さよなら、メトロポリス

かおり

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始まり

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「逃げなくちゃ」
少年はそう呟き、家族が寝静まった深夜、支度を始めた。
少年はリュックに荷物を詰めていく。りんご、パン、ぼろぼろの服、そして、
「……」
金色に鈍く光る懐中時計を。少年の持ち物の中で、存在感を放つものだ。
彼の持ち物や着ている服は、全体的にくたびれている。
ではなぜ、彼がそんなものを持っているのか。
彼は大事そうにそれをリュックに入れる。
そして、リュックを閉め、静かに静かに玄関へと歩く。
父は今日も酒を飲んで暴れていた。その疲れからぐっすりと眠っているだろう。
母は。
彼は母親のことを考え、歯を食いしばる。
そのことを考えまいと、玄関からそっと外へ出る。
外は人一人いないが、街灯が街を照らしている。
彼は走り出した。
行く当てなどなかった。目指す場所などなかった。
だが走った。走らざるを得なかった。
やがて夜が彼を飲み込み、彼の足音は遠くへと去っていった。
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