最下位の最上者

竹中雅

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第二章

勉強

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関係が険悪なまま三週間が経ち、テストも近づいてくる。
あれから特に問題は起こっていないが、樫谷と顔も合わせることも少なくチーム内は陰陰滅滅としているせいで心地が悪い。
藤桜と刀の練習もすると言ったが、他の上のグループが占拠しており、安易に近づいたせいでこれ以上イザコザを起こしたくないため、赴くこともない。
「茜澤君、勉強得意?」
学校も終わり部屋に戻る準備をしていると藤桜が俯きがちに尋ねてきた。
「それなりに出来る」
「じゃあ、教えてほしい」
「構わないが。勉強は苦手か?」
「うーん...数学と英語が苦手かな?国語とか地歴関係は得意だよ?」
持っているノートで口端を隠しながら恥ずかしそうに目線を動かしている。
最初はほとんど会話もなかったが、少しずつ話す機会も増えてきていて嬉しさも多少ある。
「どこでやろうか?」
「じゃあ、私のへ...ううん、図書館でやろ?」
顔を真っ赤に染めると、早口に言い終えた。
「わかった。じゃあ今日の放課後からやるか」
「やった!すぐ持ってくるね」
普段の足取りと違い、駆けるようにして鞄を持ってくる。
「行こう」
図書館までは俺たちが居る北校舎とは逆の南校舎に位置する。そこまで長い距離ではないが4階まで上がるため、テストも近いが利用する人は疎らだ。
「ここ、ここにしよ」
斜陽が差し込み、陰陽交互に間隔を開けながら机上を照らしている。
陽が満ちている所へ並んで座つてみると、陽気が体に染み込むように暖かく昇華してしまいそうだ。
藤桜も同じなのか、ほえーと光合成しているように天を仰いでいる。
「何から勉強するんだ?」
「じゃあ...数学かなあ」
教科書とノートを取り出し、付箋の貼ってあるページの問題を指差す。
「これ」
因数分解の応用問題。ノートにはメモが記されていて努力していることは目に取れる。
「ああ、まずは降べきの順に整理して、そこからタスキ掛けだな」
「降べきの順...タスキ掛け...?」
「一つずつやってみよう」
xについて整理し、そのあとタスキ掛けのやり方を丁寧に教えていく。
些か心配ではあったが、かなり飲み込みが早い。
一時間ほど解いてみたが、一問解くたびに計算が早くなっていき、最後の練習問題は全問正解にまで至った。
「俺に教えてもらう必要もなかったんじゃないか?」
「ううん、そんなことない。私一人なら理解できないもん」
俺は一人で黙々とやる方が得意だが、自身でやるよりも誰かと行えば苦手な場所も気付きやすい。
「そうか。ならこれで数学は問題ないだろ」
赤点でマイナスポイントにもなる心配もなさそうだ。
「もう一つ聞いてもいい?」
「ん?」
「樫谷君たちとはこのままで大丈夫なのかなあ?」
「ああ、そのことか。いいさ。マイナスになったのは俺のせいだ」
俺ひとりの責任だとは毛頭思っていない。
しかし、事実として俺の責任として話が出来上がっているわけだ。肯定するしかない。
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