【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)

高瀬ユキカズ

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もりもりさんの結婚

第438話 制限時間の壁

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 タブさんとの会話を終え、私は湊ちゃんと春日井君の元へと戻った。
 2人は自分のデバイスで配信映像を見ている。映像を夢中になって見ていたようで、私が戻ったことには反応が遅れた。

 私に気がつくと、湊ちゃんは手招きをしながら自分が持っているダンジョンデバイスを見せてきた。

「あ、春菜。戻ってきたんだ。ねえ、ねえ、見て。もりもりさん、すごいんだよ。HPの半分以上を削っている」

 私は画面を覗き込む。
 デバイス解析により、フレイムドラゴンの残りHPが推定されていた。その予測値は48%だった。もりもりさんはほぼ無傷のまま、これだけのダメージを与えていた。

 だが、ブレス回復までの残り時間は12分しかなかった。このままでは確実に倒し切ることはできない。時間が過ぎてしまうとブレスを回復されてしまい、戦闘を中断しなければならない。そうなったらドラゴンはHPの回復もあるだろう。

 その場合は長期戦にもつれ込むことも考えられるし、最終的には勝敗がつかずに撤退しなければならない。

 視聴者たちも、同じようなことを分析しながら見ていたようだ。

■なかなか善戦しているけれど、時間がない
■時間制限があるのがきついよな
■ブレスを回復されてしまうと厄介。おそらく同じ手は通用しないだろうから、無駄打ちさせられない可能性もある。
■そうなったらお手上げだな
■倒せそうだったんだけどな。非常に惜しい。
■いやいや、倒せるんだよ。そこにいる全員で戦えば。もりもり1人で倒そうなんて無謀なことを考えるから倒せない。ドラゴンを倒すだけなら可能なんだ。
■ドラゴンを倒すところを見たかったんだけど。
■残念だけど、単独討伐にこだわるのなら難しい。倒せずに終わるだろう。
■こりゃ、もう、無理。無理だね。計算上、無理だとわかった。
■よくやったよ。頑張った。
■そうだね、死なずに命があっただけよかった。そう考えよう。
■半分以上のダメージを与えただけですごい。すごいよ、もりもりとやら。
■ミランダ・モリスでも無理だわ、これ……。時間制限がきつい……。
■よし、ドラゴン討伐はできないな。フレイムドラゴン・ロードを倒すのは失敗に終わるだろう。倒せたら100万スパチャしてやろうと思ってたのにな。できなくて残念だ。100万用意していたのにスパチャできねえや。
■お前、例の奴? スパチャするする詐欺野郎君。
■変なあだ名を付けるな。倒せたら本当にスパチャする。
■本当だな? 本当にスパチャするな?
■ああ、本当だよ。するって。するよ、倒せたらな。倒せたらだぞ。だって俺は気づいちゃったんだもん。フレイムドラゴン・ロードを倒すのは不可能なんだよ。だってさ……。なぜならさ……。ふふふ……。ヒヒ……。ひひっ! なんでみんな気づかんの? ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ
■お前キモい。言いたいことがあるならはっきり言え。
■ヒント。モンスター名。デバイス解析の結果をよく見ろ。(ΦωΦ)フフフ…

 視聴者たちのコメントを見ながら、春日井君も同じような意見を言った。

「ブレスが回復したら、また6回を無駄打ちさせないといけない。簡単にはさせてくれないだろうから、かなりの時間がかかると思う。下手したら、せっかく削ったHPを全回復されてしまう」

 春日井君の意見に、湊ちゃんが頷く。

「うん。そうなったら、いつまで経っても倒せないってことだよね? 本当に惜しかったと思うけれど、時間的に無理だ。悔しいね」

 一方で私はタブレットを鎧に装着し、移動する準備を始めていた。アストラル装備のエンチャントを発動させ、私の全身は白い光に包まれた。洞窟内が薄く発光する。

「ねえ、湊、春日井君。私たちで行けば、倒せるよ。もりもりさんに加勢すればいい」

 湊ちゃんは口をぽかんとあけ、こちらを見たあとで私の左手首を握ってきた。私は完全に戦闘準備に入っていた。

「待って、待って。春菜。もりもりさんにとってはドラゴン討伐が目的なのではなく、あくまでも単独で倒したいってことなんだよ。私たちが行ったら、意味がないよね?」

「意味はあるよ。お兄ちゃんとの結婚を諦めさせられる」

 ドラゴンがいる空間に入ったら戦闘を始める。すぐに攻撃ができるよう、背中に背負っていた大剣を引き抜いて手に握った。
 湊ちゃんは私の左手首を握ったままだ。

「どうしてそうなるのよ。春菜はもりもりさんとお兄さんが結婚してほしくないの?」

「結婚してほしいよ。フレイムドラゴン・ロードを倒せるのなら、ね」

「倒せそうにないから結婚を認めないと? だから、結婚を諦めさせるの?」

 湊ちゃんは手首を握る手に力を込めていた。私は軽く頷く。

「うん。そういうこと。そう思っていい」

 私が答えると、湊ちゃんの手から力が抜けていった。

「だからって、私たちが行くって……。私たちが倒すって……」

 春日井君も戦闘の準備をすることはない。ダンジョンデバイスを持ったまま、呆れた様子でいた。

「そうだよ、筑紫。俺たちが参入したら視聴者だって納得しないだろう。いきなり空気を読まずに乱入したと思われるだけだ……」

 春日井君の言葉を最後まで聞かず、私は握っていた湊ちゃんの手を離すように促した。湊ちゃんの手は私の手首から静かにほどけた。

「私は行くよ。2人が手伝ってくれないなら、私1人でも行く」

 私が歩き出し、1歩を踏み出すと、湊ちゃんは胸の前で手を握りながら心配そうにこちらを見てきた。

「ねえ、春菜。向こうでタブさんと何を話していたの? 戻ってきてからちょっと変だよ……」

 私は立ち止まり、湊ちゃんへと顔を向ける。

「タブさんと何を話していたか? それはね、2段階ボスの話。今のこのドラゴンは私が戦ったフレイムドラゴン・ロードと比べて弱いと思わない? どのみち、今のドラゴンを倒したって、もりもりさんはお兄ちゃんと結婚できないんだよ。そういうこと」

 口角を上げ、私は笑みを作る。

「わけわからないよ、春菜」

「私は行くね。2人も気が向いたら来て。フレイムドラゴンを倒すのを手伝ってくれると助かる」

 湊ちゃんと春日井君を残し、私は走り出した。残り時間は10分ちょっとしかない。この時間でフレイムドラゴンを倒さなければならなかった。

「おい、筑紫。説明してくれって!」

 後ろから春日井君の声が聞こえた。私のことを追って走って来ていた。洞窟内には私以外に2人分の足音が反響していた。どうやら、湊ちゃんもいっしょについてきているようだった。
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