異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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「その掲示される中にバルーカの名前がないせいで、新規に冒険者になる人が減少しているといった問題が既に起こっているのですか?」

「本選に出なくなって以降のバルーカにおける新規冒険者数は横ばい状態ではある。
 だが山林の開拓が進み新たな村々が増え、それに伴いバルーカ領の人口が右肩上がりで増加する中での横ばいは実質的には減っているのと同じことだ」

 大会で結果の出したギルドに人が流れてしまっているということか。

「他の街と比べてバルーカの冒険者が弱い? というか有望な冒険者が出てこない理由とかあるのでしょうか?」

 武闘大会とやらはあくまで結果に過ぎないだろう。
 根本的な原因が何かあるのだと思うが……

「最初に話したバルーカが軍事拠点であり住民の多くが軍関係者というのが大きいだろうな。
 親が軍人ならその子供もほぼ軍隊入りする。
 例え軍志望でなくとも同類の技能が要求される冒険者ではなく他の職業を選択する。
 街の住人が冒険者にならないから、というのが原因と考えられている」

「イメージ的には山林を駆け回る農村の子供のほうが冒険者に向いていそうですけど……」

「それは農村の暮らしぶりを知らない者が持つ間違ったイメージだ。
 幾つかの大きな村以外まともな私校もない村が多く、あったとしても高齢者が読み書きと簡単な計算を教える程度だ。
 君の言う"山林を駆け回る子供"というのも裕福な農家の子ぐらいで大抵は朝から晩まで農作業の手伝いに明け暮れる。
 周りは農家になる子供が多い中で体力だけはある三男・四男あたりが冒険者になりに街に出てくる訳だ」

 スローライフな田舎暮らし的なイメージはあくまで理想で、現実の農村暮らしは過酷な訳か。

「一方街の子供達は有料とはいえ私校や道場に通え、様々な進路の子供達と刺激し合って互いに切磋琢磨していく。
 よほど突き抜けた才能でもない限りは街出身者のほうが優秀な冒険者になるのは必然だ。
 もちろんこれは冒険者に限らず軍人や商人・文官などにも言えることだがな」

 道場もあるのだな。
 引退した冒険者の再就職口とかか? あり得る話だ。

「ということは街の人口を増やすのが問題解決の方法になりますか?」

「冒険者ギルドにとってはそうだが、王国は違う。
 今王国では街に住む貧困層を開拓地に送ろうと様々な取り組みを行っている。
 まぁ国の基本は農業なので一人の王国民としては支持したい方針だ。
 もっとも、国の政策レベルの話になるとギルドにできることなど何もないがな」





……

…………



「自分に指名依頼があるみたいなのですが?」

「しばらくお待ちください」

 自分が提示した冒険者カードを受け取った目元のほくろが特徴的な茶髪の受付嬢が奥の書棚を探している。
 これまで長い事おっさん(=レドリッチ)の話を聞いていただけに、左右に動く魅惑的なお尻に目が釘付けだ。
 あっ! この人お山も結構……

「お待たせしました。
 あら…………、コホン。失礼しました。
 グリード様からの指名依頼でレドリッチ様からも成功報酬が追加されております。
 内容は明朝メルクで行われる3等級昇格試験への特別参加要請です。
 報酬は2万ルク、試験でのツトム様の勝利で2万ルク、3等級昇格達成で2万ルクの成功報酬となっております」

 『報酬には色を付けておいた』と言っていたのはこのことか。
 きっちり条件付けしてくるあたりレドリッチの性格が伺えるな。

「明朝の試験というのは何時ぐらいに行けばいいのですか?」

「朝の依頼争奪の混雑が終わってしばらくして昇格試験を行いますので、その辺りの時間帯に行って頂ければ」

「わかりました」

 指名依頼の受諾手続きを終えたところで、

「え!?」

 茶髪受付嬢さんが俺の手に両手を添えて来た!

「昇格試験がんばってください!! 私応援してますので!」

「あ、ありがとう」

 この人俺のファンなのかな?
 5等級昇格試験での5人抜きや4等級パーティーを蹴散らしたりと俺も結構ここで活躍してるからな。

「限度額一杯まで賭けますので頼みますよ!!」

 え?!

「……賭け?」

 俺のファン…………という訳ではなさそうだ……

「はい!
 今回試験的にここバルーカでもかけ札の販売が行われることになったんです。
 他の街で行われる昇格試験に対してかけ札を販売するのは初めての試みになりますので限度額は低く設定されていますが、飛行魔法を習得している魔術士を数人雇って随時メルクからの速報が届けられることになっています!」

 結果だけで十分だろうに速報を伝える体制まで敷くとは。
 昇格試験の時の盛り上がり具合を思えば、複数の魔術士に依頼を出してもかけ札の販売業者は儲かるのだろう。

 あるいは……
 バルーカの冒険者達にハッパをかける為にレドリッチが手を打ったのかもしれない。
 お前らも早く注目されるような存在になれよ……的な?

「通常の昇格試験ではギルド職員はかけ札の売買を禁止されているのですが、今回は他ギルドとの対戦という事でバルーカ所属のパーティーのかけ札のみ購入可能なんです!!」

 そんなにギャンブル好きなの? と聞きたくなるぐらいテンションMAXで話す茶髪受付嬢。
 俺の手に添えられていた両手はいつの間にやらガッチリと握手する形でキツく握られている。

「絶対に……絶対に勝ってください……」

 『絶対に負けられない戦いがそこにはあるのよ!!』
 と言わんばかりに目を潤ませながら訴えかけて来る茶髪受付嬢。
 両目が怪しく光り必死さが嫌と言うほどに伝わって来る。
 何が彼女をそこまで駆り立てるのか?

「全力を尽くしますから……」

 『魔術士が不利な模擬戦形式でしかも格上相手なんで勝てるかどうかなんてわからない』なんてことはとてもじゃないが言える雰囲気ではない。
 レドリッチにご褒美をおねだりしたとはいえどうしても欲しい訳ではないので、個人的には勝とうが負けようがどうでもいいのだが……
 グリードさんとの約束でもあるし、ひょっとしたら3等級冒険者がバルーカに誕生すればレドリッチも俺に拘らなくなるかもしれないけど…………勝たなきゃいけない理由としてはちと弱い。

「あの……手を……」

「は!? し、失礼しました!」

 なんだろう?
 初めて付き合った男女が互いの手が触れた際に慌てて引っ込めるみたいな感じになっているけど……
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