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一章 勇者様の秘密
番外編 見解の一致? sideヴァン
しおりを挟む諸事情により、本日から投稿時間を変更します。本日分は既に投稿済みの為、急遽書く予定になかった話を番外編として書き起こしてみました。
明日からは0時はそのまま、12時を18時に変更し、一日二話ずつの投稿になります。
「ちょっと!!これはやり過ぎじゃないかい!?」
さっきまで演習場の外でトーマに堰き止められていた女どもがバタバタと駆け寄ってきて、エルフが俺の胸ぐらに掴み掛かってくる。
「勇者様ぁっ!こんなっあんまりです!!」
「息は、してるわね。これは酷いわ……」
残りの女が勇者の容態を確認してギャーギャーと騒いでいる。
うるっせぇ。手加減したに決まってるだろ。本当ならもっとボコボコにしても気が済まねぇ。我慢して切り上げてやったんだからとっととその雑魚持って消えろ。
「はぁ。とりあえず七段階の通行許可はやる。ソイツ連れて宿屋で待ってろ。後でギルドから薬屋が行く」
掴まれていた手を振り払う。いつまでもユサユサと鬱陶しいんだよ。
「薬屋!?そんな!ここまでの状態では、教会でも治しきれません!」
「事前に説明しましたよね?もうお忘れですか?模擬戦で負った傷はギルドが責任を持って治療します。後程伺いますので、今はそのボロぞ……勇者様を連れてお引き取りください」
取り乱す僧侶を軽くいなし、トーマはサッサと女どもを演習場から追い払う。
相変わらず嫌味だけは一級品だな。あんなモンぞうきんにもなんねーよ。
「言ったね!?絶対元に戻してもらうよ!治らなかったらタダじゃおかないからね!」
勇者一行は最後までギャンギャンと騒ぎながら演習場から出ていった。
「で、何で勇者にポーション渡してなかったんだ?」
俺が演習場に着いた時、目立った傷はないものの、勇者は既にボロボロだった。
トーマは勇者から受け取ったタオルを魔法で燃やしている。洗って使う気もないらしい。
「あんなやつにアーシェさんのポーションはもったいないです。それに、アーシェさんと戦うなら、あれくらい軽くこなしてくれなきゃ」
「気持ちはわかるがよ、鍛えてやるならその都度最高の状態にしてやらねーとだな……」
あぁ。気持ちは充分にわかる。が、俺達はアイツを痛めつける為に模擬戦をやってる訳じゃねぇ。
「説教なんてオヤジくさいですよ。わかってますから。若気の至りだと思って見逃してください。俺はまだ若いんで。」
「誰がオヤジだ」
俺はまだオヤジじゃねぇ……はずだ。
「過剰な反応ですね。オヤジくさいと言っただけで、別にオヤジですねとは言ってないでしょ。大体、ヴァンさんも殴り足りなさそうにしてたじゃないですか」
「そりゃな。嫁にやるつもりのなかった娘が急に男を連れてきた時の父親の気持ちが嫌って程わかったわ」
「何だか俺と同じ気持ちのはずなのに、例えが絶妙にオヤジで同意したくなくなりますね。ワザとなのか自然と出たのか。後者じゃないといいですね」
「……」
コイツは弟子だと思って育ててきたが、なかなかに生意気に育ってしまったようだ。
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