異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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-バルーカギルド1階にて-

「賭け率変更1.5対11.0!! 賭け率は1.5対11.0!! 3等級掲示板の前でかけ札を販売しています!!」

 久し振りに昇格試験が開催されるとのことで盛り上がるギルドの片隅で私はかけ札を買うかどうか悩んでいた。
 普通だったら挑戦者に賭けるなんて絶対にあり得ない。
 ザルクさんのパーティーのことはギルド内で見かけたことがあるぐらいで良く知らないが、実力者だったら当然噂が聞こえてくるものだけどそんなことは一切なかった。
 まして対戦相手はヤコールさんのパーティーである。
 直に4等級に昇格するのが確実視されている精鋭パーティーである。
 悩むまでもないことのはずなのだが……

 私が飛行魔法を教えた7等級の少年魔術士ツトム。今はもう6等級になったようだが。
 あの年齢にしてはきちんと魔術を扱えており、半日掛からず飛行魔法を習得した。
 優秀な魔術士であることは間違いない。

「賭け率変更1.4対11.5!! 賭け率は1.4対11.5!!」

 仮に彼が5等級……、いえ、4等級に匹敵する実力を備えていたとしてもまともに戦えるのが彼1人だけではどうにもならないだろう。
 こんなことを彼自身がわかってないなんてあり得るのだろうか?

『ここだけの話、自分に賭ければ儲けられますよ』

 絶対に勝つと確信しているからこそ言えるセリフだ。

「賭け率変更1.3対12.0!! 賭け率は1.3対12.0!!」

 よし!
 賭けてみよう!! あの少年に。
 意を決して販売所に向かう。

「ネルじゃない。珍しいわね、あなたが賭けをするなんて」

「たまには冒険しようと思って」

「冒険って、あなたまさか挑戦者に賭けるの? 止めときなさいよ。損するだけよ」

「勝てたら夕飯奢ってあげるわ」

「ちょっ!」

「賭け率変更1.2対12.5!! 賭け率は1.2対12.5!!」

 それなりの額を賭けるのだから負けたらタダじゃおかないわよ!!

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 試合会場である訓練場に移動すると多くのギャラリーが集まっていた。
 壁外ギルドや王都の訓練場は屋内なのだが、ここの訓練場は屋外にある。
 塀側には客席まであり、既にたくさんの人が座っていた。
 客席と言っても席がある訳ではなく段差の部分に直に座っているようだ。
 ギルド職員がロープを張って試合場とギャラリーのいる場所を区切っていた。



 訓練場では対戦相手のパーティーも待機しておりすぐにも試合を始められる状態なのだが、何も動きがない。

「あの、模擬戦はまだ始まらないのでしょうか?」

「もうすぐかけ札の販売が終わるからその後からだぞ。ギルドにも手数料が入る仕組みだから業者もギルドもガッチリ儲けたいのさ」

「なるほど」


 客席の最前列にはいつの間にやら机が置かれており、解説者のラック氏と謎の実況アナが座っていた。

『たった今対戦方式とメンバー表が届きました! 対戦方式は勝ち抜き戦です。ラックさん、挑戦者側のこの選択はいかがでしょう?』

『意外……ですね。格上に対しては集団戦を選択する挑戦者が多いです。連携次第では実力差を埋めることだって可能ですから。次に5回戦勝負ですね。運頼りになるものの組み合わせ次第では勝機がでてくることもあります』

『しかし勝ち抜き戦だと個々の実力がモロに反映されますので挑戦者に不利な対戦方式かと思います。私は長年昇格試験を見てきましたが、勝ち抜き戦が選択されたのは数回しかなくそのどれもがいわゆるお試し挑戦でした』

 ラック氏は昇格試験マニアとかそんな感じなのだろうな。
 それにしてもマイクでも使っているかのような声量の大きさだな。
 机の上に置かれている大きな箱がマイク的な役割をしているのだろうか?

『すると今回の挑戦者もそんな感じであると?』

『はい。と言いたいところなんですが……、1つ引っ掛かる点があります』

『なんでしょう?』

『挑戦者であるザルクのパーティーは4人編成だったはずです。メンバー表によるとツトムという冒険者が加わっていますね』

『聞いたことない名前ですが』

 俺のことだよ!!
 まぁどうせ謎の人扱いされる……

『彼は壁外ギルドに所属していてそこの職員のミリスさん一押しの魔術士です。3等級パーティーとして名を馳せた瞬烈を壊滅させたオークジェネラルを単騎で倒しています』

 知ってるのか……
 つかなんで知ってるんだよ!!
 別に隠れて行動してた訳ではないけどソロで動いていた俺のことまで把握してるなんてどんだけ情報握ってるんだよ。
 ミリスさんがベラベラ喋った可能性がかなり高そうだが……
 守秘義務なんて概念はこの世界にはないので仕方ないとはいえ。

『皆さん御存知でしょうがオークジェネラルの討伐は4等級パーティー以上が推奨されています。5等級パーティーでも討伐自体は可能でしょうが被害が出るとの判断からです。それを単独で倒したとなると……』

 ざわざわ ざわざわ ざわざわ ざわざわ

『先程の挑戦者が勝ち抜き戦を選ぶ理由がもう1つあると考えています。それは圧倒的な強者が確実に勝つ為に選択する場合です』

「マジかよ…」「うわあ、もうかけ札販売終わってるぞ!」「そんなことあるのかねぇ」

「バカ! ラックさんの解説に間違いはねぇよ」「ツトムってあのチビか」

 チビは余計だ!
 それにしてもこっちの思惑をほとんど読まれているぞ。
 解説者さすがだわ。

「ツトム、お前勝つつもりなのか?」

「もちろんですよ。皆で5等級に昇格しましょう」

「くっ。かけ札買うべきだったか!」

 オイ。

「ふふん。私バッチリ買ったわよ」

「ヒルダ! さっきトイレに行ったんじゃなかったのか!」

「そんなこと一言も言ってないわ」

 ハイハイ。仲が良くていいですねー。


『ということは挑戦者側でカギを握るのは4人目に配置された魔術士ツトムということでしょうか?』

『いえ、カギを握るのは3人目までのザルクパーティーの近接攻撃系のメンバーです』

『と言いますと?』

『5人目のヒルダさんは斥候職ですので出番が回ってきたら棄権するでしょう。魔術士ツトムが情報通りの実力があったとしてもヤコールパーティーの魔術士2人に勝つのは相当難しいと思います。魔力には限りがありますからね』
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