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プリミティブ・デバイスをめぐる攻防
第542話 ゲート内にいたハンターを要塞に収容する
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現在の難易度はD5だ。ここからD6へと移行していく。
モンスターの強さは一気に跳ね上がり、ダンジョンの地下120階付近に出現するレベルの個体が現れているようだ。単体なら問題にならないが、とにかく数が異常に多い。
難易度がD5.0、5.1、5.2と上がるにつれて、ゲートが重ね合わせのように生成されていると推測された。この数の多さは、その影響だろう。
とんでもない状況だ。
つまり、無数に生まれるゲートを同時進行で攻略していることになる。
本来なら、とっくにクリアできていてもおかしくない。
湊ちゃんは一人で戦い、私と春日井君もモンスターの対処に追われていた。
ようやく集団で行動していたハンターたちを発見し、召喚した要塞へ避難させる。そこで一息つき、湊ちゃんに連絡を入れた。
「こっちはハンター全員の収容が終わった。モンスターは私と春日井君、それと高レベルのハンター3人で対応中。そっちはどう? ここまで来ることはできそう?」
私の声はテキストに変換され、配信のコメント欄を通じて届いているはずだった。
だが、返事はない。
デンチュウさんが撮影している湊ちゃんの戦闘映像には、無数の矢の軌跡が映るばかりで、肝心の様子はわからなかった。
しばらくして、雅の声が返ってくる。
「御主人様は戦闘中で余裕がありません。雅がデンチュウをそちらへ連れて行きたいのですが、周辺にハイオークがたくさんいて動くことができません」
「こちらから迎えに行こうか?」
「そうしていただけると助かります」
「じゃあ、私か春日井君が迎えに――」
「待て、筑紫」
春日井君が手を上げて制止した。
「どうしたの?」
「こっちは要塞を守りながらの戦闘だ。筑紫が離脱すると、おそらく持たない」
その通りだった。こちらにも余裕はない。
「でも、誰かがデンチュウさんを迎えに行かないと……」
「幸い、向こうはゲート入口に近い。海外のワールドランカーたちが救援に入るらしい。彼らに任せるのはどうかな?」
その情報は、すでにネットニュースでも流れていた。
私は苦笑しながら首をかしげる。
「海外から? ずいぶん用意周到なんだね……」
ランク8のハンターが東京から新幹線で向かっているはずだ。それより先に海外勢が到着するというのは、不自然だった。
「怪しいよな。でも、今は頼ったほうがいいと思う」
彼らは、あらかじめゲートの発生を知っていたのか。
それとも、ゲートの難易度を操作できる存在がいて、裏で糸を引いているのか――
「春日井君。私に思い当たることがあるのだけれど」
「ん? なんだ? 筑紫は何か気がついたのか?」
「今すぐこの状況を終わらせることもできる。でも、もう少し泳がせたい。湊ならそうするだろうし」
「どういうことだ? わかるように説明を……」
私は上空を指さした。
ゲート内の空に、特別なものがあるわけではない。それでも春日井君は、私の指先を追って空を見上げる。
「上か? 上に何かが?」
「宇宙だよ。宇宙ステーションに置いてきた、プリミティブ・デバイス」
春日井君は、はっとしたように頷いた。
「誰かが、それを使っている……?」
「断定はできないけど、たぶん間違いない。ゲートの難易度を操作したんだと思う」
「なら、今すぐ召喚を解除すればいい」
「それをすると、黒幕がわからなくなる。それに、私たちがプリミティブ・デバイスを握っていることも知られてしまう。湊に相談したいけど、今は余裕がなさそうだし……」
「そうだな。俺が南波なら……」
「私が湊なら……」
春日井君と視線が合い、同時に頷く。
「――ここぞというタイミングで、プリミティブ・デバイスを消す」
2人の考えは一致していた。
「つまり、この状況はピンチでも何でもない。いつでもひっくり返せる」
「余裕の勝利だな。俺たちの」
「デンチュウさんの存在を除けば、ね」
ゲートの問題だけなら簡単だ。
だが、私たちはデンチュウさんを抱えている。
「ああ、彼はハンターじゃない。命の危険がある」
「勝手に入った自己責任だと言う人もいるかもしれない。でも、湊も私も、春日井君も、守るって気持ちは同じだよね?」
「当たり前だろ。ただ、プリミティブ・デバイスを消せば、デンチュウさんは確実に助かる。でも黒幕はあぶり出せない」
「救出だけを考えるなら、消すことが最善なのだけれど……」
デンチュウさんの配信画面を見ると、雅のアバターが、ひらひらと舞うように動いていた。
「すべては御主人様の計画通りです。すべては、御主人様の手のひらの上。海外からのハンターたちが救援に来ました。これでデンチュウは安全に保護されるでしょう」
雅が淡々と状況を伝える。
私たちが考えつくことは、湊ちゃんも当然わかっている。その湊ちゃんが、雅にデンチュウさんを任せているのだ。
画面には、複数のハンターたちの姿が映っていた。
全員が外国人。
ワールドランク上位に名を連ねる彼らが、ハイオークを次々と仕留めていた。
モンスターの強さは一気に跳ね上がり、ダンジョンの地下120階付近に出現するレベルの個体が現れているようだ。単体なら問題にならないが、とにかく数が異常に多い。
難易度がD5.0、5.1、5.2と上がるにつれて、ゲートが重ね合わせのように生成されていると推測された。この数の多さは、その影響だろう。
とんでもない状況だ。
つまり、無数に生まれるゲートを同時進行で攻略していることになる。
本来なら、とっくにクリアできていてもおかしくない。
湊ちゃんは一人で戦い、私と春日井君もモンスターの対処に追われていた。
ようやく集団で行動していたハンターたちを発見し、召喚した要塞へ避難させる。そこで一息つき、湊ちゃんに連絡を入れた。
「こっちはハンター全員の収容が終わった。モンスターは私と春日井君、それと高レベルのハンター3人で対応中。そっちはどう? ここまで来ることはできそう?」
私の声はテキストに変換され、配信のコメント欄を通じて届いているはずだった。
だが、返事はない。
デンチュウさんが撮影している湊ちゃんの戦闘映像には、無数の矢の軌跡が映るばかりで、肝心の様子はわからなかった。
しばらくして、雅の声が返ってくる。
「御主人様は戦闘中で余裕がありません。雅がデンチュウをそちらへ連れて行きたいのですが、周辺にハイオークがたくさんいて動くことができません」
「こちらから迎えに行こうか?」
「そうしていただけると助かります」
「じゃあ、私か春日井君が迎えに――」
「待て、筑紫」
春日井君が手を上げて制止した。
「どうしたの?」
「こっちは要塞を守りながらの戦闘だ。筑紫が離脱すると、おそらく持たない」
その通りだった。こちらにも余裕はない。
「でも、誰かがデンチュウさんを迎えに行かないと……」
「幸い、向こうはゲート入口に近い。海外のワールドランカーたちが救援に入るらしい。彼らに任せるのはどうかな?」
その情報は、すでにネットニュースでも流れていた。
私は苦笑しながら首をかしげる。
「海外から? ずいぶん用意周到なんだね……」
ランク8のハンターが東京から新幹線で向かっているはずだ。それより先に海外勢が到着するというのは、不自然だった。
「怪しいよな。でも、今は頼ったほうがいいと思う」
彼らは、あらかじめゲートの発生を知っていたのか。
それとも、ゲートの難易度を操作できる存在がいて、裏で糸を引いているのか――
「春日井君。私に思い当たることがあるのだけれど」
「ん? なんだ? 筑紫は何か気がついたのか?」
「今すぐこの状況を終わらせることもできる。でも、もう少し泳がせたい。湊ならそうするだろうし」
「どういうことだ? わかるように説明を……」
私は上空を指さした。
ゲート内の空に、特別なものがあるわけではない。それでも春日井君は、私の指先を追って空を見上げる。
「上か? 上に何かが?」
「宇宙だよ。宇宙ステーションに置いてきた、プリミティブ・デバイス」
春日井君は、はっとしたように頷いた。
「誰かが、それを使っている……?」
「断定はできないけど、たぶん間違いない。ゲートの難易度を操作したんだと思う」
「なら、今すぐ召喚を解除すればいい」
「それをすると、黒幕がわからなくなる。それに、私たちがプリミティブ・デバイスを握っていることも知られてしまう。湊に相談したいけど、今は余裕がなさそうだし……」
「そうだな。俺が南波なら……」
「私が湊なら……」
春日井君と視線が合い、同時に頷く。
「――ここぞというタイミングで、プリミティブ・デバイスを消す」
2人の考えは一致していた。
「つまり、この状況はピンチでも何でもない。いつでもひっくり返せる」
「余裕の勝利だな。俺たちの」
「デンチュウさんの存在を除けば、ね」
ゲートの問題だけなら簡単だ。
だが、私たちはデンチュウさんを抱えている。
「ああ、彼はハンターじゃない。命の危険がある」
「勝手に入った自己責任だと言う人もいるかもしれない。でも、湊も私も、春日井君も、守るって気持ちは同じだよね?」
「当たり前だろ。ただ、プリミティブ・デバイスを消せば、デンチュウさんは確実に助かる。でも黒幕はあぶり出せない」
「救出だけを考えるなら、消すことが最善なのだけれど……」
デンチュウさんの配信画面を見ると、雅のアバターが、ひらひらと舞うように動いていた。
「すべては御主人様の計画通りです。すべては、御主人様の手のひらの上。海外からのハンターたちが救援に来ました。これでデンチュウは安全に保護されるでしょう」
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私たちが考えつくことは、湊ちゃんも当然わかっている。その湊ちゃんが、雅にデンチュウさんを任せているのだ。
画面には、複数のハンターたちの姿が映っていた。
全員が外国人。
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