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電気の一切を消して、真っ暗な部屋の片隅にぼおっとパソコンの光が浮かび上がっている。
キーボードはカタカタと忙しなく音を立て、ディスプレイの上には次から次へと淀みなく文字が並べ立てられていく。
カタン!
一際強Enterキーが押されて、連ねられていた文章に〇がついた。
「よーし、これで50話は終わり!」
しょぼしょぼと眼精疲労を訴える目を擦りながら、健人はぐっと大きく背伸びした。天井向かって高く腕を伸ばした姿勢のままに腹で机の縁を押す。
キャスターが転がって、ベッド脇のサイドテーブルの横にぴったりと止まるのに、今日も完璧。と独り言を漏らす。サイドテーブルに置いていた緑茶を一口啜る。その隣に置いていたどら焼きも封を開けて頬張る。
若干年寄りくさいチョイスだが、執筆終わりのこれが健人にとっては何よりの楽しみだった。
緑茶とどら焼きを両手にまたちゃかちゃかと椅子を動かして机の前へと戻りノートパソコンを覗き込む。タッチパッドに二本指を滑らせて、健人はそこに書かれた内容を読み返した。
『剣客、鬼を倒す』
という小説がある。とある小説投稿サイトに連載されている、異世界ファンタジー物で、妖魔はびこる世界にて、両親を亡くし孤児院で育つとある少年――秋羽――にある日突然千年に一度発生するという「祓魔」の証が浮かび上がり、この世の妖魔を統べる最強にして最悪の魔王――黄泉――を倒す旅に出る。
そんな王道ファンタジー物である。
登場人物の名前からも分かる通り、昔の日本を舞台にした、冒険物でその明快な設定故かありがたいことにそこそこの人気を持って連載を続けられている。
「ありがたいことに」という言葉通り、この小説の作者は今しがた文字をスクロールしている健人なのであるが、今日はちょうど50話目が書き終わったところなのである。ちょうど100話辺りで書き終えようと思っているので、今回はその折り返し地点のようなもの。記念すべき50話なのである。
「誤字脱字なし……」
一番最後の行までスクロールを終え、書かれた文章に間違いがないことを確認する。
50話を投稿しようと色々と弄っている時だった、ピピッとデジタル時計の音がして、健人は後ろを振り向いた。
「やば、もう12時?」
時計の画面にはカクカクとした機械的なフォントで0:00と表示されている。ちょうど「投稿する」のボタンにカーソルを合わせていた健人はその表示を見て指を左に動かし、「下書きを保存する」のボタンをクリックした。
(もう遅いし、明日でいっか)
ノートパソコンを閉じてベッドに潜り込む。
思ったよりも疲れが溜まっていたようで、横になってすぐには、もう瞼が重たくなった。
誘われる眠りに抗うことなく落ちていく。
どうせ明日は大学も休みだし、思いっきり寝てしまおう。
そう思って眠りについた健人が、次に目を覚まして見たのは、全く見知らぬ光景だった。
キーボードはカタカタと忙しなく音を立て、ディスプレイの上には次から次へと淀みなく文字が並べ立てられていく。
カタン!
一際強Enterキーが押されて、連ねられていた文章に〇がついた。
「よーし、これで50話は終わり!」
しょぼしょぼと眼精疲労を訴える目を擦りながら、健人はぐっと大きく背伸びした。天井向かって高く腕を伸ばした姿勢のままに腹で机の縁を押す。
キャスターが転がって、ベッド脇のサイドテーブルの横にぴったりと止まるのに、今日も完璧。と独り言を漏らす。サイドテーブルに置いていた緑茶を一口啜る。その隣に置いていたどら焼きも封を開けて頬張る。
若干年寄りくさいチョイスだが、執筆終わりのこれが健人にとっては何よりの楽しみだった。
緑茶とどら焼きを両手にまたちゃかちゃかと椅子を動かして机の前へと戻りノートパソコンを覗き込む。タッチパッドに二本指を滑らせて、健人はそこに書かれた内容を読み返した。
『剣客、鬼を倒す』
という小説がある。とある小説投稿サイトに連載されている、異世界ファンタジー物で、妖魔はびこる世界にて、両親を亡くし孤児院で育つとある少年――秋羽――にある日突然千年に一度発生するという「祓魔」の証が浮かび上がり、この世の妖魔を統べる最強にして最悪の魔王――黄泉――を倒す旅に出る。
そんな王道ファンタジー物である。
登場人物の名前からも分かる通り、昔の日本を舞台にした、冒険物でその明快な設定故かありがたいことにそこそこの人気を持って連載を続けられている。
「ありがたいことに」という言葉通り、この小説の作者は今しがた文字をスクロールしている健人なのであるが、今日はちょうど50話目が書き終わったところなのである。ちょうど100話辺りで書き終えようと思っているので、今回はその折り返し地点のようなもの。記念すべき50話なのである。
「誤字脱字なし……」
一番最後の行までスクロールを終え、書かれた文章に間違いがないことを確認する。
50話を投稿しようと色々と弄っている時だった、ピピッとデジタル時計の音がして、健人は後ろを振り向いた。
「やば、もう12時?」
時計の画面にはカクカクとした機械的なフォントで0:00と表示されている。ちょうど「投稿する」のボタンにカーソルを合わせていた健人はその表示を見て指を左に動かし、「下書きを保存する」のボタンをクリックした。
(もう遅いし、明日でいっか)
ノートパソコンを閉じてベッドに潜り込む。
思ったよりも疲れが溜まっていたようで、横になってすぐには、もう瞼が重たくなった。
誘われる眠りに抗うことなく落ちていく。
どうせ明日は大学も休みだし、思いっきり寝てしまおう。
そう思って眠りについた健人が、次に目を覚まして見たのは、全く見知らぬ光景だった。
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