187 / 454
184
しおりを挟む
「ん? ツトム君どうしたんだい? 何か気付いたことでもあるのかな?」
ロイターのおっさんに自分の推理を話してみた。
「う~~ん…………魔族が人族の国家間の関係変化を目的とした攻撃を仕掛けて来るとはにわかには信じ難いが……」
こういった考えはそう簡単には受け入れられないよなぁ。
この世界に来てまだ2ヶ月の俺とは違い、彼らには長い年月を費やして固まった魔族に対するイメージがあるのだろうし。
「少数の部隊でも実行可能な目的ではありますな。実際の成否は別にしてですが……」
「卿自身はどう見ているのだ?」
伯爵がロイター子爵に問い掛けた。
「バルーカに転移させることができるのなら、逆にバルーカに呼び寄せる……召喚することもできるのかもしれません」
「呼び寄せる?!?! バルーカに魔族の部隊をか!
むぅぅ~~~~」
「あくまでも推測ですが…………」
「しかしながら、召喚するにしても転移後の砦にはロクな戦力は残っていませんでしたが?」
「必ずしも砦から召喚するとは限らないじゃないか」
「すると南方大陸から…………」
「転移システムだけでもその仕組みがわかればいいのだが……」
「砦には手掛かりはなかったのですか?」
あれだけ大きな音がしたんだ。それなりの魔道具の起動音のはずだ。
「砦に突入した部隊が南へ飛んで行く飛行種を目撃してる。まず転移に関連する魔道具を積んで退避したとみて間違いないだろう」
「砦の内部に何か痕跡などは?」
「今のところ見つかってはいない。
そうだ! 砦と言えばツトム君に頼みたいことがあったんだ。
ナナイ君!」
衝立の向こうの待機所からナナイさんが姿を現した。
「詳しい事は彼女に聞いて欲しい。
ナナイ君、後は任せるよ」
「はい、お任せ下さい」
再び軍議に混ざるロイター子爵を尻目にナナイさんと天幕を出た。
「先ほどは素晴らしい活躍をされたようですね」
「かなり苦戦しましたけどね」
「魔力の消耗具合はいかがです?」
「そこそこ消耗していますが…………どうしたのです?」
「実はツトムさんに砦の清掃をお願いしたくて……
砦を占領したのはいいのですが、内部の匂いと汚れが酷くて再利用はおろかまともに調査すらできない有様で……」
そう言えばあの砦施設の内部の臭気は強烈だったな。
「軍のほうで掃除しようとしたのですが吐き出す者や気分の悪くなる者が続出してどうにもならず、このままでは司令部すら砦に移せません。どうか……」
数の力で押し切ろうとしたけどダメだった訳か。
依頼料を吹っ掛けたいところではあるけど…………軍は金払いは冒険者ギルドと違って良かったし今回はアレコレ言わずに素直に引き受けておくか。
この依頼自体の報酬が提示されないのも俺の働き次第ってことなんだろうし。
「わかりました。
その代わり自分からもお願いがあるのですが」
「なんでしょう?」
「砦の外で魔法の練習をしていいですか?…………ちゃんと離れたところに壁を作ってやりますので。
今日の戦闘で課題だったり調整しないといけない箇所が見つかりまして」
「そのくらい構いませんよ。行かれる際は私に一声掛けてからお願いします」
「それと、昨日話したお風呂の件、明日以降で構いませんか?
さすがに魔力が…………」
実は魔力そのものは常時魔法を使いまくる状態でもない限り砦を浄化魔法で綺麗にしながらでも、あるいは魔法の練習しながらでもスキルLv8である魔力回復量が上回るので何も問題ない。
先ほどの戦闘である程度出血しているし疲れてもいるし非常に面倒そうな案件なので明日以降にしたい、というだけのことである。
「そうですね。
砦の施設なども魔物によって破壊されているところが多いですし、予定通り北門広場に建てていいか再度確認したほうがいいのかもしれません。
作業は明日まで延期しましょうか」
「もう少し余裕を持って3日後ぐらいからの作業開始にしませんか?」
「砦の清掃をした後で専門家と現場を視察してその結果を上に伝えませんと……」
俺の言った事聞こえているよね?
「急いては事を仕損じると言います。ここはじっくりと計画を練り直すべきなのでは?」
「明日の一番から作業に取り掛かれるように万全の準備しておきますので」
ワザと? ワザとなの?
「何はともあれまずは砦に行きましょうか」
俺の発言を全力スルーして砦に向かおうとするナナイさん。
ひょっとして歩いて行くつもりなのか?!
「ちょっと待ったぁ!
砦へなら飛んで行きませんか?」
「魔力………………厳しいのですよね?」
ちょっと疑わし気な目つきで聞いてくるナナイさん。
「この程度の短距離なら問題ありませんよ。さぁ、行きましょう!」
「きゃっ」
やや強引にナナイさんを抱っこして飛び立った。
本当は思いっきり抱き締めてナナイさんの柔らかさを堪能したかったのだけどここはさすがに自重する。
砦の内側に降りると各施設から臭気が漏れているようで砦内には異様な匂いが立ち込めている。
「施設内部の匂いが強烈でどうしようもなくドアや窓を全開にして換気しているのです」
兵士達も匂いが漂ってこない風上に避難しているようで誰も見当たらない。
「とにかく始めましょうか」
鼻と口を手拭いで覆って施設の中に入り浄化魔法で綺麗にする。
俺の浄化魔法は見えている範囲内であればそれなりの広さの部屋でも一気に浄化できる。
死角になっている机や椅子の裏なども綺麗にするが、他の物と接している場合は浄化されない。
例えば本棚を壁から少し離して浄化魔法を使うと壁も本棚の裏側も綺麗になるが、本棚の底面と床部分は綺麗にならない。
さらには空気中に漂う匂いの粒子はどうにもできない。
固体や液体を綺麗にすることはできても気体には効果がないのが浄化魔法だ。
砦の施設……そのほとんどが兵士用の宿舎と思われるが、建物のドアや各部屋の出入り口の多くが周りの壁ごと破壊されていた。
通常のオークでも人族サイズの建物を使うのは厳しいだろうが、それよりも大型なオークの上位種やオーガなんかが出入りするとこうなるのだろう。
一つ一つの施設を中に入って一部屋ずつ綺麗にしていくが、段々と面倒臭くなってきた。
一般的な住居と違って割と画一的な造りをしていて浄化作業もスムーズに行えているのだが、何せ数が多い上に単調な作業の繰り返しで飽きるのだ。
試しに建物外部から中を一気に浄化できないか試してみる。
上手くいかない。
もう一度……
失敗だ。
ロイターのおっさんに自分の推理を話してみた。
「う~~ん…………魔族が人族の国家間の関係変化を目的とした攻撃を仕掛けて来るとはにわかには信じ難いが……」
こういった考えはそう簡単には受け入れられないよなぁ。
この世界に来てまだ2ヶ月の俺とは違い、彼らには長い年月を費やして固まった魔族に対するイメージがあるのだろうし。
「少数の部隊でも実行可能な目的ではありますな。実際の成否は別にしてですが……」
「卿自身はどう見ているのだ?」
伯爵がロイター子爵に問い掛けた。
「バルーカに転移させることができるのなら、逆にバルーカに呼び寄せる……召喚することもできるのかもしれません」
「呼び寄せる?!?! バルーカに魔族の部隊をか!
むぅぅ~~~~」
「あくまでも推測ですが…………」
「しかしながら、召喚するにしても転移後の砦にはロクな戦力は残っていませんでしたが?」
「必ずしも砦から召喚するとは限らないじゃないか」
「すると南方大陸から…………」
「転移システムだけでもその仕組みがわかればいいのだが……」
「砦には手掛かりはなかったのですか?」
あれだけ大きな音がしたんだ。それなりの魔道具の起動音のはずだ。
「砦に突入した部隊が南へ飛んで行く飛行種を目撃してる。まず転移に関連する魔道具を積んで退避したとみて間違いないだろう」
「砦の内部に何か痕跡などは?」
「今のところ見つかってはいない。
そうだ! 砦と言えばツトム君に頼みたいことがあったんだ。
ナナイ君!」
衝立の向こうの待機所からナナイさんが姿を現した。
「詳しい事は彼女に聞いて欲しい。
ナナイ君、後は任せるよ」
「はい、お任せ下さい」
再び軍議に混ざるロイター子爵を尻目にナナイさんと天幕を出た。
「先ほどは素晴らしい活躍をされたようですね」
「かなり苦戦しましたけどね」
「魔力の消耗具合はいかがです?」
「そこそこ消耗していますが…………どうしたのです?」
「実はツトムさんに砦の清掃をお願いしたくて……
砦を占領したのはいいのですが、内部の匂いと汚れが酷くて再利用はおろかまともに調査すらできない有様で……」
そう言えばあの砦施設の内部の臭気は強烈だったな。
「軍のほうで掃除しようとしたのですが吐き出す者や気分の悪くなる者が続出してどうにもならず、このままでは司令部すら砦に移せません。どうか……」
数の力で押し切ろうとしたけどダメだった訳か。
依頼料を吹っ掛けたいところではあるけど…………軍は金払いは冒険者ギルドと違って良かったし今回はアレコレ言わずに素直に引き受けておくか。
この依頼自体の報酬が提示されないのも俺の働き次第ってことなんだろうし。
「わかりました。
その代わり自分からもお願いがあるのですが」
「なんでしょう?」
「砦の外で魔法の練習をしていいですか?…………ちゃんと離れたところに壁を作ってやりますので。
今日の戦闘で課題だったり調整しないといけない箇所が見つかりまして」
「そのくらい構いませんよ。行かれる際は私に一声掛けてからお願いします」
「それと、昨日話したお風呂の件、明日以降で構いませんか?
さすがに魔力が…………」
実は魔力そのものは常時魔法を使いまくる状態でもない限り砦を浄化魔法で綺麗にしながらでも、あるいは魔法の練習しながらでもスキルLv8である魔力回復量が上回るので何も問題ない。
先ほどの戦闘である程度出血しているし疲れてもいるし非常に面倒そうな案件なので明日以降にしたい、というだけのことである。
「そうですね。
砦の施設なども魔物によって破壊されているところが多いですし、予定通り北門広場に建てていいか再度確認したほうがいいのかもしれません。
作業は明日まで延期しましょうか」
「もう少し余裕を持って3日後ぐらいからの作業開始にしませんか?」
「砦の清掃をした後で専門家と現場を視察してその結果を上に伝えませんと……」
俺の言った事聞こえているよね?
「急いては事を仕損じると言います。ここはじっくりと計画を練り直すべきなのでは?」
「明日の一番から作業に取り掛かれるように万全の準備しておきますので」
ワザと? ワザとなの?
「何はともあれまずは砦に行きましょうか」
俺の発言を全力スルーして砦に向かおうとするナナイさん。
ひょっとして歩いて行くつもりなのか?!
「ちょっと待ったぁ!
砦へなら飛んで行きませんか?」
「魔力………………厳しいのですよね?」
ちょっと疑わし気な目つきで聞いてくるナナイさん。
「この程度の短距離なら問題ありませんよ。さぁ、行きましょう!」
「きゃっ」
やや強引にナナイさんを抱っこして飛び立った。
本当は思いっきり抱き締めてナナイさんの柔らかさを堪能したかったのだけどここはさすがに自重する。
砦の内側に降りると各施設から臭気が漏れているようで砦内には異様な匂いが立ち込めている。
「施設内部の匂いが強烈でどうしようもなくドアや窓を全開にして換気しているのです」
兵士達も匂いが漂ってこない風上に避難しているようで誰も見当たらない。
「とにかく始めましょうか」
鼻と口を手拭いで覆って施設の中に入り浄化魔法で綺麗にする。
俺の浄化魔法は見えている範囲内であればそれなりの広さの部屋でも一気に浄化できる。
死角になっている机や椅子の裏なども綺麗にするが、他の物と接している場合は浄化されない。
例えば本棚を壁から少し離して浄化魔法を使うと壁も本棚の裏側も綺麗になるが、本棚の底面と床部分は綺麗にならない。
さらには空気中に漂う匂いの粒子はどうにもできない。
固体や液体を綺麗にすることはできても気体には効果がないのが浄化魔法だ。
砦の施設……そのほとんどが兵士用の宿舎と思われるが、建物のドアや各部屋の出入り口の多くが周りの壁ごと破壊されていた。
通常のオークでも人族サイズの建物を使うのは厳しいだろうが、それよりも大型なオークの上位種やオーガなんかが出入りするとこうなるのだろう。
一つ一つの施設を中に入って一部屋ずつ綺麗にしていくが、段々と面倒臭くなってきた。
一般的な住居と違って割と画一的な造りをしていて浄化作業もスムーズに行えているのだが、何せ数が多い上に単調な作業の繰り返しで飽きるのだ。
試しに建物外部から中を一気に浄化できないか試してみる。
上手くいかない。
もう一度……
失敗だ。
52
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。
しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。
全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。
クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる