70 / 192
猫歴15年~49年
猫歴46年その1にゃ~
しおりを挟む我が輩は猫である。名前はシラタマだ。これでも腹心の葬式は悲しい。
センジ首相が愚痴ばっかり言うのでホウジツの葬儀はあまり悲しめなかったのだが、猫ファミリーもそれほどでもなかったから、まぁいっか。
わしはいつものだらけた生活に戻り、たまに仕事をしたりボランティアしたり、孫と遊んだりお昼寝していたら月日は流れ、猫歴46年となった。
「にゃ~~~。大学入学おめでとうにゃ~~~」
今年の目玉は目白押し。まずはなんといっても第三陣の子供が猫大に進学したことだ。ただし、進学したのは2人だけど、残りの2人もスーツやスーツっぽい衣装で入学式だけは出席している。だってわしが見たかったんじゃもん。
大学に入学したのは、つゆとお春の子供。狸尻尾を持つ黒猫娘シラツユと、狐尻尾を持つ黒猫男フユ。
シラツユは、つゆの意志を継ぎ物作りがしたいからと技術関係。フユはお春の意志を継ぎ、地政学という誰も学んだことのない学問を開拓する。でも、お春の仕事はメイドだったはずなんじゃけど……
ちなみに地政学は、わしがちょっと教えたんじゃぞ? ランドパワーとかシーパワーってヤツだけど、この世界に当て嵌まるかわからないけど……
2人ともいい子なので母親を気遣って、同じ速度で老けて行きたいから猫パーティは辞退したそうだ。どちらの母親も変身魔道具でタヌキやキツネのままだから、老け具合がよくわからんのじゃけど……
残りの2人の内の1人は、コリスの娘リリスだから、すでに猫パーティで戦力になってモリモリ食べているから割愛。
もう1人のイサベレの第二子、白髪猫耳娘キアラが新しく猫パーティに羽ばたいて来たのだ。
「いまからでも大学行かにゃ~い? わしが押し込んであげるにゃよ~?」
「もう! 強くなりたいって何度も言ってるでしょ!!」
でも、わしはあまり乗り気じゃない。せっかく高校まで出たのだから、進学してほしかったのだ。
ちなみにキアラの志望動機は、姉のシリエージョが東の国で騎士をしているから交代要員になろうと思って。50年でも100年でも、いつか交代してイサベレの跡を継ぎたいらしい。
「まぁ来ちゃったモノは仕方ないにゃ……キアラも、イサベレみたいに戦いたいにゃ?」
「う~ん……お姉様とキャラが被るのもアレだし、剣を使おうかな? 盾を持ってもいいかも??」
「重騎士ってヤツかにゃ?」
「それかな? 鎧とかも着て、姫を助けるの~」
「女騎士に憧れがあるんにゃ……」
「『クッ……殺せ』とかも言ってみたいな~」
「そんにゃ状況はわしが来させないにゃ~」
キアラの好みは、どうもマンガや小説に出て来るような女騎士。そんなことを説得材料に使うと反対されそうだから、イサベレの跡を継ぎたいと言ったんじゃないかと疑惑が浮上した。
「ま、わしの教えは甘いから頑張るんにゃよ~? ランニングから行くにゃ~」
「にゃ~!! ……甘いの??」
ちょっとキアラは心配だけど、猫パーティ研修はいつも通りゆる~く始まるのであった。
キアラのレベルが上がって来たら、まずは武器を決めてみよう。
「片手で扱うことににゃるし、ショートソードにしてみたにゃ。どうにゃ?」
「う~ん……軽く感じるし、もうちょっと長くてもカッコイイかも?」
「ロングソードにゃ~……一度、フル装備してから考えてみにゃい?」
「あ、それいいね。カワイイ鎧ってあるのかな~?」
「それはないんじゃないかにゃ~?」
キアラの目的がよくわからないので、ソウ市にある武器防具の店に親子デート。デートには向かない店じゃけど……
「なんか、ゴツゴツした鎧ばかりだね」
「そりゃ鎧は命を守る物だからにゃ~」
「こう、胸元が大きく開いたのとか、胸のサイズに合わせたブラジャーみたいな鎧とかないの?」
「それは……コスプレの衣装じゃにゃいですか?」
「それそれ。レイヤーになりたいの~」
「レイヤーさんは、写真を撮られるのが仕事だと思うんにゃけど……」
ここでキアラの趣味が発覚。どうやら第三世界で買って来た本の中に、コスプレ写真集があったから熟読していたんだとか……
「パパ作って~~~」
「パパは露出の多い鎧は作りにゃせん!」
「そんにゃ~~~」
もちろんそんな防御力皆無の破廉恥な鎧は、わしが許さないのであったとさ。
「そのハート型の盾、かわいいね~」
「でしょでしょ? 私がデザインしたの」
それからも訓練は続けていたけど、キアラが何かとうるさいので、まずは盾を作ってあげたらリータがベタ褒め。キアラが天狗になるからやめてほしい。
「このククリ刀ってのはいいよね?」
「使いやすいにゃらいいけど……」
「ツバは月にして~。鞘は丸みを帯びさせるとかわいいと思うんだよね~」
「リータ~! 盾の使い方教えてあげてにゃ~!!」
なんだかキアラと絡むと変な物ばかり作らされるので、わしもエスケープ。このままではビキニアーマーで戦うとか言い出しそうなので、わしは縁側に移動してキアラ愛読のグラビア雑誌を熟読してみる。
「キアラがゴメン」
そこにイサベレがやって来て、隣に腰掛けた。
「別にいいんだけどにゃ~……危険にゃ仕事をするって意識が低いのが心配にゃ~」
「確かに……ちょっとシメてくる」
「そこまでやらなくていいにゃ~。あ、そうにゃ。イサベレのフル装備見せてみたらどうかにゃ? 東の国ではあの姿、人気高かったにゃろ?」
「ん。その姿でシメる」
「シメなくていいんにゃ~~~」
わしの娘でもあるのだから、暴力はやめてほしい。なのでイサベレ本来の姿を見せたらキアラの装備も決まるかと思ったが、着替えてはくれたけど結局はヴァイオレンスしに行っちゃった。
わしはその光景を、指の間からあわあわしながら見ることしかできないのであったとさ。
「こ、怖かったよ~~~」
「よしよしにゃ。わしもにゃ~」
と、イサベレにシメられそうになったキアラは、実はしごかれる前にわしの元へ逃げて来たので、体罰等は受けていない。イサベレの殺気にチビリ掛けただけだ。
そんな殺気を放ったからキアラの訓練を見ていたリータが反応してしまい、2人で殺し合いの手合わせを始めたから、わしは震えながら見ていたのだ。
「正直言うとにゃ。いまの気持ちのままでは、訓練は中止せざるを得ないにゃ」
「なんでダメなの?」
「あの2人を見てみろにゃ。わしたちが行く森の中は、あんなのばっかりにゃ。あそこに毎回、突っ込んでいってるんにゃよ? キアラにそんにゃ覚悟あるにゃ??」
「うっ……」
イサベレたちにはちょっと失礼だけど、猛獣と仮定してキアラを脅したら怯んだ。わしでも怖いんだから当然だ。
「怖いけど……頑張る!」
しかし、キアラはその恐怖を撥ね退けてわしに覚悟の目を向けたので、わしも覚悟を決め……
「アガる装備なら怖い物なしよ! パパ、ビキニアーマー作って~~~」
「羞恥心ってのはにゃいの??」
でも、わしにはビキニアーマーを作る覚悟はないのであったとさ。
それから訓練の合間に、わしはキアラの装備を鉄魔法を使って何度も作ってあげたけど、アガらないんだとか。こうなってはわしもどこが悪いのかわからなくなって来て、ついにビキニアーマーを作ってしまった。
「うわ~! すっごくアガル~!! でも、色はピンクにして~」
「まだ改良が必要なんにゃ……」
とりあえず言われた通り、人体に無害な着色料で明るいピンクに仕上げてあげたら、キアラはアゲアゲ。マジで訓練にも熱が入ってる。
「ねえ? 本当にあの姿で狩りに連れて行くつもり??」
わしが腕を組んでキアラを眺めていたら、ベティが隣に並んだ。
「動きは格段によくなったんだけどにゃ~……」
「それはそうだけど、あの子、父親の前で恥ずかしくないの? あっ、あんたも娘のことエロイ目で見てるんじゃな~い??」
「わしのこの顔が、あの姿を許してると思うにゃ?」
「あ、うん。ゴメン。お気の毒様……」
ベティは横から見ていたから気付かなかったようだけど、わしの逆の目からはツーッと涙が流れていたから、それを見せたら哀れんでくれた。
「てか、ベティがキアラのこと言えないにゃよ?」
「どこがよ。普通じゃない」
「魔法少女のことにゃ。そういえば最近見ないよにゃ~? アレって強くなれるんじゃなかったにゃ~??」
「アレは若気の至りというか……奥の手に取っておいてるのよ!」
「嘘っぽいにゃ~」
反撃してみたら、ベティの顔は真っ赤。アマテラスから授かりし魔法少女変身魔道具は、ベティの身体能力や魔法を強化してくれるのに使っていないということは、恥ずかしくなったのだろう。
そもそも貰ったのは、ベティが4歳の頃だったし、いまでは若く見えるけど立派なおばさんの年齢に入っているから、使うに使えなくなっているのかもしれない。
「そうにゃ。ちょっと協力してくんにゃい?」
「い、いやよ。何やらすかわかんないけど、断るわ」
「たいしたことじゃないにゃ~。包丁作ってやるから、協力してくれにゃ~。にゃあにゃあ?」
「にゃあにゃあうるさ~~~い!!」
ベティは完全にわしのやりたいことに察しは付いていたけど、なんとか包丁2本で手を打ってくれたのであった。
数日後、わしはベティ&ノルンに加え、キアラとパーティを組んで東の国の王都を闊歩していた。
「何あの格好……」
「恥ずかしくないのかしら……」
「猫さんはかわいいのに」
「猫になるより、あの姿のほうが恥ずかしいわね」
「猫さんが普通に見えるわ」
わしたちは王都民から、格好の的。普段わしが歩くとキャーキャー騒ぐ民も、混乱しているように見える。
そりゃそうじゃ。わしの後ろには魔法少女ベティとその頭に乗る魔法少女ノルン。そして一番の問題児、ビキニアーマーのキアラが歩いているんだから、近付きたくないってモノだ。
「うっ……こんな姿で王都を歩くことになるとは……」
「パパのバカ……なんで猫市じゃないのよ~」
「キャハハハハ。2人とも似合ってるんだよ~。キャハハハハ」
ベティとキアラは恥ずかしそうにしているけど、ノルンは絶好調。羞恥心を煽ってくれると思って連れて来たのは大正解だ。
「いや~。猫市だと、キアラが次から歩き難くなると思ってにゃ~。あ、ハンターギルドに着いたにゃ。買い取りしてもらうから、外で待っててにゃ~」
「「ついて行くにゃ~~~」」
「キャハハハハ」
こんなに人々の目があっては、2人ともたまらなくなってハンターギルドに飛び込むしかない。しかし中に入っても、2人と同じような装備の人は皆無なので、変人扱い。コソコソと言われているよ。
「猫のぬいぐるみが変なの連れて来た……」
「誰がぬいぐるみにゃ~~~!!」
「キャハハハハ」
トバッチリでわしまで奇異の目で見られたので、ノルンが一人勝ちしたこの日であったとさ。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる