【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)

高瀬ユキカズ

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もりもりさんの結婚

第412話 不穏な空気

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 ダンジョンに潜る理由は様々だ。

 ダンジョンをクリアし、世界を救うと本気で考えている人がどのくらいいるだろうか? ダンジョンに潜る一番大きな理由はお金ではないだろうか。ダンジョンから得られる珍しいアイテムを換金すれば、お金持ちになることも夢ではない。

 実際に私たち3人の資産はとんでもない額になっている。エンチャントに成功した装備は総額で数十億円にもなるだろうし、レアなアイテムやポーション類も多数所持している。

 これだけあれば欲しいものは何でも手に入るのだが、店で買えるものには興味がなくなっていた。十分にお金があると、物には興味がなくなるのかもしれない。欲しい欲しいと思っていた物は、手が届かないからこそ欲しいと思ってしまうのであり、商品につけられた値札が私たちを惑わしていたのだろう。今の私たちからは、物やお金に対する興味がなくなっていた。

 お金が目的から外れると、次に出てくるのが名誉欲だ。
 ハンターが目指す先にワールドランキングがある。
 ワールドランカーになって、みんなから称賛されることになったら、さぞ気持ちいいことだろう。

 しかし、これも手に届かないところにあるからこそ魅力的に見えてしまうわけで、実際にワールドランキングの2位だったお兄ちゃんを見ていてわかったことがある。お金と同様、その地位についてしまうと関心がなくなるものだ。

 今の私たちはとんでもなく強くなった。ワールドランキングのさらに上にいる。こうなると、富も名誉も関心がなくなる。

 欲がないかと言ったら、そういうことでもない。より純化された、人間の心の奥底にある本質的なものが出てくるようだ。

 このダンジョンのゴミ拾いも純粋にゴミが無くなってほしいと思って始めたし、ダンジョンを深く進み、いつしか必ずクリアしようという想いを抱いている。

 覚醒した状態とは何かということを時々考える。

 お金や名誉なんかから離れ、本来の自分の奥底にある欲求に従って生きることなんじゃないかと思っている。

 大多数の人間はお金に囚われ、名誉に囚われ、生きている。
 このダンジョンにいるハンターたちも例外ではない。
 お金を求め、高いランキングを求め、命を賭けてしまっている。

 もりもりさんはハンター同士の争いが起こるであろうことを予測していた。もりもりさんは、ミランダさんに匹敵するであろう実力者でありながら、ランキングに名前を連ねていない謎の女性だ。

 もりもりさんは私たちより高い視点で物事が見えているのかもしれない。ハンターたちを高みから眺めているような視点を持っていると感じていた。

 私たちは地下140階をくまなく歩いていく。
 タブレットにはマッピングアプリが搭載されている。得られた情報は共有されるため、踏破した道はすべて地図になっている。地下140階はすべての道が判明済みだった。

 私たちがすでに歩いてきた箇所は明るく表示、まだ歩いていない箇所は暗く表示される。ほとんどの領域が明るくなっているので、ほぼすべての道を歩いたということだ。

 モンスターやハンターが半径150メートル以内にいる場合はドットで表示される。問題はハンターの方だ。歩いても、歩いても、他のパーティに出くわさない。

 呟いたのは春日井君だった。

「誰もいない?」

 視聴者とも相談して、他のパーティがいたら声をかけてみようということになっていた。しかし、そのパーティがどこにもいない。

「まあ、この階層にハンターが1人もいなくても不思議じゃないみたいだけど」

 私は自分で言っておきながら、何かひっかかりを感じていた。

 誰にも会わない。しかし、誰もいないようには思えないのだ。
 
 湊ちゃんが顎に手を置きながら思案していた。

「考えられることとしては、本当にハンターがいないこと。もう一つは、この階層にいるけれど、私たちを避けているということ……」

 私は頭上を飛ぶドローンに顔を向ける。ドローンに搭載されているカメラのレンズが目に入った。

「私たちはライブ配信している。ということは、相手には私たちの位置がわかっている。あえて、マッピングアプリの探知内に入らないように距離を取っていることも考えられるね」

「たぶん、そういうことだろうな。どうする、筑紫? 接触は諦めて下へ行くか?」

 春日井君の意見を受けて、私は湊ちゃんへと顔を向ける。

「湊はどう思う? 声をかけられたくない相手をわざわざ探すのもどうかと思うから、私は下へ行ったほうがいい気がするけれど」

 問いかけたのだが、湊ちゃんはその場で立ち止まり、考え込んでいるようだった。

「湊?」

 私が声を掛けると、はっとしたように湊ちゃんは顔を上げた。

「あ、ごめん。私たちを避けるとしたら、どんな理由があるのかなって考えてた」

「理由?」

 私が聞き返すと、湊ちゃんはこくりと頷いた。

「うん」
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