死神の館の主様

死神 アリス

　身体の内側からあふれ出すように力が湧き出てくるのを感じる。
　それはとても心地よく、今なら何でもできそうな気がする。
「……その顔は理解したかしら。力を手にすることがどういうことか」
「うん。ありがとう。この力はすごいね」
　アリスは僕の周りを見定めるように歩いた。
　足音は無かった。
　すぐに、僕の正面で止まると頷いた。
「そうね。そろそろいただこうかしら」
　そういうと、突然、僕の胸元へと手を伸ばした。
　すり抜けるように身体を貫通し、心臓がある部分を鷲掴みされる。
「いいわね。すごく力を感じるわ」
　アリスは見たことがないほど顔を蕩けさせている。
　さっきまでの少女とは思えないほど、不気味に思える。
　彼女は本性を現し、何度も何度も確かめるように手のひらを動かし、確認している。
「この力は今まで一番ね。長ったらしい説明は面倒くさかったけど、前座と思えば十分だわ」
「………………」
　目が獰猛な動物のようにギラギラしている。
「痛がらないのはすごいわね。それとも、もう痛みを感じないとか？」
「………………」
　言葉にもう少女らしいかわいさはなくなっている。
「返事がないわね。まあ、子供だし、怯えているだけかも。さて、それじゃあ……いただきます」
　彼女は死神として、僕の魂を食べようとしている。