異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

文字の大きさ
167 / 448

164

しおりを挟む
 露天風呂で土魔法で作ったミニチュア船が浮くかどうか色々と試したものの、浮かばずに沈んでしまう結果となった。
 湯に浸けても崩れることはなかったが重いみたいだ。まぁ土だしな。
 姫様に関しても妙案は思い浮かばず、"もう少しお近づきになった後で"という無難な方向に落ち着いた。
 ただ、イリス姫に深く関わることが俺にとって良い事なのかがよくわからない。王位継承争いに敗れたとはいえ、勝者の次代国王である弟君とは良好な関係らしいのだが……
 仲が良かったのに敵味方に分かれて……なんてことはどの世界の歴史でも割とある話なので注意しないと。



 翌日出発してまだ朝の内に漁村に到着した。
 ルルカはずっと海を見ている。
 上空から遠くの方に海が小さく見えてしまうと興醒めなので、できるだけ低空を飛んで海岸線を目指した。
 最後は目隠しまでして初めて見る海を演出したのだが、絵画と実物との差に中々の満足度のようだ。

 漁村にて魚を分けてもらえないか交渉する。
 ルルカの進言で予めバルーカで交換用の野菜や家具を買い込んできているのだ。
 こういった辺境の村々では貨幣は行商人との取引に使用されるのがほとんどで、個人間では物々交換のほうがスムーズに取引ができると教えてくれた。

 この季節の水揚げはカリークと呼ばれる大きな魚で、異世界だからと姿形がファンタジーということはなく普通な見た目の魚だ。
 炊き出し用に煮られているのを味見させてもらったが、味も食感もブリに近い感じで凄く美味しい。もっとも魚自体約2ヶ月ぶりなので何であろうと美味しかったと思うが。
 他にチグルスという小さ目な魚も見かけるがこれはレアモノらしく、卸し先は貴族や大商会に限定しているそうだ。

 野菜・家具・余っている角付き肉と引き換えに大量のカリークをゲットした。
 先ほど味見だけで物足りなかったので早速焼いて食べることにする。
 村人に捌き方を教わりながら串棒を刺して塩を振り丸々1匹サバイバル風に焼く。
 焼き上がるのに結構時間掛かるんだよな。
 香ばしい匂いが立ち込める頃、かじりついてハフハフしながら食べる。ウマイ!!
 ルルカも上品さを醸し出しながら同様に食べている。

 これで今後も魚を食べられるようになり感無量だ。
 ルルカが調理の仕方を聞き込んでいる間に海上を飛んでみることにした。
 漁師の話では沖の方でも割と安全で、よほど遠くに行かなければ海の魔物は出ないとのこと。
 ただし潮の流れにもよるので絶対という訳でもなく、逆に南方の海は沿岸部でも危険地帯のようだ。
 実際海上をかなり沖まで飛んでも敵感知に反応は無く、ようやく反応があっても深く潜ってるようで空からは海の魔物の姿を拝むことはできなかった。



 漁村での用を済ました後はコートダールの商都近郊まで戻り野営した。

 翌日は商都の観光である。
 もっとも観光スポットなどないので、やることと言えばもっぱらルルカと商店巡りである。
 商業都市なだけあって商品の品揃えは実に豊富でルルカは目を輝かせながらあれやこれやと物色しまくっているが、俺は先日も買い物に付き合ったばかりなので若干食傷気味だ。

「ロザリナの分も買うようにな」

「はい。お任せ下さい」

 しかしここは我慢である。
 明日ルルカを実家に帰らせたら12日間ほど離れ離れになるのだ。

 この日は夕方まで買い物に付き合いヘトヘトになったので近くの良さげな宿に泊まることにした。

「今日はありがとうございました」

「商都なんて滅多に来れないのだから気にするな」

「お疲れでしょう。
 ツトムさんはそのままで」

 ルルカが覆い被さって来る。
 ご褒美ということなのだろうか?
 今夜はいつも以上に奉仕してくれた。



 今日はいよいよルルカの実家に行く日である。
 あまり……というかまず歓迎されないだろうから起きてからイチャイチャしながらも憂鬱だ。

 朝食後に宿を出て、商都の南にあるワナークにはすぐ着いてしまった。
 街の入り口手前に降りてギルドに貼られているであろう街の地図を見る為に冒険者ギルドを探そうとしたら、

「ツトムさん、こちらです」

 と街の入り口広場の隅にある田舎のバス停留所のような所に連れて行かれた。
 屋根付きのスペースは人で混み合っており、壁にはこの街の大きな地図と地区の清掃活動がどうとか市の開催日が何とかといった役所からのお知らせが掲示されていた。

 こういう所に街の地図やお知らせがあるのかと感心していたら、地図を見終わったらしくルルカが戻って来て、

「家の場所がわかりました。行きましょう」

 俺の手を取り歩いて行く。
 何気に外でルルカと手を繋いで歩くのは初めてなので、猛烈な気恥ずかしさを感じつつも素直について行く。
 この世界の住所は一軒一軒を区分するようなものではなく、街の区画毎にひとまとまりで区分けされている。
 言わば番地表示がなくその前の〇丁目までなのだ。
 なのである程度までは絞ることができるのだがそこからは地力で探さないといけない。
 まぁ現代みたいに人間関係が希薄になっている訳ではないので、その区画の人に聞けば普通に答えが返って来るのだけど……

「見つけました」

 はやっ!?
 ルルカは何軒か先にある小さな雑貨屋を指差している。
 普通の戸建ての玄関のところを店舗に改築したようなこの世界で割と見るタイプの家族経営型小店舗だ。

「どうしてすぐわかったんだ?
 ルルカも実家に来るのは初めてなんだろう?」

「はい。
 ですが店の看板が両親がロクダーリアで営んでいた雑貨店と同じ物ですので」

「なるほどな……
 !!!!
 ま、待て、ちょっと待て!
 いいからちょっと落ち着け!」

 すぐ行こうとするルルカを必死に押し止める。
 お前が落ち着けと言わんばかりにこちらを見るルルカ。

「場所はわかったのだし俺はここで失礼する。
 いまから収納にあるお土産を渡すから……」

 ルルカの家族と会わなければ気まずい思いをしなくても済む。
 どの道迎えに来る際は会わないといけなくなるのだが、そこは所謂問題の先送りというヤツである。

「何を仰っているのですか。
 きちんと挨拶して頂かないと困ります」

「現在進行形で非常に困っているのは俺のほう……」

 大体なんで奴隷の家族への挨拶とかそんな罰ゲームみたいなことをしなければならないのか?
 強引に俺の手を引き実家に連れて行こうとするルルカと必死に抵抗を試みる俺。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

お子ちゃま勇者に「美味しくないから追放!」された薬師、田舎でバフ飯屋を開く

ファンタジー
現代日本から転生した味覚オタクの薬師ユージンは、幼い勇者パーティの“保護者枠”として命を守るため口うるさくしていたが、「薬が苦い」「うるさい」と追放される。 田舎ミズナ村で薬膳小料理屋「くすり香」を開いた彼の“バフ飯”は冒険者を覚醒させ、村を救い、王都の薬利権すら揺らす。 一方、追放した子どもたちはユージンの真意を知って大泣きするが、彼は戻らない──自分の人生を取り戻すために。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆1/19〜1/27まで、予約投稿を1話ずつ行います。 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...