【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)

高瀬ユキカズ

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要塞を作ろう

第459話 子犬を抱いていたミリア

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 要塞を召喚して閉じ込めるというのはいいアイデアだった。
 捕らえる対象は、熊ではなくミランダさんを考えていた。

 私は湊ちゃんに話しかける。

「今度ミランダさんと直接会うことになっているんだよね。まあ、戦う理由がなくなったけれど、初見で逃げられるか試してみたくなるね」

 すると、湊ちゃんは呆れたように言った。

「春菜は熊じゃなくてハンター相手にこれをやろうとしているの?」

「いやいや、本当にやったりしないよ。ミランダさんとは会ったこともないのに、いきなり失礼なことはできないよ」

 私は慌てて否定をする。

「ミランダさんの前に、もりもりさんで実験してみる? ダンジョン部屋の時みたいに」

 私に対して呆れた反応をしたが、意外にも湊ちゃんは乗り気だった。

「そうだね。もりもりさんで試すのはいいかも……。もりもりさんに有効ならきっとミランダさんにも通じるね。もりもりさんを閉じ込めて驚かせてあげようかな、ふふふ……」

 もりもりさんを実験台にして、トラップとして有効かどうかをテストしておくのも悪くない。

 湊ちゃんはすがめた目で私を見てくる。

「春菜はやっぱりお兄ちゃんを取られたことに嫉妬しているのかな? もりもりさんに一矢報いてやろうとか思っている?」

 私は口をとがらせて湊ちゃんに反論する。

「そんなんじゃないよ。でも、フレイムドラゴン・ロードを倒されたことは悔しいと思っている。実力で倒されちゃったからね」

「そのもりもりさんより、ミランダさんはもっと強いかもしれないんでしょ? ワールドランク1位なんだから」

「どうなんだろうね? 私は同じくらいの実力かもって思っているけれど、情報がまったくないんだよ。ミランダさんに関してはあまりにも謎すぎる。もりもりさん以上の謎の存在なんだ」

「そんな人とよく連絡が取れたね」

「ミリアのおかげだよ。ミリアがミランダさんの連絡先を知っていたんだ」

 そのミリアは今は要塞の中だ。中からミリアの声が聞こえてくる。「お姉様~、お姉様~、出口はどこなのですか~? ミリアは出られないのです~」と呑気な声で話しかけてくる。

 私は手をメガホンにして口に当てた。大きな声でミリアに伝える。

「ミリア~。出口はないんだよ~。私が開かないとその要塞からは出られないの~」

「なるほど、なのです~。ミリアはお姉様に捕まっちゃったのですね~」

 相変わらず返答は呑気だ。ミリアに慌てる様子はない。

「捕まえる実験をさせてもらったんだよ。すぐにそこから出してあげるからね。ちょっと待ってね」

 タブレットを操作して要塞の壁を開いていく。壁は時間をかけて開いていた。ミリアの姿が見えてくる。

 私は壁を開くのを眺めながら湊ちゃんに言った。

「開閉にどうしても時間がかかるね。召喚する時間と壁の開閉時間。この時間を短縮できないと、罠として使うのは難しいね」

「召喚時間は短縮できないのかな?」

 その質問には、私の代わりにタブさんが答えてくれた。

『召喚を早めるのは無理だぞ、南波よ』

「なら、せめて壁の開閉の時間だよね。大きくて重いから難しいかもしれないけれど」

 湊ちゃんが飛鳥川さんを見ると、あまりいい顔をしていなかった。どうやら無理なようだ。

「ええとですね。この要塞は罠として使うことを想定しておりません。強度を優先にしますので、開閉時間の短縮は難しいです」

「ですよね」

 湊ちゃんは私にこう言った。

「春菜、要塞とトラップを兼用するのは効率的じゃないよ。トラップはトラップで、別に開発してもらおう。飛鳥川さんに」

 それを聞いた飛鳥川さんの顔は曇っていた。

「また無茶を言いますね……。南波さんも」

「もちろん今は要塞の開発を優先してください。トラップは後回しです。2倍要塞、4倍要塞を作りましょう。できますよね?」

「まあ、工場が完成して稼働しましたら……。この要塞はあくまでも試作機です。正式なものは工場完成後に――」

 飛鳥川さんが話している途中で、湊ちゃんがミリアを指さした。

「ミリアちゃん……。何か持っている?」

 ミリアがこちらへ歩いてくる。
 大事そうに抱えるのは毛むくじゃらの動物だ。黒い毛がふさふさとしていて、ミリアの腕の中で丸くなっていた。どうやら眠っているようでまったく動かない。
 
「子犬なのです。ミリアが拾ったのです。飼ってよいですか? お姉様? ミリアはこの子を飼いたいのです」

 どうやら私たちが要塞の実験をしているあいだにミリアが見つけたようだ。私たちは、子犬を抱いているミリアに気づかず、そのまま閉じ込めてしまった。

 けれど、本当に子犬だろうか?

「真っ黒だね。あまり見たことのない犬種だね」

 湊ちゃんは子犬を見ながら首を傾げている。

「子犬にしては大ぶりだよね」

「目がくりくりしていてまん丸で、鼻がぷりぷりしていて、かわいいのです」

 ミリアは子犬に自分の顔をすり寄せていた。
 私と湊ちゃんは子犬の体を撫でてみた。

「毛が固いね。ごわごわしている」
「ほんとだ。野生の犬だからかな?」

 飛鳥川さんも近づいて観察している。

「本当に犬ですかね……。これは……。うーん……」

 子犬からは獣臭がする。山の中で野生の犬として生まれたのだろう。だとしたら親犬が近くにいるかもしれなかった。
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