【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)

高瀬ユキカズ

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要塞を作ろう

第471話 ブラッドベアの海に沈んで

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 ブラッドベアが次々と襲いかかってくる。

 私はブベを守ろうと、腕の中に抱きながら丸くなって地面に伏せていた。鎧の上からガンッガンッとブラッドベアが攻撃してくる。とんでもなく強い力だ。

 ミスリルの大剣をどこかに落としてしまった。剣がなかったとしても、1体程度ならなんとかなる。しかし、この数は無理だ。

 ミリアは泣き叫ぶような声を上げながら、私に取り付こうとするブラッドベアをガントレットで叩き飛ばしている。

「うわぁぁぁぁ……、ぁぁぁ……」

 重厚な腕を振り回し、ブラッドベアを叩く。
 ミリアはミサイルを発射しようとしなかった。

 ミサイルは禁止……

 私が言った言葉をミリアは忠実に守っているのだ。

「うわぁぁ……、ぁぁ……、お姉様ぁ……、ブベぇ……」

 腕の中ではブベがブルブルと震えていた。
 私に覆いかぶされている中で、ブベも状況がわかっているようだ。こんな小さな体で今まさに恐怖を体験している。

「ミリア! ミリアだけでも逃げて! フロート・ゲイルブーツを最大出力で使えば、ブラッドベアの頭を超えられるから!」

「嫌なのです! お姉様とブベを置いて逃げるわけにはいかないのです!」

「私の兜の中にブベを入れる。それをメタル魔法の磁力でミリアにくっつける。ブベを連れていっしょに逃げて!!」

「それではお姉様が……お姉様が死んでしまうのです!!!!」

 兜がなくなれば致命傷を受ける可能性がある。ダンジョン・シミュレーターを使ったとしても、回避不可能な攻撃はよけられない。不可能なことを覆せるわけではない。

 しかし、このままではミリアですら危ない。

 仮にミサイルの使用を許可したとしても、残り弾数は6発。とても大量のブラッドベアを倒すことはできない。逃げるための突破口を開くことすら難しいだろう。

「お姉様……。お姉様ごと磁力でミリアにくっつけば……」

「重くて無理なんだよ。少し浮上したらすぐに落下する」

 こういう余計な失敗をしなくて済むのがダンジョン・シミュレーターだ。その程度の判断しか今はできない。

 ブラッドベアの爪が間断かんだんなく襲ってくる。そのいくつかはミリアが弾いてくれるが、私の鎧はすでに傷だらけになっている。まだ鎧が壊れるほどではない。もう少し持ちこたえられるとは思うが、むしろ心配なのはミリアだ。

 ミリアはガントレットとブーツの装備しかない。体は無防備なワンピース姿で、そのワンピースも爪で引き裂かれてぼろぼろになっている。それだけじゃない。血が滲んでいるところを見ると、ミリア自身にもダメージが及んでいる。

「ミリア一人だけでもいい……。逃げて……」

 私ならまだ堪えられるかもしれない。1分か2分なら持ちこたえられる。

「嫌なのです……。ミリアは死ぬ時はお姉様といっしょなのです……」

「ブベも……、でしょ?」

 ブラッドベアの猛攻を受けながら、なんとか顔だけあげると、ミリアは泣いていた。涙を流しながら、懸命にガントレットを振り回してブラッドベアと戦っていた。

「ミリアが……ミリアがブベを拾ったので、こんなことになったのです……。ミリアがブベを拾わなければ……。拾わなければ……。飼いたいなんて言わなければ……」

「しょうがないでしょ。こんなかわいいブベなんだもん。誰だって飼いたくなるよ」

 ブベを抱きながら、胸元でタブレットを操作する。
 召喚の空き枠は1つ。

 飛鳥川さんのところへ飛ばしたドローンはまだ飛行中で、解除しないほうがいい。

 召喚中のもう1機のドローンと要塞(仮)は解除してしまっていいだろう。

 つまり、ここに3体のモンスターもしくは兵器を召喚できる。選択を誤ったら私たちは終わりだ。

 ところが、私は迂闊にもダンジョン・シミュレーターに頼らずに動いてしまった。3枠あるという余裕が私に判断を誤らせた。

「フレイムドラゴン、召喚!」

 ――召喚できる空間が確保できません。召喚が中止されました。

 無情に響く合成音声。
 ドラゴンを召喚するにはこの場所は狭すぎた。

「な!?」

 ――召喚準備時間12:00 次の召喚まで12時間が必要です。

 せっかくの1枠が潰れてしまう。
 私は急いでドローンを解除しようとする。

 ――ドローンが破壊されました。次の召喚まで18時間が必要です。

 召喚したモンスターが倒されてしまった場合、その枠は回復するまで使えない。それはドローンでも同様だ。

「なら、飛鳥川さんのところにある要塞を……」

 ――要塞(仮)が破壊されました。次の召喚まで25時間が必要です。

「な、なんで!? ドローンはまだわかる。でも、要塞がなんで!?」

 ドローンは簡単に壊れてしまう。ダンジョン管理協会が飛ばしたドローンと衝突したのかもしれないし、低空を飛んで木にぶつかったのかもしれない。

 だが、要塞は違う。

 そんなに簡単に破壊できるようなものではない。

 誰かが大きな声を上げた。洞窟中に響く声だった。

「俺が破壊を命じたんだよ! クソ生意気な筑紫の妹。お前は筑紫冬夜の妹だってな!」

 声の主は御堂雅也みどうまさや。溢れ出てくるブラッドベアと戦っていたはずのハンターだった。

 ――ドローンが破壊されました。次の召喚まで18時間が必要です。

「飛鳥川さんに飛ばしたドローンまで……」

 さらに大きな声で御堂は私に告げる。

「苦戦しているようだなあ! どうだ? 助けてほしいか? ああん?」

「湊は!? 湊はどうしたの!?」

「ああ、あの女か」

 私はごくりとつばを飲み込む。湊ちゃんがこんな奴に負けるはずがない。

「拘束させてもらった。応援のハンターが来たんでな」

 そんなはずは……。ここは携帯の電波すら届かず、連絡することなんて……。

「携帯の電波が届かないとか思っているだろう? 自衛隊だって衛星電話を持っているんだ。俺たちが持っていないはずないだろう」

 湊ちゃんであっても、実力者のハンターを多数相手にすることなんてできない。

「50人のハンター相手に、かなり手こずらせてくれたがな。あの女はいったいなんなんだ? まあいい。それより、筑紫の妹。謝れば助けてやるぞ」

「あ……、謝れ……ば…………?」

 ブラッドベアの猛攻は止まらない。
 ミリアが血だらけになりながら、私を守ってくれている。腕の中ではブベがぶるぶると震えていた。
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