最下位の最上者

竹中雅

文字の大きさ
25 / 43
第三章

牽制

しおりを挟む
鶴の一声とでも表せるかの如く、その一声で、失速し俺の目の前で動きを止めた。
「何をやっているの?下の者に対して全力出すなんて.それでもAグループの自覚はあるのかしら?」
「透百合...今日は来ないんじゃないのかよ...」
「ええ。その気で居たけれど、気が変わったのよ。で、この有様はどういうこと?」
「見ればわかるだろ。こいつにやられたんだよ。だから俺が仇を討とうと」
「どうせ喧嘩でも売ったのでしょう?返り討ちに合っているじゃない...」
溜息を吐きながら、辺りを見渡している女子生徒は知っている。いや、毎日みている。
可憐な立ち姿に鞘を携えた姿は、輝光を放つかのよう。
横風がその透百合という生徒の黒髪を靡かせ、そこから覗かせる玲瓏とした横顔は、昼時に眺めるときより一層際立っていた。
「弱いものね」
「違う!こいつが何か不正でも働いてるんだよ!今回のテストと同じように!」
男が俺に指差すと透百合もこちらに振り向く。
「そう...あなたが...」
視線は俺の制服に射止め、冷徹な目の中に僅かに驚いた表情をとる。
「言っておくが、俺は不正はしていない」
「...そうね。憶測は良くないけれど、そのようには見えないわ」
「そんなこと言われても気休めにしかならないけどな」
「ふふっ。確かにそうね。あなた名前は?」
「茜澤拓真。名前なんて聞いても俺はすぐ居なくなるぞ?」
「そうだろうな!鍵を盗んでまでテストでいい成績取ろうとするやつなんて当たり前だ」
しゅんと縮こまるように静かただったのも僅か。憎み口をすぐに放ってくる。
「はあ...少し静かにしてもらえる?私は茜澤君と話しているの」
「はい...」
威勢は風船に針が刺さったように抜けていく。透百合には全く敵わないようだ。
「私は透百合礼華。一年4組のAグループです。覚えておくわ」
「はあ」
あと何日かで居なくなる奴に対して覚えたところで何があるわけでもない。一種の嫌味だろうか。
「どうしてこのような騒ぎになったのかしら?」
改めて俺の方へ問いかける。
「俺たちがここで練習していたら、そいつらが予約してると言って聞かない。予約欄には何も書かれていなかった」
「..そう...おかしいわね。昨日私が生徒会に行って許可は貰ったのだけれど。その予約版にも書いて置いた」
「えっ...本当だったのか...」
「だから言っただろ!さっさと帰れ!」
「だけど私たちもしっかり確認していなかったのは苛む点であるし...良いわ.あなたたちが使いなさい」
「おい!おかしいだろ!」
男の言うことには一切耳を傾けず、一人で戻っていく。
「また会いましょうね」
「くそ!覚えておくからな!」
透百合とは意味合い異なる覚えておく宣言を置き土産に残りの二人と踵を返していった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

処理中です...