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二章 逃亡生活
049 エルフの趣味
しおりを挟む鉱山の村に着いた2人であったが、エルフとドワーフの言葉が似てるとシモンが言ったがために、プックは怒り心頭。殴ったあとは口も聞いてくれなくなった。
その2人が向かっている場所は、牧場。案内係のエルフ女性に連れて来てもらって馬を預ける。
「ちなみに売るとなったら、どれぐらいで買い取ってくれるんだ?」
「いまなら高く買いますで。肉が不足してますからな」
「え? 食うの??」
「あーしのプリンちゃんは売らん! 顔、覚えてるからな!?」
「うん。すぐ必要になるから、俺も売る気はないからな? そんなに怒るな。な?」
ちょっとした市場調査をしたら、食用に転売されそうになったのでプックはまた激怒。シモンも引いていることにも気付いてないので、宥めるのは大変そうだ。
ひとまず手持ちのアメちゃんと散弾を渡してプックの機嫌を取ったら、案内係に泊まれる場所に連れて行ってもらう。
「あ、そうだ。ごはんって食べれるところあるのか? 酒場でも構わないんだが」
「今日は歓迎の食事を用意しております。かなり質素で申し訳ありまへんが……お酒もありますよ。もちろん御代はいりまへん」
「ちゃんとお金払うぞ?」
「お金の代わりにお話を聞かせてほしいんどす。五層がどんな所か、おふたりはどんな関係なのかとかね」
「俺たちの関係って……どう見える?」
「従者と雇い主? お兄さん、よう怒られててますからな」
「ブッ! 正解やで~。アハハハ」
プックの機嫌、復活。シモン的にはスポンサーをやっているから逆と言いたかったが、プックの機嫌が直ったみたいだから否定はしない。
そうしてテントを張れる所に連れて行ってもらったら、エルフが手伝ってくれるからやることがない。1人用のテントのことを根掘り葉掘り聞かれていたけど、プックが「従者はスケベ」とか噓ついていたからシモンもイライラして来た。
寝床も準備できたら、次はお風呂。温泉に連れて来てもらった。
本当はゆっくり入りたいシモンとプックであったが、エルフに囲まれて質問責めになったのでまったくゆっくりできない。逆に疲れて出て来た。
最後のおもてなしは、歓迎の宴。ここもシモンたちは広場の一番いい席に座らされたので、居心地が悪そうだ。
「なあなあ?」
「ん?」
エルフおじいちゃんが乾杯の挨拶をしていたら、プックはシモンの肩をつついた。
「質素どころじゃありまへん?」
「うん……肉がないな……やっぱりエルフって、草食だったんだ」
「いや、草食やったらプリンちゃんを食おうとせんやろ。エルフっぽく見栄張ってるんちゃうか?」
「ああ~。ドワーフが大酒飲みみたいな?」
「それは事実や。ドワーフ、ウソツカナイ」
「噓つけ。よく噓つくだろ」
食事はパンと野菜オンリー。このことから種族の話になっていたが、ドワーフが嘘つきというよりはプックが嘘つきだ。本人はてへぺろしてるから、これは怒るようなことではないみたいだ。
「んじゃ、食事のお礼に……なんの話がいいかな? 俺が昔所属していた蒼き群雄ってパーティのほうが、大冒険したから面白いと思う。それでいいか?」
食事があまりにも質素すぎたので、シモンはさっさと食べて報酬を支払う。その話は蒼き群雄が苦労しながら着実に階層を渡って行く話だったから、エルフたちはハラハラドキドキしながら、時には涙を流して聞いていたのであった……
「ホンマ、シモンはんは蒼き群雄の話になると、饒舌に語るな~」
テントに戻ったら、プックがニヤニヤしながらシモンを見てる。
「まぁ……2年間、思い出を噛み締めてたし……」
「重い。重すぎるわ……」
ちょっとからかってやろうと思っただけなのに、シモンは元カノを引き摺りまくっているような返しをしたからプックもそれ以上はやめた。
「それより、3日ほどここで休んでから違う場所に行こうと思うけど、それでいいか?」
「せやな。ベッドもないんじゃ長居はできへんな。そもそもエルフがウザイ」
「ドワーフだから?」
「数が多すぎてゆっくりできへんと言ってるんや。てか、どうしても仲違いさせたいみたいやな?」
「そんな言い方するからだろ~」
確かにプックの口が悪いからそう聞こえても仕方がないが、プックには伝わってないな。
「んで、金を渡すから、プックはできるだけ武器の材料を買うってのはどうだ? どこか落ち着ける場所に移動してから作業するんだ」
「うん。それでええで。でも、プーシー6号はまだお預けか~」
「4号と5号を作り直すとか言ってなかった?」
プックは新しい銃から作りたいみたい。シモンには「ちゃんとやる」とか言っていたけど、プックは守る気がないから、テントに引っ込んで図面を見ながら酒を飲むのであった。
翌朝、寝過ぎたとプックがテントを開けたら、シモンがエルフお姉さんに囲まれてチヤホヤされていた。
「人の男に何しとんや?」
「あらあら~。やっぱりそうどすか~」
「この人、ずっと否定するから、からかっておっただけやから心配せんといてな~」
「「「「「ほな、仲ような~」」」」」
プックが一言掛けたら、エルフお姉さんは蜘蛛の子を散らすように。するとシモンは、ゲッソリした顔になってた。
「お前な~。嘘でもそんなこと言うなよ~」
「ええやん。囲まれて困ってたんやろ?」
「困ってた理由はそれじゃないんだよ! 一晩で噂が尾ヒレ付きまくって、俺は人族の王子様、プックはドワーフのお姫様で駆け落ちして来たことになってたんだよ!!」
「なんでそないなことになってるんや!?」
エルフ、噂話大好き。正確に言うと、疎開してやることないから、噂を面白おかしく変換して楽しんでいるのだ。
「あの人たち、絶対に広めるぞ? この村全土に……それを俺は止めてたんだよ」
「あ……噂好きのおばちゃんやったんか……」
プックの嘘のせいで、噂はもっと面白おかしく広がるのであったとさ。
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