76 / 192
猫歴15年~49年
猫歴47年その4にゃ~
しおりを挟む我が輩は猫である。名前はシラタマだ。お見合いしに来たのに、なんでケンカになったんじゃろ?
オニタ好みの女性に出会ったのはのはよかったのだが、そのアリーチェにはマティルデのという妻帯者がいたけど、オニタは諦め切れず。
何度も土下座していたら、アリーチェはマティルデをけしかけて「勝ったら結婚してくれる」とか言っちゃったので、あら大変。オニタも真に受けちゃったので、自分より強いマティルデに何度もぶつかって転がされている。
「ホント、しつこいヤツ……降参しないと死ぬよ?」
「引け~~~ん!!」
オニタが1時間近くも粘るなか、周りで見ているハイエルフからクスクスと笑いが起こっている。ハイエルフの目には、オニタの姿が無様に見えるらしい。
「もういいよ。殺して」
「そうね。弱いヤツにアリーチェはやれないよ!」
そこに、アリーチェの無慈悲な命令。その命令にマティルデが応え、もう立っているのが不思議なくらいのオニタを殴り殺そうとした。
「なっ……」
そんなことをわしがさせるわけがない。素早く割って入り、マティルデの拳は優しく受け止めてオニタを守った。
「何をした!?」
普通これほどの攻撃なら、大きな衝突音や衝撃波が発生してもおかしくないので周りは手加減したと思っているが、殴った本人はわしの異常さに驚いている。
これは、わしの新魔法【吸収魔法・肉球】の効果。圧縮した吸収魔法がマティルデの拳を優しく受け止めて、全ての力を霧散させて吸収したからピタリと止まったのだ。形は見えないけど、肉球みたいになっているからの命名です。
そんなマティルデに親切に教えてあげる必要はないので、わしは無視して問い掛ける。
「確かにオニタの姿はみっともなく無様に見えただろうにゃ。でもにゃ、これが恋にゃ。愛の力にゃ。お前たちは、オニタのように勝てない敵に単身で向かうことはできるにゃ?」
「フフ……だからなに? 勝てなきゃ逃げたらいいだけじゃない。あなたも手加減された拳を止めただけで、粋がらないでくれない?」
わしの問いにアリーチェが嘲笑うが、マティルデは顔を青くした。それは正解だ。
「わしの孫の頑張りを笑うにゃ! 笑ったヤツ、全員かかってこいにゃ~~~!!」
【単鬼猫】発動……説明しよう。【単鬼猫】とはわしが短気とかではなく、大量の魔力を消費することでおでこからアホ毛が立つ現象。もちろんただのアホ毛ではなく、角のように見えるし、わしの強さを2乗にしてくれるのだ。
わしはただでさえ最強の猫なのに、強さを隠す隠蔽魔法を解いてそんなチート能力を使ったからには、ハイエルフ族はガクブル。全員、腰を抜かしてその場で動けなくなってしまった。
「誰もいないようだにゃ……だったらオニタに謝罪しろにゃ」
「「「「「は、はは~……申し訳ありませんでした~」」」」」
「いや、わしじゃなくてにゃ?」
「「「「「はは~」」」」」
ただし、わしが強すぎたので、ハイエルフ族はわしに土下座しっぱなしだったのであったとさ。
ちょっとやらかしてしまったので、わしの覇気を浴びて気絶してしまったオニタを治療したら、担いで長のニコーレの家に逃げ込む。
そこで緊張しているニコーレにはお茶やお菓子を出して、世間話をしている。
「シラタマ殿は、そんなにお強かったのじゃな……」
「にゃ? 知らなかったにゃ??」
「うむ。お連れの方が戦っている横で治療しかしていなかったから、戦えないと思っていた」
「そういえばここで戦ったことなかったにゃ~。ま、わしは仲間と違って平和主義者ってだけにゃ。さっきのは、孫の頑張りをバカにされたから怒ってしまったんにゃ。怖がらせて悪かったにゃ~」
わしが頭を下げると、ニコーレは慌てて謝罪の言葉を繰り返していたので、今回の件は痛み分けってことでやり取りを終えた。
「ところでにゃんだけど、ちょっとお願いしていいかにゃ?」
「なんなりと」
「そこの2人、猫の国に連れ帰っていいかにゃ?」
さっきオニタをボコったアリーチェとマティルデがチラチラと窓から見切れていたから、わしが指差したらニコーレが怒りながら呼び込んでくれた。
「どうぞどうぞ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「「クッ……殺せ……」」
「そんにゃことしないにゃ~」
ニコーレの言葉にアリーチェたちは獣に犯される女騎士みたいになっている。そんなにわしが怖いのか?
「もう怒ってないから安心してくれにゃ。妻帯者の2人の仲を裂こうとしたオニタが完全に悪いんだからにゃ」
「じゃあ、なんで私たちを攫おうとしてるの?」
「攫うと言われると語弊があるんにゃけど……わしは孫に甘くてにゃ~。チャンスをあげたいんにゃ。1年にゃ。1年だけでいいから、猫の国に来てオニタを見ていてくれにゃ」
「……見るだけ?」
「うんにゃ。あわよくば、オニタとくっついてくれるのを期待してるけどにゃ。無理にゃら帰ってくれて構わないにゃ。あ、そっちの子には悪いことをするから、どういう結果になろうとも補償はするにゃ。これでどうかにゃ?」
「それなら……気持ちは変わらないと思うし」
「私も変わらないから行ってもいい」
「ありがとにゃ~~~」
2人は嫌々だが了承してくれたので、わしは感謝の握手。構えていた2人の手を先の先で取ったから、かなり驚かれてしまった。化け物じゃないよ~?
ちなみにオニヒメそっくりのアリーチェならこれまでにいることを気付いてもおかしくないと思って質問してみたら、わしたちが来た日はたまたまいつも温泉でマティルデとイチャイチャしてたんだって。
とりあえず交渉は成立したのでいつ旅立つのかと聞いたらいますぐでもいいらしいので、荷物だけを取りに行かせたらあまり持ち物はなし。と思ったけど、これが全財産らしい。だからすぐに行けるみたいだ。
それならば何も問題ないのでわしはオニタを担いで、アリーチェとマティルデと共に三ツ鳥居を潜るのであった。
「「「「「オニヒメちゃん……」」」」」
キャットタワーの王族居住区にアリーチェたちを連れ込んだら、猫ファミリーは鳩が豆鉄砲でも喰らったような顔をしている。
「似てるけど、イスキア島にいた子にゃ。今日から一緒に住むことになったにゃ~。お春、空き部屋に案内してやってくれにゃ。あと……」
「は、はい」
お春には小声で「無駄なことを言うな。オニタのため」と耳打ちしておいたので、いいように案内してくれるだろう。その3人がエレベーターに向かうと、猫ファミリー全員を食堂に集めて話をする。
「なるほどです……オニタ君があの子と結婚できるようにアシストするのですね」
「そしてあの背の高い子にも、他のパートナーを見付けるんニャー」
「そうにゃ。ちょっと卑怯にゃけど、オニタのために協力してくれにゃ~」
「「「「「わかったにゃ~」」」」」
こうしてわしたち猫ファミリーは一丸となって、オニタが結婚できるようにあの手この手でアリーチェとマティルデの仲を引き裂くのであった……
「フッフッフッ……にゃかにゃかいい雰囲気になって来たんじゃにゃ~い?」
半年後には、オニタとアリーチェの仲は急接近。これはわしの策略が功を奏し、恋仲の一歩手前まで来たのでほくそ笑んでいるのだ。
「なに言ってんのよ。あんたが出した案なんて、成金手法じゃない」
「ホント。ほとんど私とベティお姉さんの案でしょ」
いや、ベティとキアラのおかげです。わしの策略は、プレゼント攻撃だけ。ハイエルフ族は孤立していたから、うまい物や綺麗な服や花をプレゼントしたらコロッと落ちると、わしはオニタにやらそうと言ったのだ。
しかし、ベティとキアラが「そんなので落ちるか!」と異を唱えて、わしの策略を魔改造。
プレゼントは毎日しても効果が薄くなるから、効果的な日に。うまい物は、5日に1回ぐらいの割合でキャットタワーの個室を使って、高級ホテルのような特別感を醸し出した。
一番厄介な配偶者のマティルデには、イサベレを加えた3人で沼に引きずり込んでいた。ドラマや怪しい本で男の良さを教え込み、最終的にはBLマンガに嵌まらせたらしい……
なんだったらキアラと一緒に男装して、コスプレの世界にも引き込んでいたから、底無し沼に落ちて行ったのだ。ただし、なんだか最近、キアラとマティルデの雰囲気が怪しいんじゃけど……
いまはオニタのことに集中してそのことは触れられないけど、少女マンガ大好きベティと、マニアックな趣味全開のキアラのおかげで、ここまで来たから感謝しかない。
いちおうわしもその他では頑張ったんじゃよ? オニタをしごいて、マティルデに勝てるだけの実力を身に付けさせたもん。
ただ、実力差が3倍近くあったから、普通にやっては何年かかるかわからない。なのでズル。
オニタは【吸収魔法・球】が使えるので、これを伸ばして防御力の底上げ。プラス、全魔力を使った【咆哮】での攻撃力アップ。それらを補助する【侍攻撃】の精度を上げた。
これでも5回に1回勝てるかどうかだが、最初の1回は確実に勝てると踏んで、その決闘日にアリーチェを呼んでオニタがギリギリ勝つ姿を見せてやったのだ。
アリーチェは、勝者のオニタか敗者のマティルデ、どちらに駆け寄ろうか迷っていたから、わしの策略の勝利とも言える。
「フッフッフッ……」
「だからね。その迷いはあたしたちが頑張ったからなの。なんでわからないの?」
「パパ、バカなの? 私がマティルデさんとイチャイチャしてるところを見せていたから、好意が分散しただけだよ」
「イチャイチャしてたにゃ!?」
またわしが勝ち誇っていたら、ベティにツッコまれたけど、それよりもキアラがその道に行かないか心配になるわしであった……
「じいちゃん……俺たち結婚する!」
「「「「「おめでとうにゃ~~~」」」」」
さらに月日が流れて12月になると、オニタはついにアリーチェとゴールイン。わしたちは、諸手を上げて祝福するのであった……
「私たち、付き合い出したんだ~。祝福してくれる?」
「「「「「にゃんですと!?」」」」」
しかしキアラがマティルデの毒牙にかかっていたのか、はたまた口説き落としたのか付き合っていると聞いて、素直に喜べないわしたちであったとさ。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる