異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 待てよ。こんな王都が包囲されてる状態でオークを大量に売却したら怪しまれるかもしれない。
 死体はしばらく寝かせてから売り捌かないとマズイか。
 なんかya☆kuの売人みたいな言動をしているぞ。善いことをしているはずなんだが……

 あとは回復魔法を使えばもうアルタナ王都に用はないかな。
 東門に移動した。が、あちこち見てもケガ人がいない。

 色々情報収集してみた結果、ルミナス要塞が突破された急報を受けてすぐ壁外区に避難命令が出されたので住民の被害はなく、その後に王都が魔物に包囲された後も(王都の東側に対しては)激しい攻撃はなく散発的な戦闘のみなので負傷者は少ないのだとのことだった。
 王都の西側も似たような状況とのこと。
 それならばとそこそこ攻撃されている南側に行くが、南門近くにある負傷者が運び込まれている建物には軍関係者以外立ち入り禁止だった。
 建物入り口に立っている歩哨が冷徹な感じの兵士で父さんがケガで運び込まれているかもしれない作戦を試す余地もなかった。

 仕方ないので建物の外から範囲回復をして飛び立った。

 帰りは特に魔力を温存する必要はないので速度を上げて東へと飛行する。
 ちょっとアルタナの様子を見に行こうと思い立ったことから始まったこの2日間は、大きな収穫とたくさんの課題が浮き彫りになった2日間だった。

 一番の収穫はなんと言ってもレイシス姫とレグの街の人々を守れたことだろう。
 俺がやったことはレグの街が包囲された状況を解消しただけだが働き的には大きいはずなので、自分の功績と認識してもいいだろう。
 アルタナ王国を救ったのかについては時間が経過して冷静に分析してみると実はそれほど決定的な働きはしてないのではないかと思えてきた。
 もちろん倒した魔物の数の分は貢献したのだろうが、結局俺がいなくても王都で防衛できていたのではないか? 先ほどまでいたアルタナ王都の余裕な状況を考えるとそのように思える。
 もっとも1国の命運を左右する戦力を個人で握っている事実から逃げたいだけなのかもしれない。このことは更に時間を置いたり多方面に情報収集したりして継続的に考えるべき事柄なのだろう。

 次の収穫はアクシデントとはいえ伝令役をすることによってアルタナ王国の内情を知ることができた点だな。ロイター子爵への良い手土産になるのではないだろうか? 領軍司令という立場的にはあまり関係はなさそうだけど。
 まぁどうせ俺が報告すべき対象はロイター子爵しかいない訳だし、受け取った情報をどう扱うかは丸投げで良いだろう。

 課題のほうは本当に難問山積といった状況だ。
 その中でも1番の難題は黒オーガの件だろう。
 特にランテスの言っていた一本角の黒オーガは見た事すらないのに無理と感じられる。ひょっとしたら二本角ですら無理かもしれん。
 だけど無理無理言ってても始まらないので何らかの対策なり戦い方を考えなければならない。
 1対1の状況であれば飛行魔法で即逃げでいいのだろうが、周りに冒険者や兵士がいるなら生還できる可能性のある俺が相手して味方が撤退する時間を稼がねばならない。
 とここまではいいのだが、肝心の対策や戦い方がまるで思い付かない。
 三本角を倒した時のような相討ちで風槍・零式を当てるやり方は二本角には通用しないだろう。
 何も思い付かないならまずは黒オーガの情報収集から始めるか。
 そう言えば結局一本角の黒オーガがどうなったのかランテスに聞いてないな。未だメルクの南の森にいるのかそれとも別の地に移動したのだろうか……


 行きの半分の時間でバルーカに着き、家に寄って無事の知らせとこの後城への報告を済ませてから帰る旨を夕食の準備をしていた2人に伝えた。
 つかまだ15時過ぎなんだが、こんな時間から夕食の準備を始めているのか……
 この世界には当然惣菜や調味料・スープの素なんてものはないから一からのガチ調理である。
 定期的に3人で外食でもして料理の負担を減らすべきなのかもしれないな。

 城で面会手続きをするとすぐに案内された。
 待合室には何人か待ってるみたいなので(必ずしもロイター子爵への面会人とは限らないが)優先的に通すように通達していたのかもしれない。



「やぁ、ツトム君。無事なようで何よりだ。それで首尾のほうはどうかな?」

「レイシス姫とレグの街は守ることができました」

 向かいに座るロイター子爵の後ろにはナナイさんが控えている。

「それは良かった。まずは詳しい話を聞こうか」

 この2日間の詳しい報告をした。




……

…………


「ふむ……
 君が希望するなら名前を出さないようにすることは可能だ。特に今回の件は命令ではなく君個人で動いたことだからね。
 だけどいいのかい? 名前を出さない以上は功績として認められないし報酬も得られないよ?」

「名前を売りたい訳ではないので功績はどうでもいいです。
 報酬に関しては未練がないと言えば嘘になりますが、リスクのことを考えるとあきらめざるを得ません」

「今回はそれでいいとしてもだ、今後ずっと名前を隠し続けて活動するのは無理があると思うよ。依頼したこちら側が言うべきことではないのかもしれないけど、南の砦奪還は正規の軍事行動だから名前を出さないという訳にはいかない。
 それにまたどこかの戦線が危機に陥った場合に君自身助けに行かないという選択はできないのではないかな?」

「依頼に関しては派手に動かなければ何とかなるんじゃないかなぁ、と……
 今回のアルタナと違って自分個人で何とかしないといけない状況にはならないでしょうし。
 しかし他の危機に際してというのは仰る通りで正直困っています。
 自惚れる訳ではありませんが自分の魔法で千や二千の魔物を倒せばそれだけ犠牲になる人が減ることに繋がりますし」

「ツトム君みたいな便利にコキ使える手駒があると……コホン。極めて優秀な戦力があるとどうしても有効に活用したくなるのが指揮官のさがでね。
 とはいえ他国のことなど完全に私の権限の管轄外のことなので本来であれば中央の軍務卿直属の戦力として運用するのが適切だと思うけど……君は嫌がるかな?」

 本音がダダ漏れである。
 しかし政府の偉いさんの下で動くとなると完全に王国に所属する形になるな。臣下ってやつだな。

「宮仕えは自分の気性には合わないと思います」
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