死神夢録

天川 希

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死神 case 1

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「あなたは死神ですか」

奥様がその言葉を放った途端、旦那様が刀の柄に手をかけ、私を切りつけようとしてきました。

こういった職業柄、死を受け入れることができない方は暴力的な行動に出る方が少なからずいます。
私は切り付けられようとも、焼かれようとも死にはしないのですが、やはりそういった仕打ちを受けると気持ち的にも参ることが多々あります。

今回のケースも私の仕事内容と、これからご夫婦に行っていただくことを、ご納得いただけるように、ご説明させて頂きました。そうしていくうちにご夫婦も気持ちが落ち着いてきたのか、お二方の心配事を話してくださいました。


旦那様は元来、生まれながらの武人として寡黙な方ですが、奥様の方は俗世のことや天界に逝った時の心配事を、丁寧な口調でお話して頂きました、、、


そうですか、娘達は無事に保護されたのですね。安心しました、、、

私もずいぶん苦労したのですよ?最初の旦那の時なんて同盟を結ぶときに敵対勢力との和睦の為に輿入れだと、兄から突然言われたもので、あの時は「いよいよか」なんて思ったものです。

場所は越前の方のお家に嫁ぎました。時代が時代でしょうがないのだけれども、庶民の様に好いた男と一緒になりたいなんて少なからずあったんですよ?

でも時代が時代でしたからこれもしょうがない思い、先方へ嫁ぎました。
そしたら何てことでしょう!嫁ぎ先の旦那がまた良い男でねぇ。娘もあっという間に三人も授かったのですよ。

その時の旦那は私の兄を自分の兄かと思う位に慕っていて、会うたびに二人で酒盛りして夜空が白くなるまで、今後の世の中をどんな世にしたい等、ずーーっと語らいておりました。
この時ばかりは私の兄に嫉妬してしまう位でしたよ、本当に。

ここまでは本当に幸せでした。兄と旦那様、私たちと娘達で末永く生きていけると思っていましたが、神様は残酷ですね。まさかあんなことになるとは、、、

あ!これから神様とお会いするのに悪口はいけませんね。
その際は死神様、どうかお一つよろしくお願い申し上げます。

当時の旦那様が、兄の苛烈な戦や政治的判断に反感を持ち始めていたんです。
他所の国と戦に明け暮れることもあり、やり方が残酷な時も多々ありました。
その時から私の旦那は、この人についていって平和な世の中が築けるのか。とても疑問に思っていました。

その矢先に当時、旦那が仲良くしていた朝倉様を兄が攻めることを聞きつけ私の旦那も、そこに参戦することに決めたのです。でも兄の味方ではなく敵として、、、

戦が始まってからは娘たちもとても不安がっておりました。
いつも兄は怖くて厳しいお方でしたが私たちの娘もそれはもう可愛がってくれましたから、、、

その時は私の旦那様も娘たちを思ってか、一層世話を焼いてくれるようになりました。
ご自身もつらいことがあるでしょうに、、、

戦が終盤に差し掛かると、こちらの情勢が厳しくなっていました。
旦那様のお父様が自害されたことを皮切りにとうとう私たちの住むお城にまで火の手が上がり始めました。

私たちも旦那様とお城と運命を共にしようと本気で思っておりました。
娘たちも旦那様と一緒にいたい、と強く申しておりましたが、旦那様が強く反対されましてね。

「我が一族の血を絶やしてはならぬ、そなたは娘たちを守り成長を見守る義務がある」とね。

旦那様なりの愛情だったのでしょうか。お父様と離れたくない、と泣きじゃくる娘たちを引きはがすのに大変苦労をしました。旦那様のこと本当に大好きでしたから。

崩れ行く城を見ながら、私はここで死んだのだと強く思うようになりました。
娘達には申し訳ないのだけれど、あの人のことは本当にお慕いしていましたので、いつ死んでも良いとも思っておりました。今の人に出会うまでは、、、

この人は落ち込んだ私のことを献身的に支えてくれました。
兄の死後、清州にて会議が開かれ、この人がサルに負けた時は一層落ち込みましましてね。

次はこの人を支えて生きていこうと決めました。
サルに攻められこの人と二度目の落城となったとき、やっと楽になれると思いました。

気がかりなのは娘たちの成長を見守ってやることができないこと。
これだけです。この人も私たちのことを献身的にそれはもうよく支えてくださいました。

この人、私のことを未だに、様付けで呼ぶのですよ?
可笑しいでしょう?

聞いたら兄の妹の手前、そう簡単に呼び捨てに出来ぬと申すのです。
床入りの時は呼び捨てにして下さいますのにね。

おっと、これは余計なお話でございました。ごめんなさい。


ところで死神様、私たちはこれが寿命だったのですか?
もう少し生きる予定はあったのかしら?

あら、まあそんなに?
それだけの寿命があれば娘たちの晴れ姿や孫も見れたかもしれないですね。
ちょっと残念、、、

せめてこれから生きる予定だった寿命を娘たちに分けてくださいな。
勝手に逝った私たちのせめてへの罪滅ぼしとして、、、













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