猫王様の千年股旅

ma-no

文字の大きさ
69 / 192
猫歴15年~49年

猫歴43年にゃ~

しおりを挟む

 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。わしだって成長してる……じゃろ?

 第三世界で100年の命をまっとうし、第四世界では45年も生きているのだから、成長していないわけがない。

「「「「「モフモフ~~~!!」」」」」
「いや、大きさのことじゃなくてにゃ……」

 あまりにも猫ファミリーが成長してないとか言うので、猫型・大になったのは大失敗。皆はわしのモフモフに突っ込んで来やがった。
 わしとしては、体も精神も成長していると言いたかったんじゃけど……ぶっちゃけ言うと、精神は老人のままでそこから成長してないから、ごまかしたともいう。

 そんなこんなで猫ファミリーはわしの成長に触れなくなったので「シメシメ」と思いながら過ごし、ハンター業の合間に知人の葬式に出たり、たまに留学生相手に教鞭を振るっていたら月日は流れ、猫歴43年となった。

「ホウジツ……おしかったにゃ~。やっと金融会議で紙幣の件は決まったのににゃ」

 ある日、わしは猫の国大学病院に足を運び、ベッドにて管に繋がれたホウジツと喋っていた。

「か、為替相場は……」
「開始は各国で足並み揃えられるように3年後にゃから、まだまだにゃ。それに数年は同価値から始めるから、どうなるだろうにゃ~?」
「くっ……絶対、猫の国のお金が高くなるから、稼ぎ時だったのに……」
「お前の分もわしが買っておいてやるから、安心しろにゃ」

 残念なことに、ホウジツはもうすぐ寿命。世界金融会議の前から調子が悪かったのだが、その時はテンションが上がっていたから元気だったけど、しばらくしたら無理がたたって病院に担ぎ込まれた。
 それからは寝たきりが続き、猫の国銀行はホウジツの息子に引き継がれたけど、その後は気になるらしいから時々わしが話し合い手になっていたのだ。

 ちなみに世界金融会議は、この2年間に7回開いたけど、毎回殴り合いになりそうなケンカの末、国ごとに通貨を発行することとなった。どうしても各国は、財政をフルオープンにしたくなかったからだ。
 さっちゃんとしては3大国で管理したかったから、あの手この手で西の国と南の国を説得していたが、西の国に土壇場で裏切られて敗北となった。
 それを皮切りに、統一通貨に賛成していた小国も反対に回ったから、東の国も独自通貨にするしかなかったのだ。

 いちおうわしも、さっちゃん側に付いてたよ? でも、さっちゃんが紙幣を「自分たちが考えたデザインにする」とか言うから、わしはリータたちの板挟みになることに。
 もちろんネコ札なんてやってほしくないから、リータたちにはいい顔しながら裏ではさっちゃんの援護射撃をしていたけど、それがバレて後半は監禁されていたからこんな結果になったの。
 世界金融会議はわしの代わりにギョクロとナツが出席していたらしいけど、だからなんでそこまでリータたちに協力してるんじゃ? あ、2人は怖いのですか……畑違いなのに、なんかゴメンね。

 というわけで、猫の国も自国通貨となり、紙幣は全てわしの顔。硬貨はわしの肉球とか尻尾とかヒゲ等々。紙幣は金額以外わかりにくいから、何度もやり直ししてる最中だ……単調な顔で、なんかすんません。


「まぁ、まだ本決定とはなってないけど、喜ぶと思って大量に持って来てやったにゃ」
「お、おお……か、金持ち……」
「にゃはは。億万長者にゃ~~~!」

 金の亡者のホウジツなら元気になるかと、三億ネコほどプリントして持って来た物をわしが病室にバラ蒔いてやったら、みるみる顔色がよくなって来た。ベッドから這い出そうとしてるし……

「だから偽札だと言ってるにゃろ。無理して動くにゃ~」
「つ、つい、体が反応してしまって……あはは」
「てか、息子から聞いたんにゃけど、にゃんでそんにゃにお金がないにゃ? わしの計算にゃと、ホウジツは人生3回は余裕でやり直せるぐらい貯め込んでるはずにゃ。遺産がちょっとしかないって、息子が愚痴ってたにゃ~」

 ホウジツを元気付けたのは、この話をするため。最近はかなり弱っていたので、頭をハッキリさせるためにお土産を持って来たのだ。

「そのことですか……子供は子供で稼げばいいと思いまして……」
「それにしても無さすぎにゃろ。ホウジツが豪遊していたなんて聞いたこともないにゃ。クラブとかもいつも、相手の接待か経費でしか遊ばないの知ってるにゃよ?」
「うっ……それはご内密に……」
「まさか……悪い女に引っ掛かって貢ぎまくったにゃ?」
「いえ……もう最後ですし、全て喋ります」

 ホウジツがスッカラカンなのは、わしに隠れてまた副業をしていたから。それもファンド会社を立ち上げていやがったのだ。

「そうまでしてマネーゲームがしたかったんにゃ……」
「まぁそうなんですけど、これには深いワケが……」

 どうせ浅い理由だろうと聞いてみたら、けっこう根深い問題。猫の国銀行は融資事業もやっているから商人なんかにお金を貸していたのだが、担当者が騙されて大金を持ち逃げされたらしい。
 ホウジツはそんなこともあると割り切って励ましていたらしいけど、融資部は萎縮してしまって、融資先にはかなり厳しい審査をやるようになったそうだ。

「にゃるほど……財務状況は黒字にゃんだから、気にしなくてもよさそうなのににゃ~」
「ええ。でも、自分では稼げない額だったから怖くなったみたいで……」
「にゃからファンド会社を作ったと……」
「はい。審査基準に信用が高い者となりまして、若手がほとんど弾かれる事態となったのです。僕も若くしてお猫様に拾ってもらったので、その恩返しになればと私財を投げ打っていたってワケです」
「いい話のように聞こえるんだけどにゃ~……ハイリスクハイリターンを狙ってたんにゃろ?」
「あ……あはは。バレちゃいましたか。さすがはお猫様。おかげ様で、人生見事にトントンです。あははははは」

 長い付き合いなのだから、ホウジツの性格は完全に把握してるっちゅうの。なので詳しく聞いてみたら、若手にばかり融資したので、返って来そうなのは3割。残り7割は見事に吹っ飛んだらしい。

「てことは、そいつらが大成したら、ファンド会社は息を吹き返すんにゃ」
「はい。社債を握っていますし、利益の2パーセントが半永久的に入って来る契約です」
「そいつらが稼げば稼ぐほど儲かるんにゃ……でも、半永久的はやりすぎにゃ! それ、詐欺と変わらないからにゃ!!」

 まさかホウジツが詐欺師に鞍替えしていたから、わしもビックリし過ぎて怒鳴っちゃった。

「そう怒らないでくださいよ~。ちょっとした人生経験のために書いて、融資した分を取り戻した時に書き直そうと思っていたんですよ~」
「……人生経験ってなんにゃ??」
「あいつら、契約書を隅々まで読まずにサインしたんですよ。ちゃんと読んでいたら、普通はサインしませんよね? そのとき言ってくれたら笑って本当の契約書を出そうと思っていたのに……だから、焦った頃合いで言えば、契約書の大切さがわかってくれると思ってネタバラシしていないのです」

 確かにホウジツが悪いわけではなさそうだが、この胡散臭い顔がな~。

「それはわかったことにするけど、ネタバラシできるにゃ?」
「あはは。まだ誰も言って来ないんですよね~……ですから、お猫様、頼めませんか?」
「わしにお前の会社を引き継げと……」
「はい。ていうか、遺言書に譲渡すると書いてあります」
「おお~い。そんにゃの断れないにゃろ~」
「あはは。書き直ししませんからね~。あははははは」

 仕事が増えるからやりたくないけど、死に行く者の頼みをわしが断れるわけがない。それに、わしはホウジツに無理ばっかりさせて来たのだからな。

「最後にゃから、この際わしも謝っておくにゃ」
「謝る??」

 ホウジツはわしの謝罪がなんのことかわからずポカンとしている。

「ソウ市を任せたことにゃろ~? 首相に学長。銀行は……お前が行きたがったからいいかにゃ。わしのいいように使いまくったからにゃ。長い間、無茶振りばかりして悪かったにゃ」
「いえいえ。確かに無茶振りは多かったですけど、それ以上に楽しかったので、謝罪なんていりませんよ。一商人が扱うにはありえない額のお金を毎日動かしていたんですからね。僕はお猫様には、感謝しかありません。あの時、拾ってくれてありがとうございました」

 目に涙を溜めて感謝するホウジツに、わしもグッと来たけど我慢だ。

「そう言ってくれて助かるにゃ。今まで、こんにゃ猫に仕えてくれてありがとにゃ。わしはお前の名を、できるだけ覚えておくにゃ~」
「そこは死ぬまでじゃないんですか? あははははは」
「わしがにゃん年生きると思ってるんにゃ~。にゃはははは」

 わしたちに涙なんて似合わない。いつもは金儲けの話で悪い顔で笑っていたわしたちであったが、今日は猫の国の未来がどれだけお金持ちになっているかと、いい笑顔で笑いながら語り尽くすのであった……


 それからひと月後、ホウジツは安らかに旅立ち、盛大な葬儀が行われていた。

「頼れる人が、また1人、いなくなっちゃいましたね……」

 隣に立つセンジ首相がポツリと呟いたので、わしは前を見たままセンジの左手を握った。

「にゃにを言ってるんにゃ。後ろにいっぱい居るにゃろ。みんにゃ、センジとホウジツが育てた頼れる者にゃ。これからも増え続けて行くんにゃよ?」
「そう……ですね。同期が次々と亡くなって行くので、少し弱気になってしまいました」
「まぁにゃ~……普通はそうなるよにゃ。でも忘れるにゃ。わしが最後まで隣に居るにゃ。いや、リータたちも居るからにゃ。心配するにゃ」
「はい……猫陛下はこれまで通り、私を導いて……あれ? 途中から私が導いていたような……」

 老いも感じて弱気になっていたから励ましてあげたのに、センジも気付いちゃった。わしたち猫ファミリーって、国政にノータッチじゃもん。

「ほら? 金融会議はわしも頑張ったにゃろ~??」
「それも途中からお子様がやられていましたよね?」
「アレはメイバイたちに監禁されてたからにゃ~。わしだって出席したかったんにゃ~」
「その他にも、私とホウジツさんばかり働かせて……」

 その後は、葬儀が終わるまでセンジの愚痴が止まらない。その愚痴はホウジツ絡みの愚痴が多かったから、彼女なりの手向けだったのかもしれない……と、信じたい。

 ホウジツ享年63歳。初代ソウ市長、初代猫の国首相、ニ代目猫の国大学学長、初代猫の国銀行総裁。数々の功績を残して、猫の国の歴史に名を刻んだのであった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...