Regret

天川 希

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-序-

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 彼は疲れていた。
彼の名前は「橘 優(たちばなゆう)」31歳。
結婚しており同い年の妻に1歳の息子がいる。マイホームもローン無で所有していて、一見何もかも手に入れた順風満帆に見える人生に見えるであろう。
 ただ優は見えない「障害」を抱えていた。発症したのは5年前、彼が26歳の時だ。優自身が一番に尊敬し目標としていた父が亡くなった時だ。
 時は遡る。優の父が亡くなった時、借金があることが判明した。金額にして1300万円。優の妹の大学の学費、祖父母から借りた葬式代と合わせて1700万円の借金を抱えることになったのだ。優はその時「一生懸命働けば返せる金額だ。大丈夫」と自分に言い聞かせて馬車馬の如く働いた。毎日日付が変わるまで残業をした。不動産屋の営業マンだった優は歩合で一気に返そうとしていた。その努力の甲斐もあり借金は約2年で払い終えた。優の父が投資目的で不動産を所有しており売却することができたのだ。金額は1300万円。
 ただ400万円は優の手持ちから支払わなければならなかった。この400万円は優が高校生の時から貯金をしていたものだった。「この400万円で払えば借金は無くなる、チャラだ」とその後の懸念も何も考えずに払った。
 その結果、彼は燃え尽き症候群に陥った。営業の醍醐味である契約も出来ず社内でも浮いた存在になった。毎日、会社で契約が出来ないことを詰められ彼の精神はなお疲弊していった。売買営業から賃貸営業に降格になった。3か月間やってみたもののノルマは未達。周囲は「気にすんな」と声を掛けた。優も前向きに頑張ろうと思っていた。
 キッカケは飲み会だった。飲み会のガヤガヤした雰囲気から一変し優への説教大会が始まった。その時、優は「みんなからイジられているんだ」と思った。優自身も仕事が出来ないことは自覚していた。「自分にアドバイスを送ってくれているんだ」と思っていた。優自身何も感じていなかった。
 次の日の朝、優はベッドから起き上がれなくなった。耳元で聞こえるはずのない飲み会のガヤが聞こえていた。辛うじて手を伸ばし携帯から上司へメールを送った。「今日は体調不良で休みます。」と送った。精神的に何か不調を感じた優はすぐに診察してくれる病院を探した。見つけた病院でこのように診断された「うつ病」と。
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