黄泉の寵愛〜自作小説の主人公に転生したら最恐魔王に愛されすぎて困ってます〜

火国あさり

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2話

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(どこだ、ここ)
 いの一番に飛び込んできたのは、目の前に天高くそびえる木目の天井。
 そう木目である。健人のアパートの天井は少しボコボコした素材の壁紙が貼られた真っ白な天井のはずである。
 次に感じたのは、背中に当たる硬い感触。健人のベッドはチェーンの家具屋でもそれなりに良いマットレスを使っているため硬さなど感じるはずもない。そして、この感触は、まだ実家にいた頃畳の部屋で薄い布団の上で寝ていた時のそれによく似ていた。
 極めつけには障子の隙間から見えた緑豊かな外である。
 三階建てアパートの三階に住まう健人の部屋にはもちろん窓こそあったものの、見えるのは当然狭いベランダか、その上の空だけで、植物の世話をするような趣味は持たない健人は、自宅の窓から緑を見た事など一度もない。
 そもそも健人の家にあるのは窓である。断じて障子などではない。
 全く見知らぬ光景、全くではないが見知らぬ感触、それらを総合して健人の脳みそが叩き出した答えはこれだった。
「夢だな、寝よう」
 思わず口にも出ていた。体感的な睡眠時間はまだまだ4時間ほど、おそらくまだ十分に寝れる時間である。そう思って布団を被り直した時、どこからか声がした。
「まだ寝るのぉ?」
 真上から聞こえてきた声に健人は驚いて目を開けた。
「あ、起きた」
 寝転がる健人のちょうど真上、逆さまに見下ろす顔と目が合う。少しくせっ毛の茶髪の少年が健人を覗き込んでいた。
 はて、夢に出てくるような知り合いに、こんな少年はいただろうか。思い出せる限り小学生の記憶まで遡ってみたが一向に見つからない。全く見知らぬ少年である。
「早く起きないとみんな朝ごはん食べちゃうよ?」
 膝に手を立てて頬づえをつきながら見下ろしてくる少年はなおも健人に起床を促してくる。小説を書きすぎた弊害か、全くよく出来た夢である。
「寝よう」
 少年の言葉を振り払うように再びきつく目を瞑る。少年は
「あっ」
 と驚いた声をあげると、次の瞬間には健人の被る布団をぱっと取り去ってしまった。
 秋の初めに差し掛かった夏の終わりの、少し涼しい風が指先をくすぐる。思わず閉じた目を見開くと、怒りのままに立ち上がる。
「何するんだよ、ハル!」
 瞬間、口から飛び出てきた言葉に健人は愕然とした。
 自分は今、名前を呼んだ。
 目の前の見知らぬ少年の、全く知らぬ名前を。
 思わず口元を押さえる。
「ああ、やっと起きた」
 布団を抱える少年は起き上がった健人を見て、それが当然であるかのように取った布団を抱えている。
「……ハル?」
 健人はもう一度名前を呼んだ。少年は何の疑問も持たない顔で返事をした。
「何?どうしたの?」
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