死神の館の主様

やられるわけにはいかない

（憑依……発動！）
「あっ……」
　あまり使いたくはないけど、千坂の体に憑依した。
　案の定、腰から下は動かなさい。言いようのない寒さに手先が震える。
「おい、中身が変わったぞ」
「はい～？」
「ターゲットの中身が変わった。どうやら、力を持つ者は１人じゃないみたいだ」
「あぁ～、確かに……学校で会った時とそことなく力が似ています」
「今回は様子見はなしだ」
　ゆっくりと警戒をしながら近づいてくる。
　この様子だと、奇襲でブラックパペットを使うのはリスクが在り過ぎる。
　だけど、もう……。
「終わりですね」
　その時だった。
　全く動かなかった足に、青色の炎が宿る。
　突然の出来事に、僕は目を丸くするも足が勝手に動き出す。
「力を使い始めたぞ！」
「わかっていますよ！　サンヴァイン」
　優奈のナイフが近づいてくる。
　僕と優奈の間に、水の玉が生まれる。
（ご主人様はやらせないよ！）
　千坂の……向こう側の千坂の声が聞こえた。
　巨大に膨れ上がった水の玉を優奈は切り裂く。
　切り裂かれた水の玉は意思を持つように、足元から優奈に絡みつくように締めつける。
「うっ！？」
「アームズ・ブレス！」
　すぐにもう１人の仲間が助けに入る。
（今の内に逃げるよ！）
　千坂の足は勝手に動き出し、逃げ出すことができた。