人権売買

jiro-sia

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人権売買

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西暦N年、地球M国。
なんと、この国では金で人権を買うのだ。
金がない者は参政権や平等権どころか生存権さえ与えられず、毎年たくさんの人が死んでいった。
勿論、国からは出られない。
でも、そんな国でも金があれば人権が買える。生きていける。
…はずだった。
なんと、3日前に人権購入用の資産や口座が一斉に暴走したAIによって凍結される事件が発生、国は大混乱。
このままでは、もう一年もM国はもたない。
そんな社会にある青年が生きていた。
生きていた、と言っても、もう餓死寸前だ。
しかし、少年には才能があった。
ハッキングの才能だ。昔はハッキングによる情報抜き取りのスパイだった。
なので、青年は元凶のAIをハッキングし、全資産を凍結解除、さらに人権を完全無料化し、こんなアホな制度を終わらせようとする計画を実行しようとしていた。
今はその最終段階、ハッキング用のプログラムを組んでいる。
………
import os
os._exit(0)
「…よし。これで終わったぞ」
あとは元凶のスーパーコンピュータにうまく入り込むだけだ。
しかし、そこからが難しかった。
M国政府はほぼAIだ。
よって、セキュリティも厳しい。
スーパーコンピュータはweb上にあるので、入り込むのはかなり困難だ。
そこで、青年は仲間を募集することにした。
ありとあらゆるSNSに登録し、情報を発信した。
利用規約違反で運営にBAN(アカウント凍結)されることもあったが、勿論受け入れてくれるSNSもあった。あるSNSでは、友人に超人気&超有名なアカウントの管理者がいるので、その友人に協力を頼んだ。またあるSNSではサムネイル(表紙)で詐欺をして閲覧数を稼ぐこともあった。更にあるWiki系サイトでは勝手にページを作って宣伝文句だけを載せることもあった。
2日後、青年の元には合計308名の協力者が集まった。
更に1日経って、作戦は実行段階第一段階へと突入。M国最大の民間作戦が始まった。
まず、政府側の投稿を消していく。これによって政府を混乱させ、一瞬でもハッキングが発覚するのを遅らせるためだ。
個人アカウントも、省庁などの機関のアカウントも、両方とも消していく。
十数時間後、政府の投稿をほぼ全て消し終わった。同時にアカウントも消したので、政府はさぞ混乱していることだろう。
第二段階に突入。次は、政府の資産をじわじわと凍結させる。
政府の不正利用疑惑や汚職疑惑のデマを流し、銀行や証券会社に通報し、政府の資産を凍結させる。
丸二週間ほどかかったがなんとかTYH銀行以外の資産は全凍結。TYH銀行には100万程度しか預けられてないから凍結しなくても大丈夫だろう。
次、第三段階。
第三段階は、外国資産の凍結だ。
これも国内資産と同じような方式でやった。
Y国、A国の資産しか凍結していないが全部凍結させようとすると相当な時間がかかってしまうので大国でありM国の資産も多数進出しているY国とA国だけで大丈夫だろう。
セフはますます混乱する。
勿論SNSアカウントの復帰も国内資産の凍結解除もまだだ。
作戦開始から一ヶ月ほどが経過、第四段階=最終段階へ突入した。
政府が混乱していて、スーパーコンピュータがあるwebサイトのセキュリティも今なら手薄だ。
………………
何時間も青年は手を動かし続ける。
………
………
import os
os._exit(0)
………終わった‼︎!
ラスト、あとはこのプログラムを実行するだけだ。
Enterキーを押せば実行されるのだが、青年はもう何年もキーボードの検査をしていなかった。
………どうか、キーボードが壊れていませんように。
そう願いながら、青年はEnterキーに手を伸ばしていく。
ドクン。ドクン。ドクン。
鼓動が妙に早い。
キーボードが壊れているか壊れていないかによってこの国の未来が決まるのだから。
カタッ。
Enterキーを押し、プログラムが…
実行された。スーパーコンピュータのプログラムが次々に解除されていく。
そしてとうとう、完全なハッキングが成功した。
「うっ‼︎」
バタッ。
青年が苦しそうな声を上げながら倒れ、そのまま他界してしまった。
のちに、その青年はM国の英雄として永く、永く国が滅びるまで語り継がれたのであった。
<終>
※M国、Y国、A国及びTYH銀行の名前は作者が適当に決めたものであり、組織や国家を特定、及び侮辱をする目的はありません。
※コード
import os
os._exit(0)
は「Python」のものを使用させていただきました。
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