異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 訓練場には100人を超える人が集まっていた。
 これ全員魔術士なのか? やばい緊張してきた。

「敬礼!」

 さすが軍隊だ。雑談してたのに一瞬で綺麗に整列してるよ。

「これより特別訓練を行う! さあツトム君皆に挨拶を」

 このおっさん(ロイター子爵)なんという無茶振りを……

「えっと冒険者のツトムと言います。人様に教えるのはこれが初めてでして色々至らぬ点があるかとは思いますがよろしくお願い致します」

「今回はバルーカ領軍魔術士隊と他に第2騎士団と白鳳騎士団それぞれから数名の者が参加している。
 さっそくだが例の魔法を皆に見せて欲しい」

「わかりました」

 訓練場の隅にある土の壁に向けて撃つのだが、土槍(回転)だと貫通するだろうな。土壁の向こうは石の塀と普通の建物だし事故がないようにすべきか。

 土壁の前に魔盾をこちらに向けて出し土槍(回転)を発射する。

 土槍(回転)は魔盾を貫通して土壁に深い穴を穿った。

「おお!」「凄まじい威力だ!」「あのマジックシールドは猿の魔物の……」



 土槍は自分が付けた呼称なので皆さんには慣れたサンドアローで練習してもらっている。

 練習開始してまだ間もないのに問題点が2つ出てきた。

 問題点その1
 当初回転させて威力を上げるだけなので楽勝だと思い込んでいたのだがこれが結構難題だとわかった。
 皆さんイメージできないのである。
 誰もが1度は見たことがあるであろう、ライフリングが施された銃身から弾丸が回転しながら飛び出し空中を飛翔して目標に命中するスロー映像をである。
 見たことがない知りもしない事を正確にイメージできる人間なんていない。

 問題点その2
 土属性を操れる人しか練習できない点である。
 一応氷結魔法でも同じことが可能なことは伝えたのだが氷結魔法の適正者は更に少ないらしい。

「もっと回転させて」

「アロー自体の軌道は直線で」

「回転によって軌道をブレさせるのはダメ」

 なかなか上手くいかない。
 1日2日でマスターできるようなものではないのかもしれない。
 自分の場合は神様(仮)に貰った『魔法の才能』が大きかっただけで。


 気分を変える為に土属性を操れない風属性の人に風魔法を見せてもらう。

 ウインドカッター…俺が風刃と名付けた奴だ。

 ウインドハンマー…衝撃波を繰り出してダメージを与える魔法のようだ。

 ウインドストーム…広い範囲を風刃で斬り付ける範囲魔法だ。

 ハンマーとストームを練習しながら思い付く。
 風刃。風の刃で斬るなら風の槍で突くことも可能ではないか?
 ウインドランス的な?
 魔盾を突きまくりながら思い出す。
 某メンマのいとこ的な長編忍者漫画の主人公も風属性だったなと。
 風属性の修行で先輩忍者に教えてもらったのはこう2つを擦り合わせるような感じに……

 ドンッ!

 やべ。魔盾破壊して石壁壊しちゃったよ……

 えっと……、恐る恐るロイター子爵のほうを見ると、

「き、気にしないでくれ。ある程度までなら私がなんとかする」

「ありがとうございます!」

「ある程度までだよ? ちゃんと加減してね?」

 ちゃんと対策するから大丈夫!

 まず標的用の土壁を作りその前に魔盾を置く。
 さらに土壁の後ろにも魔盾を置き事故を防ぐ安全仕様だ。

 風槍を放つ。
 前の魔盾と土壁を破壊し後ろの魔盾でなんとか防ぐ。
 ちと危なかった。
 今度は前に5枚、後ろに3枚配置して試す。
 回転させないノーマルで2枚の魔盾を破壊かぁ。

 ちょっと気になるのが貫くのではなく破壊してしまうのである。
 力が1点に集中してない分射程が短い。
 貫くイメージや攻撃力を槍の先端に集中する感じで試すが多少射程が伸びた程度で効果が低い。

 魔盾を横に2枚並べてそれを10セット土壁の前に置く。
 風槍(回転)を発射!
 2枚並べの魔盾を8列目まで破壊した。

 風属性の人達に風槍の説明をして練習してもらう。

「ちょっといいかな?」

 ロイター子爵がやって来た。

「君の使ってるマジックシールドは実戦でも有効かい?」

「魔法を防げますし近接戦でも大活躍ですよ」

「軍の魔術士は後方か高所からの魔法攻撃が主だから習得が進んでいなくてね」

「オーガによる投石は防げませんでしょうか? 飛来してくる石を下に落とすような感じにするとか。要は城壁なり土塁に届かせなければいいのですから」

「防御方法の1つとして検討してみるよ。それにしてもウインドランスと言ったかな? 凄い威力じゃないか。サンドアローを回転させるのより有効なんじゃない?」

「射程が短いのです。近接戦の間合いで一番の威力が出る感じで槍の穂先部分しか当たらない中距離では土槍(回転)の方が威力は上かもしれません」

「それは……結構な問題だね」

「騎士を護衛に付けて魔術士を接近させることはできませんか?」

「君も体験したからわかるだろうけど、我々とオーガとの間には無数の魔物がいるからね。貴重な魔術士を消耗する戦法はできないよ」

「例えば魔物を避けて大きく迂回して後方に回り込むとかはいかがでしょう?」

「人の軍隊と違って魔物の群れはきっちりとは統率されてないからね。あちこちに小集団が存在していて避けること自体が難題なんだよ」

 う~ん。難しいな。
 地上を行くのがダメなら空か?

「飛行魔法は人を抱えて飛ぶことは可能でしょうか?」

「軽めの人間なら平気かな……まさか?」

「はい。空から近付いて攻撃できないかと」

「ふむ。やってみようか。おい、彼を抱えて飛んでみてくれ」

「え? 自分が?」

「ツトム君が発案者だし小柄だしね」

 また子供扱いされた気がする。
 決して『このチビなら丁度よくね?』と思われた訳ではないだろう。
 …………
 くそう。周りがみんなデカ過ぎるんだ!
 俺は決してチビではないぞ!!



 飛行魔法は体感で新幹線ぐらいのスピードだろうか?
 旋回能力は低く細かい動きはできないようだ。
 2度3度と的である土壁の上を飛んでもらって土槍で攻撃してみたのだが、全て外れてしまう。
 高速飛行しながら的に当てるのは非常に難しくゲームみたいに簡単にはいかなかった。
 それでも練習を重ねれば当てられるようになるだろうし、魔法の数を増やしてばら撒く感じに攻撃すれば命中率も上がるだろう。

「修練をすればいけそうだね。飛行種のいない戦場では有効だろう」

「飛行種ですか?」

「ハーピー・ロック鳥・グリフォン・ワイバーンなどが空に展開している時は飛行魔法で飛ぶのは自殺行為だからね」
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