずか0、5秒。

「い、命……命だけは……ガクガクガクガク」

 それだけで、目の前に居る人間が身を振るわせて失禁垂らし、命乞いをするには十分だった……

「にゃはは。わしの犬になるにゃら許してやるにゃ~」
「「ワ、ワン!」」
「アオイさんには言ってないにゃ~」

 ちょっと離れた所に立っていたアオイまで、わしの犬になるのも十分であったとさ。
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