異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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「ぼっ、冒険者ぁ?!」

 いくらなんでもそんな突飛な……

「落ち着けって。
 名称は違うだろうが魔族側にも俺達と似たような役割を担う者がいてもおかしくはないと思ってな。
 それにそう仮定すると俺達を見逃したことや街に攻めて来ないことにある程度の理由付けができてしまうんだよ」

「つまり黒オーガのターゲットは烈火だった。いや、烈火の殺された中の誰かだった。
 ターゲットではなかったからゾラードさん達4等級パーティーは見逃されたし、討伐依頼が完了したから魔族の領域に帰って行った……と?」

「ああ。
 別に明確な根拠がある訳ではないんだが、自分の中で疑問に思っていたことの答えを見つけちまった気持ちになってな」

 あり得るのだろうか?
 だとしたら俺が倒した三本角はどうしてルミナス要塞の前の平原にいたんだ?
 俺を狙ってというのは絶対にないだろう。
 アルタナ行きは前日の朝に決めた事だし。
 となると……アルタナ王国の強者を狙いに行くとこだったのか!

「現在のメルクの最上位パーティーは何等級ですか?」

「3等級だ。
 烈火の補助に就いた2つの3等級パーティーの内の1つだよ」

 やはり……

「あと聞き忘れていましたが、黒オーガの装備はどんなでしたか?」

「革製の防具を着ていたな。体全体を覆うタイプではなく部分部分をガードするタイプだ。
 正直あの肌の硬さで防具なんて必要なのか? と不思議に思うけどな。特別製でもないらしく、俺達の攻撃で普通に破損していた。
 武器は両手に……」

「ぶ、武器?! 奴は武器で攻撃してくるのですか?!?!」

 てっきり三本角と同じく徒手空拳とばかり……
 ひょっとして黒オーガは1体1体扱う武器が違うのでは……

「あ、ああ。両手に鉤爪みたいなのを装着して攻撃してくるんだ。
 奴のパワーとスピードで壊れないのだから鉤爪のほうは特別性みたいだぞ」

 鉤爪か……
 格闘系ではあるみたいだな。

「盾持ちの人はどのぐらい攻撃を防いでいたのですか?」

 盾である程度防御できるのであれば俺の魔盾でも防げるはずなんだが……

「………………」

 なんだ?
 急に無口に……

「そこまで具体的に聞いてくるということは、おまえ……奴と戦うことを想定しているな?
 興味本位や土産話を仕入れる程度の奴らはそこまで聞いてはこないからな」

「万が一黒オーガと対峙した時に備えてです」

「俺の話を聞いた上で尚そのように考えているのなら何も言うまい。
 どれだけ防いだかだったな。
 連続攻撃の一つ一つをカウントするのなら10回は防御していたはずだ。
 だが烈火と戦っていた時と比べると俺達には明らかに手を抜いていたからな。
 参考にすべきではないだろう」

「そうですか……」

 魔族の冒険者説が正しいのならゾラードには申し訳ないが4等級には本気を出すまでもない訳か。
 ん?
 本気ではないのに先に特定のパーティーを狙い撃ちにしたってことになるな。
 矛盾してないだろうか?
 もしかしたら……

「最初にやられた火力に特化していたという左翼パーティーの構成はわかりますか?」

「魔術士3人に剣士と斥候が1人ずつのパーティーだったな」

 やっぱり!!


「今日は貴重なお話をありがとうございました。
 これは飲み代の足しにでもしてください」

 店の支払いとは別にゾラードに大銀貨数枚握らせた。

「悪いな。おまえも無茶しないで素直に逃げろよ」

「そのつもりです。先ほどのはあくまでも万が一を想定してですから」

 早速飲み仲間のところに行くというゾラードと別れてギルドに向かった。

 黒オーガは魔法攻撃を脅威に感じている。

 ゾラードの話を聞いて導き出した俺の結論だ。
 恐らく黒オーガの硬い肌は対物理耐性のほうが高いのだ。
 魔法耐性も高いのだろうが物理耐性ほどの絶対的な信頼を奴自身がしてないのだ。
 だからこそ手を抜く場面であっても魔術士主体のパーティーを先に潰した。
 火力に特化したというぐらいなら腕の良い魔術士を揃えていたのだろうからな。

 これで風槍・零式が一本角にも効く可能性が出てきたな。
 それか新たに対単体個体用の魔法を開発してもいい。
 今度はもっと当てやすさを考慮しないと……
 ただなぁ、威力を追求しようとするとどうしても他の部分が犠牲になるからなぁ。
 新魔法は地道に研究開発していくしかないな。

 あと実際魔法攻撃が効く以外にも囮やフェイントとして有効に使える可能性も出てきた。
 思えば三本角との戦いの時も俺の魔法を警戒して攻撃体勢から防御姿勢に移行した場面があった。
 魔法攻撃に対する警戒は種族としての傾向なのかもしれない。
 なんにせよ戦い方に幅ができるという意味では貴重な情報だ。

 あとは俺がいつ奴(ら?)のターゲットになるのか……だな。
 自分は標的にならない……なんて甘い考えは捨てたほうがいいだろう。
 なんと言っても俺は奴らの同族を1人殺しているのだ。
 最優先で狙われる・復讐されると考えるべきだ。
 問題なのは魔族側がどのように情報収集してるのかが全然わからない点なんだが……

 もし魔族側が三本角を殺した犯人を特定できないのであれば俺が狙われるということもなくなるな。
 待て待て。たった今甘い考えは捨てると宣言したばかりだろう。
 ここは魔族側に犯人が俺だと特定されている前提で考えよう。
 そう、例えば魔族は魔物と意思の疎通ができるとか。それならば現場にいた魔物から俺のことを聞き出すことが可能だ。
 そこから……そこから…………どうするんだ?
 いくらなんでも人族の街に潜入して聞き込みなんてできないだろう。
 以前バルーカの街に魔物が突然現れた際には人族の中の裏切り者の存在を疑ったこともあったけど……今にして思えばあまり現実的とは言い難いし。
 人族側が魔族の情報を得られてないと同様に魔族側も人族の情報は得られないと考えるべきだろうか?

 どうしてもすぐに狙われることはないだろうという安易な予測に着地したくなるな。
 しばらく時間を置いてもう一度考えてみるか。



 ギルドの解体場でオークを売る。
 南の森に集落がいくつかできてるらしく討伐数が増えているので買い取れるのは50体までと言われた。
 壁外ギルドの分も合わせると、オーク80体とオーガ10体を売ったことになる。

 所持金113万1770ルク→154万8570ルク

 メルクではどんな依頼があるのか見学してから帰ろうかと建物内に入ると、先ほど来た時とは違いギルド内はザワついた空気になっていた。
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