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27 勇者ハルトの魔王討伐・裏にゃ~
しおりを挟む太陽の迷宮でレベルマックスとなった勇者パーティは、宿で二日の静養を取り、ちょっと太ってから魔王討伐に旅立った。
太った理由は、毎日三食、超美味しいべティ料理と猫の国料理をたらふく食っていたからだ。死ぬかもしれないと言われて断れなかったんじゃもん。
その勇者パーティを玄関で見送ったわし達は、宿を引き払って遠くから勇者パーティを見守っていた。
「この辺は余裕そうだにゃ~」
「だね。見てるのもつまらないし、どっか行かない?」
魔の森に入ってしばらく双眼鏡で確認していたが、べティはもう飽きて来たみたいだ。
「どっかって言われてもにゃ~。観光スボットも知らないにゃ~」
「それなら大丈夫V。調べて来た! ここから南西に行った所に魔獣の山ってのがあるらしいの。グリフォン見たくな~い?」
「べティは満喫してるにゃ~。ま、暇にゃし見に行こうにゃ~」
暇潰しに、異世界観光の再開。ノルンがべティの頭に乗り、ベティとアオイがコリスの背に乗り込むのを確認したら、わしは走り出したのであった……
「魔獣の山って、竜の山ぐらい危険なのに観光って……」
ただ一人、アオイだけが何かブツブツ言っていたけど……
勇者パーティをつけている最中だから時間を掛けられないので、移動中の魔物はわし担当。探知魔法で確認しつつ、目に入った瞬間にスピードを上げて居合斬り。
「またつまらぬ物を斬ってしまったにゃ……」
「かっこつけてたら置いて行くわよ~?」
「にゃ!? 待ってにゃ~!!」
せっかくかっこよく、サイが立ったような魔物を倒せたのに、べティ達はスピードを落とさず通り過ぎて行くので、わしは慌ててドロップアイテムを拾って追いかける。
そして一緒に走っていたら、また魔物を発見。あっという間に斬り捨ててやった。
「地獄に橋を掛けて差し上げにゃしょう……」
「かっこつけてないで、さっさとアイテム拾ったら? だから置いてかれるのよ」
「にゃ!? 待ってにゃ~!!」
てなことを続けていたら、魔獣の山に到着。竜の山のようにおどろおどろしい山で、探知魔法によると魔獣がわんさか居る。
「けっこう居るみたいにゃけど、どうしよっかにゃ?」
「ここはマジカルべティ&ノルンの出番よ! ノルンちゃん、いっくよ~?」
「うんだよ~!」
「「マジカル~、チェ~ンジ!」」
二人はなんか踊っているので、わしはアオイを見る。
「アオイさんもやってみるにゃ?」
「私ですか? 私は……その前に、あの子達はいいの??」
「ほっといていいにゃ。レベルもマックスにゃんだし、腕試ししたいにゃろ?」
「はあ……じゃあ、ちょっとだけ……」
アオイと喋っていたら、どこかから「キュピーン!」とか聞こえて来たので変身が終わったのだろう。
「「なんで見てない(んだよ!)のよ!」」
わしが見てないと知った二人は詰めよって来たけどしらんがな。
「興味ないからにゃ~」
「いっぱい練習したのにひどいんだよ~」
「ノルンちゃん、もう一回いくよ!」
「うんだよ!」
「勘弁してくれにゃ~」
なのに、マジカルチェンジのお代わり。これを見ないことには何度もお代わりが来そうなので、わしは渋々最後まで見て拍手まで送るのであったとさ。
「「マジカル~、ドッキング~!」」
「「にゃ??」」
べティ&ノルンはなんかそんなことを言って、ノルンはわしの頭の上に着地。べティはコリスの背中に乗ろうとゴソゴソ登っていた。
「「さあ、前進よ~!」」
「その前に説明しろにゃ~」
マジカルドッキングの概要は、なんのことはない。わしとコリスを乗り物に見立てただけ。山道を走って登るのはしんどいし、ノルンは常に魔力の補給が必要だからわし達の力を借りたいだけっぽい。
「へ~へ~。行けばいいんにゃろ~」
「「出発進行~!!」」
二人に絡むのは面倒なので、言うことを聞いてわしとコリスはダッシュ。群がる魔獣は、空からならばべティ&ノルンの遠距離攻撃魔法で倒し、地上の魔獣はアオイがクナイで斬り捨てる。
「あはははははは」
それも、べティ&ノルンより、アオイはめっちゃ笑って楽しそう。
「あの子、大丈夫? ずっと笑ってるわよ?」
「目がマジで怖いんだよ~」
「さあにゃ~? わし達のせいでストレス溜まってたのかもにゃ~」
あのべティ&ノルンの引かすとは、アオイはなかなかのやり手。最初はレベルマックス効果で強くなったから調子に乗っているのかと思ったが、時々「なんで私が~!」とか言っていたから、わしの予想が正しいのだろう。
アオイの活躍でべティ&ノルンのテンション下がっていたが、そこから復活するのは早い。次々と魔獣を倒し出した。
「フンッ……峰打ちなんだよ」
「ノルンちゃんは接近戦はやめとこうにゃ~」
「猫又流抜刀術……『駆け猫』なんだよ~!」
「危ないからわしのマネするにゃ~」
レベルがマックスになって調子に乗っている者はここにも。ノルンはわしのマネして、白銀の針でバッタバッタと魔獣を倒している。
あんなに小さい者の攻撃なのに、どうしてわしより三倍以上あるイノシシみたいなのがチリとなるのかわからない。この世界は不思議だ。
「あたしもそれやる!」
「べティは魔法少女なんにゃろ~」
「猫又流……なんとか斬り~~~!!」
「覚えてないにゃらやるにゃよ~」
ノルンに触発されて、べティまで調子のビックウェーブ。わしの作った白魔鉱のナイフに魔力を注ぎ、先の先をしたり後の先をしたりして魔獣を斬り捨てる。
こちらも自分より倍以上あるサルっぽい魔獣を、一撃から三撃で倒しているので、もしかしたらレベル差が物を言っているのかもしれない。
皆が接近戦をやりたがるので、空と遠距離攻撃はわしとコリスの担当。三人の援護射撃に努めて、魔獣の山を登るのであった。
「「ゼーゼーゼー……も、もうダメ……」」
「ノルンちゃんもお腹ペコペコなんだよ~」
「飛ばし過ぎにゃ~」
そんな戦闘をしていたら、三人は中腹を越えた辺りで限界。わしとコリスで魔獣を蹴散らし、地下に掘った穴でランチにする。
「これって本当に効くのかにゃ?」
妖精っぽいけどゴーレムのノルンにはわしの魔力を与えたら完全復活したのだが、べティとアオイは人間なので、少し休んだ程度では疲れが取れていなかったから、道具屋でまとめ買いして来たスタミナ回復ドリンクを飲ませてみた。
「ファイト~!」
「え? なんですか??」
「一発って言うのがお約束なの~」
その結果、べティは元気ハツラツ。決めゼリフをアオイに強要していたけど、日本のCMなんて知るわけないじゃろ……
「そんで……効くにゃ?」
「効いてるからやってるのよ~。てか、シラタマ君が空気読んでよ~」
「わし、KYなんにゃ~」
「KYってなんなのよ~」
わしより早くに転生したべティは言葉の意味がわかっていなかったので説明したけど、「そんな言葉が流行るわけないわよ~」と信じてくれない。
わしも女子高生やギャルの知り合いが居なかったので、周りに使っている人が皆無だったから眉唾物だ。
べティが死んだあとの流行語を説明していたが、スタミナドリンクのおかげでもう動けるらしいので、さっさと出発。
魔獣を皆で蹴散らしていたら、鷲の翼と上半身にライオンの下半身が合体したような魔獣、グリフォンの巣に到着した。
「おお~。ドラゴンに負けず劣らずかっこいいにゃ~」
「危険な魔獣なのに……でも、いまなら負ける気がしません!」
「あんまり一人で突っ込むにゃよ~?」
わしがのん気なことを言っていたのに、アオイはツッコミ役をしてくれないし忠告も聞かない。グリフォンを倒したいらしく、笑いながら突っ込んで行った。
「乗り遅れた……」
「ノルンちゃんもだよ……」
「始まったばっかにゃ~。てか、アオイさんのフォローに回れにゃ~」
べティとノルンは、何か決めゼリフを言ってから戦闘に突入したかった模様。しかし、アオイの戦いが始まってしまったので、どうしようか迷っている。
「コリス~。一緒にいっぱい倒そうにゃ~」
「うん! おにく食べる!!」
「ドロップするかにゃ~? にゃ??」
コリスはドロップアイテムであるグリフォン肉を食べたいのかと思っていたが、勢い余ってグリフォンに噛み付き。すると、グリフォンはチリとなったので、コリスは食べた感がないから悲しそうな目をわしに向けて来た。
なのでわしは、数匹瞬く間に斬り殺して、ドロップしたグリフォン肉をコリスの目の前に持って行き、「晩メシにしよう」と言ったら食べられた。我慢できなかったみたいだ。
そんなことをしていたら、べティ&ノルンは開始のダンスが終わったらしく、戦闘の開始。レベル差があるので、ここぞとばかりに接近戦ばかりしている。
「魔法少女にゃんだから魔法は使わないにゃ?」
「シラタマ君が剣を使う魔法少女も居るって言ってたんでしょ~」
「うろ覚えとも言ったにゃ~」
べティ&ノルンもアオイと同じく制御不能。味気ないグリフォン肉を食べたコリスしかわしの言うことを聞いてくれないので、空から地上からと押し寄せるグリフォンから皆を守るわしとコリスであった。
グリフォンの群れがチリとなり、ドロップアイテムの山が作られたら、大詰め。大きな影がわし達を包み込んだ。
「あれがここのボスかにゃ?」
巨大なグリフォン『暴風獣』の登場だ。わしは空を見上げて皆に問うたが……
「「ゼーゼーゼー……も、もうダメ……」」
「ノルンちゃんもお腹ペコペコなんだよ~」
またしてもスタミナ切れ。こいつらは学習しないのか……
「じゃあ、わしがちゃっちゃと処理するにゃ~」
「待って! 今回はあたしにやらせて!!」
「ノルンちゃんもやりたいんだよ~」
「私も!!」
「だったらスタミナ配分考えろにゃ~」
それどころか、全員でしがみついて来たので戦うに戦えない。
「わしが時間を稼ぐから、準備が整ったら合図を出せにゃ~」
なので、各種回復アイテムを山盛り出して、ノルンへのエサやりはコリスに任せる。それからわしは、一人で空を駆けるのであった。
「キエエェェーーー!!」
わしが暴風獣の視界に入ると、暴風獣は口から大きな風の塊を吐いた。このまま避けたらべティ達に直撃しそうなので、わしは風魔法で対応。
強い突風で押し返して自爆に持ち込んだが、暴風獣は風の耐性があるのかダメージになっていない。しかし、強風に煽られたので空中での姿勢維持に手間取っていたから、わしはその隙に背中に乗ってやった。
「猫又流抜刀術……【飛び猫】にゃ~!」
そこに必殺技だと言っているだけの飛ぶ斬撃。単純に神剣【猫撫での剣】とわしの馬鹿力のせいで真空波が飛んでいるだけだが、その一撃で暴風獣の片翼は切断された。
「にゃ? まだ飛んでるにゃ……」
暴風獣はこれで墜落すると思えたが、痛みに驚いて暴れるのみ。片翼でも余裕で飛んでいるので、わしは次の攻撃をしようと思った。
「喰らえ! 【エクスプロージョン】!!」
そこに、べティの最強魔法が炸裂。光の玉が暴風獣に接触した瞬間、「ドッカーーーンッ!!」と大爆発。暴風獣は衝撃と爆風に晒されて墜落するのであった。
「にゃにするにゃ~~~!!」
もちろんわしを巻き込んで……
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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