最下位の最上者

竹中雅

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第三章

怒髪

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「それと、助かったよ。テストの時、入試や日頃の態度もあって先生たちはやたらと茜澤を気にしていた。だから数学のテストはカンニングし放題だったわ!お陰で満点。それだけは感謝してるわ~」
「だからこれだけ成績が良かったのか」
「羨ましいよな。お前は不正など一切してないのに、0点扱いされ、反対に俺はカンニングし放題でトップなんだから。そこの藤桜ちゃんはどんなカンニングをしたんだ?あはははは」
藤桜は黙ったまま桑原を見据えている。第一、問いかけているかもわからないが。
「言いたいことはそれだけか?」
「...」
鞘に手を掛ける。この距離なら簡単に斬り込める。
真剣でも構わない。
そんな俺の様子に桑原たちは顔を引き摺り始める。
「茜澤君、やめて...私がこんなだからいけないから...大丈夫だから」
引き抜こうとしすると同時に藤桜が俺の制服の裾を掴んだ。
「ひっ...お前ら逃げるぞ!ざまあみろ!」
逃げ足早く揃って走っていく。
俺は振り返ることもせず、足音が小さくなっていくことだけを聞いていた。
後ろからやけに鋭い視線がこちらに向いている気がしたが、怯えて逃げたくせに最後まで睨み付けるような度胸はあるようだ。せめてもの抗いと取っておこう。
「悪い」
「ううん。庇ってくれようとしてくれたんだもん」
「藤桜のこと言われるとな...」
藤桜は紛れもなく実力なのだ。そんな努力した人間を根拠なく否定するのは虫唾が湧く。
「大丈夫。もう帰ろ?」
顔を赤らめながら嘆息するように発する様子を横目で見ながら俺はゆっくり首肯した。
それぞれの寮に別れるまで無言で歩く。
「今日、ありがとう」
「ちゃんと教えられなくて悪かった」
「そんなことないよ。また今度も教えてもらうから」
「だが...」
もう教える時間も無いと言うのをやめた。そんなことは藤桜にも充分わかっている。口に出すのは無粋だ。
「ああ。今度こそな」
「うん」
声質は明るく、嘘もなく楽しみにしていることが伝わってくる。
しかし表情まで確認は取れなく、翻った髪と一緒に覗く横顔は寂寥を最も感じられた。
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