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19 久し振りに働くにゃ~
しおりを挟む異世界に来て初の犬を二匹作り出してしまったが、別に連れて歩く気はないのでケンシンにはいつもの仕事をしていろと言って逃がしてあげた。しかし問題はアオイ。
「くうぅ~ん」
わしのパーティメンバーだからスリ寄って来るので歩きにくい。そのことをべティがからかって来やがる。
「ふ~ん。こんなふうにして犬を増やしてたんだ」
「いや、ちょっとした冗談なんにゃ~。それにゃのにみんにゃずっと続けるから困ってるんにゃ~」
「まぁあんな威圧に晒されたら、誰でもそうなるか」
「ちょっとだったにゃ~。そこまで広がってないにゃろ~?」
「ギリね。あたしでギリよ。ホント、ギリギリだったわ」
「まさか……チビったにゃ? ごめんにゃ~」
「チビってないから謝るな~!!」
隠蔽魔法を0、5秒解いただけで大惨事。べティは本当はちょっとチビっていたみたいだけど、ほんのちょびっとだったからギリギリと言ってたっぽい。
ちなみにコリスは、わしの威圧をもっと長く浴びたこともあるし信頼しているので、まったく怖がっておらずにニコニコしてる。ノルンはゴーレムだから感じていない。スカウターは持っていないようだ。
やはりここでも問題はアオイ。けっこうやっちゃっていたのに、自分では気付いていない。わしの威圧のせいでいろんなところがバカになっているようだ。
なので、水魔法【水玉】をぶつけ、全身水浸しでこの場をやり過ごす。におい的にお漏らしだけなので、こうしておけば尊厳だけは守られるはず。
わし達は慌てていつも泊まっていた宿に逃げ込んだのであった。
いつもの部屋に案内してもらったら、さっそくお風呂。アオイだけ押し込むのもアレなので、べティに洗ってあげるように指示を出した。
べティは特に反対していなかったから、やっぱりパンツが気になっていた模様。なので、今の内に洗濯してあげようと脱衣場に入ったら、どこからか視線が!?
「お~い~て~け~~」
「怖いから変にゃ見方するにゃ~」
浴室の扉、少し開いた一番下の隙間から目玉が縦にふたつ並んでいたからには、けっこう怖い。洗濯は自分でやりたいみたいなのでここはべティに任せて、わしはコリスとノルンと一緒にお昼寝するのであった。
べティはわし並みに魔法が得意なので、お洗濯もお手の物。綺麗になった物も乾かしていたので、ランチの時間に起きた頃には、二人ともさっき着ていた服装だった。
ランチは頼んでいたルームサービスと手持ちの料理を平らげ、またお昼寝。べティも体はまだお子様なので、コリスに埋もれて寝ている。アオイも犬なので、とりあえず主人のマネをしてるっぽい。
そうこうしていたら夕方になったので、今日はべティ料理を作る。犬も居るから、わしも楽ができる。
わいわいと皆で協力して料理を作っていたら、ルームサービスを頼んでもいないのにノックの音が響いた。何かあったのかとドアを開けたら、そこには勇者パーティを引き連れた笑顔のサトミ。
「にゃんか用??」
「部屋は取れたのですけど、この時間だと料理が出ないみたいなんですよ~」
「外に食べに行けばいいにゃろ~」
わしがドアを閉めようとしたら、サトミ警部が足を入れて来たので閉められず。
「いまのどうやったにゃ? 足、ぐにゃぐにゃ曲がってにゃかった??」
「いいにおい~。料理中だったんですね~」
「勝手に入るにゃ~」
サトミの足がスライムみたいになってドアの隙間から入って来たように見えたのでわしが驚いていたら、その隙にサトミは突入。ハルトが代わりに謝っていたので許すしかなくなり、全員中に通してあげた。
「この人数で足りそうにゃ?」
「コリスちゃんが居るんだから、足りるわけないでしょ」
「だよにゃ~。王女様も手伝ってにゃ~」
料理長のべティに尋ねるまでもなく、作っていた料理ではまったく足りない。仕方がないので応援を頼んでみたら……
「もう! なんで言う通りやらないのよ! 出て行け~~~!!」
サトミと女騎士リンがやりたい放題で、べティ料理長から戦力外通告。料理の苦手なわしでもべティから褒めてもらえるのに、何をしたんじゃ……
あ、青い粉末を勝手に足そうとしたんですか。まな板まで煮込もうとしたんですか……正気ですか??
王女様と女を捨てた女騎士では、料理をしたことがないのだから仕方がない。まずまずな腕前のハルトに手伝ってもらい、サトミ達には先に食べさせた。
コリスはこっち食べようね~? オオカミさんはこっちね~?
コリスを野放しにすると頬袋に詰め込みまくるので、わしの持つ出来合いの料理を渡してサトミ達の料理を守る。ちなみに白狼レオ用は肉の塊。炙っただけでいいみたいなので、先に出してあげた。
わいわいと聞こえる声を聞きながら料理を続ける中、わしはベティに気になることを聞いてみる。
「にゃあにゃあ?」
「ん?」
「ベティって、レベルアップの効果で筋力上がってにゃかった?」
「そうだけど……それがなに??」
「いまにゃら自分で作れないのかにゃ~っと思ってにゃ~」
「あ……ホンマや!?」
ベティ、痛恨のミス。大人以上の筋力になっているのだから、包丁どころかフライパンだって軽々持てる。
「うっ……届かない……」
「台ぐらい自分で作れにゃ~」
「ホンマや!!」
ベティ、続けざまのミス。高いキッチンでも、土魔法を使えば楽々届くのに忘れてやがる。わしなんて、毎回、手伝う時に台を作って邪魔にならないようにすぐ片付けているのに……
ベティが水を得た魚のように料理をすることでスピードアップ。そのおかげでサトミ達が食べ終わった頃には第二弾も完成したので、わしたち料理班はゆっくり食べるのであった。
「それにしても、そのオオカミさんって、今朝より大きくなってにゃい?」
「我は白狼からフェンリルに進化したのだ」
「……喋ってるんにゃけど~??」
ごはんを食べながらハルトに話を振ったらレオが答えたので、わしは混乱。オオカミが偉そうに喋っているから当然だ。コリスはリスだけど、喋れるのは練習したからいいのだ。
「僕も驚きましたけど、今までは通じるだけだったので、話ができるようになって嬉しいです!」
「我も美味なる物を要求できて助かる」
「フェンリルさんも、ハルト君と喋れるようになったことを喜ぼうにゃ~」
なんだか二人の会話がズレているので、話の修正。どうやらレベルが上がって進化したことで、レオに【会話】というスキルが現れたそうだ。
「へ~。そんにゃにレベルの上がりが早いんにゃ」
「はい。僕もそうですが、勇者の剣の効果で、パーティメンバーも経験値が倍は入るようになっているみたいです」
「にゃるほどにゃ~。それにゃら、あとは技術だけだにゃ」
「ですね。魔王と対峙する前に、なんとか対応できるだけの実力になればいいのですが……」
「ま、なるようになるにゃろ。明日はにゃにするにゃ~?」
勇者の活動に興味が出たので、話が弾む。べティもいまさら勇者パーティに入りたいとか言って断られる。パーティ編成は五人だからだ。
この日は勇者パーティに料理を振る舞い、楽しく過ごすのであった……
「これ、持って帰れるにゃ?」
「いえ、女性に触れるなんて……どうしましょう!?」
サトミとリンは食べ過ぎて仲良くグロッキー状態。女性が苦手なハルトの代わりに、わしとコリスでスウイートルームまで送り届けるのであったとさ。
翌日はたまにはお仕事しようと冒険者ギルドに顔を出したら、依頼の争奪戦真っ只中。わしとしては今日も休んでよかったのだが、べティがブーブーうるさい。
なので、先日目を付けていた太陽の雫を持ち帰る依頼にロックオン。高ランクの依頼ということもありまだ残っていたので、わしは冒険者の押しくら饅頭に突っ込んだ。
「にゃ!? 誰にゃ服に手を入れてるヤツは! いにゃ~~~ん!!」
その中には、猫を撫でたい変態さんも居たので、着の身着のままべティ達の元へ戻るわしであった。
「きゃはは。朝からお疲れね~」
「犯人はこの中に居るんだよ! きゃははは」
時間短縮で先に受付に並ばせていたコリス達と合流したら、ボロボロのわしを見てべティとノルンが笑いやがる。
「もう、散々にゃ目にあったにゃ~。女性とか、こんにゃ所に入って大丈夫なのかにゃ~?」
「それは……悲鳴とか聞こえてないから大丈夫じゃない?」
「にゃんでわしだけ襲われるんにゃ~」
「モフモフだからよ」
「モフモフ差別にゃ~」
無駄話をしていたら受付カウンターに着いたので、依頼用紙と冒険者カードをウサミミ受付嬢に提出。この人はわし達の強さを知っているので、すぐに作業を始めてくれた。
「では、マジカルウイッチの皆様、気を付けて行って来てくださいね」
「またパーティ名変えたにゃ!?」
「う~ん。響きで決めたけど、魔法の魔女って変ね」
「コロコロ変えるにゃ~」
パーティ名の変更をツッコンでいたら後ろに並ぶ冒険者から怒られたので、すごすごと立ち去る。
こうして、新・猫パーティ改め、マジカルキャッツ改め、マジカルべティ&ノルン改め、マジカルウイッチの活動が再開するのであった。
太陽の雫の入手場所は、北西にある竜の山と呼ばれる場所。片道5日以上掛かるらしいが、わしとコリスがダッシュしたら小一時間で山の裾野に到着した。
「わ~お。雰囲気のある山ね~」
「岩石地帯かにゃ? にゃんで枯れた木がそのまま突っ立てるんにゃろ??」
「この世界は不思議なんだよ~」
「もう着いた……」
竜の山は草ひとつ生えない死の山。枯れ木が所々立ち、おどろおどろしさを醸し出しているので、わし、べティ、ノルンは感想を言い合い、アオイはあまりの速度に驚いている。コリスはいつも通り。
「たしか……太陽の雫は中腹辺りだったかにゃ?」
「あの辺じゃない? なんかいっぱい飛んでるわよ??」
「じゃあ、とりあえずそこに向かうにゃ~」
「あ、ちょっと待って」
双眼鏡で目的地を確認して決まったら、べティから待ったが掛かった。
「ノルンちゃん、いくわよ!」
「うんだよ!」
「「マジカル~。チェ~ンジ!」」
べティが止めた理由は、変身アイテムで魔法少女に変身したかっただけ。二人はなんか踊っているから相手をするのも面倒くさい。
「先に行ってるからにゃ~?」
目がチカチカする変身シーンに興味がないわしは、スタスタと歩き出したのであった。
べティ&ノルンがキレながら追い付いて来たら、べティをコリスに乗せてかっ飛ばす。
「【ファイヤーアロー】!」
「【アイシクルアロー】だよ~!」
その道中、トカゲみたいな魔物が出たら魔法少女タッグの攻撃魔法。見事に射貫いていたが、敵は二匹だけではない。
「シネ! シネシネ!」
「ブッコロブッコロブッコロ!」
「「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ」」
「もうちょっとかわいらしい顔で戦ってにゃ~」
ベティ&ノルンの顔は邪悪な感じ。魔法を乱発する二人はとても魔法少女がしていい顔ではないので、わしは何度も注意するのであったとさ。
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