アイムキャット❕❕~猫王様の異世界観光にゃ~

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26 勇者の苦悩にゃ~

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 太陽の迷宮でレベル上げをした勇者パーティは、わしの作ったチート針のおかげで楽々限界レベル到達。なんか「ネコキラー」とか猫を殺す道具みたいな名前を付けようとしていたので、全て没収した。

「「返してだよ~!」」
「鼻をわさわさするにゃ~。ひっくしょん。にゃろめ~」

 ノルンとモカの妖精タッグはわしの顔の前を飛び回るので、くしゃみが止まらない。本物の妖精モカが鱗粉を撒き散らしてノルンが広げるから、花粉症ようせいふんしょうになってしまいそうだ。
 なので、絶対に危険な使い方をしないことと「ネコキラー」と名付けないことを約束させて贈与してあげた。

「アレは王家で保管すべき物なのに……」
「まだ言ってるにゃ~? あんにゃん持ってても、シルバースライムを捕まえられなきゃ無意味にゃ。サトミさんは針だけで倒せたにゃ??」
「倒せませんでしたけど~」

 レベルマックスでも、こんな小さな針で素早いシルバースライムを居抜くのは至難の技。ノルンとモカがいい線いったぐらいなので、結局は宝の持ち腐れだ。

「さってと……ここからどうやって帰ろうかにゃ?」
「帰還玉を持ってますけど、針と交換でどうですか?」
「諦めろにゃ~」

 諦めの悪いサトミから帰還玉とやらを奪い取ったらハルトに使い方を聞き、パーティ別で使って地上に帰るわし達であったとさ。


 帰還玉と聞いたからには要塞都市まで戻ることができるのかと思ったが、超お高いお値段のわりには太陽の迷宮から出ただけ。まぁ普通に歩いたら半日は掛かりそうな距離だったので、時間短縮できたのはいい効果だろう。
 あとはバスを走らせて帰るだけ。ブッ飛ばして要塞都市に着いたら、貴族専用の門をサトミの王女オーラで突破。そのまま冒険者ギルドにバスを横付けしてやった。

「わあ~。紅蓮竜をたったふたパーティで倒したんですか~。さすが勇者様です~」

 ウサミミ受付嬢が棒読みでこんなことを言うので、わしは「何言っちゃってんの?」って顔。しかし、サトミからさっさとアイテムを出せと肘打ちされたので、紅蓮竜討伐を勇者パーティに押し付ける作戦の真っ只中と思い出した。

「そうでしたにゃ~。わしは荷物持ちしてたんだったにゃ~。さすが勇者パーティだったにゃ~。プッ……にゃはははは」
「「「きゃはははは」」」

 あまりにも自分の演技が下手クソだったので、わしが吹き出して笑ったら、コリス、べティ、ノルンまで大笑い。サトミ達は苦笑いして、額に浮かぶ汗を拭っている。

「べ、別室でうけたまわりましょうか? 周りの目もありますしね」

 冒険者はわし達の笑っている意味がわかっていなかったが、ウサミミ受付嬢が機転を利かせて会議室へ。そしてわしは壁ドンされた。

「出せ……」
「にゃ、にゃにをでしょうか?」
「また何か面倒な物を持ち帰って来たんだろ? 楽になっちゃいなよ~」
「ほんの出来心だったんにゃ~」

 ウサミミ受付嬢のノリに合わせて、わしは犯人っぽく演技。今回は上手くできていると思い、ドヤ顔で太陽の迷宮で手に入れた物をドボドボっと出してあげた。

「アホか!!」

 そしたら何故か、ウサミミ受付嬢から拳骨もらった。

「手、大丈夫にゃ? 魔法で治そうかにゃ?」
「お願いしますぅぅ」

 わしの頑丈な頭を殴ったなら、そりゃグキッとなるのは明白。別にわしは痛くも痒くもないので拳骨はツッコミと受け止めてあげたら、ウサミミ受付嬢も正気に戻っていた。

「ところで、にゃにがアホにゃの?」
「それはシルバースライムの魔石がこんなにあるからですよ」
「安いって聞いてるんにゃけど~?」
「それは一匹倒すのに十匹は逃がすから、費用対効果で冒険者の稼ぎが安いって意味なんです。これ、魔石の買い取り表なんですけど……」
「にゃんですと!?」

 わし、納得。メタルスライムの魔石は上から13番目。オークの魔石と比べると十倍は価値が高いのだから、今回の稼ぎもとんでもないことになりそうだ。

「ちなみに……これで全部ですか?」
「アホって言わにゃい??」
「はぁ~~~」
「そのため息は、勇者パーティにかけてにゃ~」

 わしは取り分である半分を出しただけ。勇者パーティと折半して物も渡してあるから、ため息を吐きかけられるのも筋違いだ。
 とりあえずハルトにも魔石を出させたら、ウサミミ受付嬢のため息は、またわしに飛んで来たのであったとさ。


 諸々の手続きが終わったら、今度は勇者パーティが絡まれていたのでそうっと逃げ出そうとしたら、勇者パーティとウサミミ受付嬢に回り込まれた。

「さっきの『ザザザ』って音にゃに??」
「逃がしませんよ!」
「『ザザザ』を聞いてるんにゃ~」

 なんだか逃亡が失敗して敵に回り込まれたような効果音が鳴ったのに、相変わらずサトミ達は無視。ウサミミ受付嬢を押し付けて来やがった。

「どうして全員レベル99なのに、シラタマさんとコリスさんはゼロのままなんですか~」
「だからにゃ。さっきの『ザザザ』はにゃ」
「効果音です。そんなもんです。さあ、答えてください!!」
「そんにゃわけあるか~い!」
「日常にあります」

 わしの渾身のツッコミは冷たく流されたので、どこからか「シーーーン」って音が聞こえて来たので恥ずかしい。本当に日常にある音らしいので、キョロキョロしているのもわし達だけだ。

「えっと……ゼロレベルだからじゃにゃい??」
「そんなわけあるか~い!」

 わしのツッコミは「シーーーン」だったのに、ウサミミ受付嬢のツッコミは「ズバーーーッ!」って鳴ったので、どこからツッコンでいいか悩む。

「わしとコリスは、べティとノルンちゃんにおんぶに抱っこなんにゃ~」
「アオイさんからは、シラタマさん主動って聞いてますよ?」
「にゃに喋ってるんにゃ~!」

 アオイがてへって顔をしているので、さすがにわしも腹が立って来た。

「わしは冒険者にゃ。仕事をして対価を得るだけにゃ。あんまりしつこいと、もう仕事しないにゃ~」
「うっ……出過ぎたマネをしました。申し訳ありません……」

 その怒りをウサミミ受付嬢にぶつけたら、ようやくわしは解放してもらえるのであった。


 紅蓮竜討伐で賑わう冒険者を押し返してギルドを出たら、バスに乗り込んでいつもの宿へ。従業員に「晩ごはんはなんでいもいいから」と頼んだらギリギリ出してくれることになったので、自室にて体を休める。

「にゃんでわしの部屋で食ってるにゃ?」
「美味しい物が出る予感がありまして……」
「食べたら帰るんにゃぞ~?」

 サトミとの押し問答も、今日は面倒くさい。次元倉庫に入っている猫の国料理を出して、勇者パーティに食べさせたら追い出した。
 それなのに、しばらくしたらハルトだけが戻って来た。

「にゃんか用かにゃ?」
「シラタマさんと話をしたくて……少しだけいいですか?」
「……いいにゃ。ついて来いにゃ」

 ハルトは何か思い詰めているように見えたので、わしはバルコニーに連れて行き、そこにある椅子に座らせた。

「お酒って飲んだことあるにゃ?」
「はい。少しだけですけど……」
「それにゃら、アルコールが弱い物のほうがいいにゃろ。さっぱりしてるから飲みやすいはずにゃ~」

 ハルトは16歳と聞いていたのでお酒を勧めるのはマズイかと思ったが、この世界では飲んでも罪には問われないみたいなので、べティから習ったレモンサワーを作り、わしはウィスキーの水割り。
 軽くグラスを合わせてから、口が重そうなハルトとの話を開始する。

「にゃんか困っているのかにゃ?」
「はい……」

 ハルトはレモンサワーを半分ほど飲んでからグラスをそっと置いた。

「僕が勇者でいいんでしょうか?」
「にゃ??」
「だって、僕はシラタマさんに逆立ちしても勝てるとは思えません。僕より、シラタマさんが勇者をやるべきだと思うんです……」

 一緒に行動したからの自信喪失。レベルマックスでも、ハルトはわしの足元にも及ばないと気付いてしまったからの悩みだろう。
 その悩みを聞いて、わしは水割りを一気に飲み干し、お代わりを作りながら口を開く。

「王女様から、わしのことをにゃにか聞いてるかにゃ?」
「いえ、何も……」

 わしは水割りを一口飲んでから、真実を告げる。

「実はわし達は異世界からやって来てるんにゃ。言ってる意味、わかるかにゃ?」
「少しは……でも、それって赤ちゃんからって聞いたことがあるのですが……」
「らしいにゃ。でも、わし達は、こうしてこの世界に迷い込んでしまったのは事実にゃ。そんにゃわしが、この世界を救ってしまっていいものなのかにゃ?」
「それは……わからないです」
「にゃろ? この世界にはこの世界のルールがあるはずにゃ。例えば、勇者にゃ。三十年に一度魔王が復活し、勇者が倒して来たのに、それをわしが変えていいにゃ? わしは、それはよくないことだと思うにゃ。ルールを破っては、必ず綻びが生まれるにゃ。わしが恐れていることは、勇者が倒さなくても誰かが助けてくれるとか、努力しなくてもいいとか考えさせてしまうことにゃ」

 真っ直ぐわしの目を見るハルトに、わしはもう一度問う。

「勇者が魔王を倒さなくていいにゃ?」
「いえ……」
「勇者が救ってくれなかった歴史を作っていいにゃ?」
「……いえ!」
「にゃはは。さすがは勇者にゃ。もう迷いは消えたようだにゃ」

 わしが笑うと、ハルトは残りの酒を飲み干して立ち上がった。

「はい! 僕はこの世界を守る勇者です! 必ずや、人々の笑顔を守ります!!」
「よく言ったにゃ! ささ、もう一杯、グイッとやってくれにゃ~」
「いただきます!」

 こうして勇者ハルトは決意を固めて、自室に帰って行ったのであった……


「な~んだ。そういうことだったんだ~」

 わしがバルコニーに戻って酒をチビチビやっていたら、もう寝たと思っていたべティが椅子に腰掛けた。

「にゃんのこと??」
「シラタマ君がかたくなに勇者を断っていたことよ」
「だって面倒なんにゃも~ん」
「きゃはは。もう遅いって~」

 べティはわし達の話を全て聞いていたので、嘘は通じない。嘘ではなく、わりと本気だけど……
 しかし笑っていたべティは、すぐに真面目な顔に変わる。

「この転移にはアマテラス様が関わっているのよね? てことは、そんなに簡単に解決するものかしら……」
「言うにゃよ~。ずっと考えないようにしてたんにゃ~」
「あ、これってフラッグってヤツ? あたし、シラタマ君より早く死んだから、そういうの詳しくないんだよね~」
「あ~あ。べティのせいで、この世界は絶体絶命の大ピンチにゃ~」
「そこまでなるの!? ちょっとよからぬことを考えただけじゃな~い」
「これはマジカルべティ&ノルンに頑張ってもらわなくちゃだにゃ。にゃははは」
「シラタマ君がなんとかしてよ~。きゃはははは」

 アマテラスがわしをこの世界に連れて来たのは、何か使命があってのことだろう。できれば何も起こらないことを望み、わしとべティは救済の押し付け合いをしながら笑い合うのであった。
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