異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

文字の大きさ
286 / 454

283

しおりを挟む
 偵察から帰り出発する。
 なるべく魔物と遭遇し易そうなルートを指示するが、基本的には東に向かう中での微調整に過ぎないのでどのぐらい効果があるのかは不明だ。

 問題だったリュードパーティーも戦闘を重ねていくにつれ、オークを倒すまでの時間が段々と短くなっていった。
 少し慣れてきたのと、ロザリナの指導のおかげだろうか?
 リュード達は10代の多感な時期の割には大人のロザリナの言うことを従順に聞いている。
 自分達が足を引っ張っているという自覚があるのかもしれない。

 しかし、この日7体目となるオークとの戦闘でリュードパーティーは再び苦戦するようになってしまった。
 理由は単純明快で、魔術士が魔力切れで攻撃できなくなったためである。
 ダメージを全く与えられてないこの魔術士の魔法でも、牽制という意味においてはパーティー内で大きな役割を果たしていたようで、魔法攻撃がなくなった途端に他の攻撃陣の手数がガクっと減ってしまった。

「ツトム様……」

 『こればかりは自分ではどうにもできないので何とかして下さい』といった感じの視線で訴えてくるロザリナ。
 何とかと言われても魔力を分け与えるとかできない以上俺でもどうにもできないわけで……

 とりあえずは全体に休憩を宣言して対策を考える。
 1番の問題はこの魔術士が放つ魔法の攻撃力の無さだ。
 俺なら1発、スクエラさん(=タークパーティー所属)でも2~3発で倒せるオーク相手に10発以上撃ち込んで尚且つそれが牽制にしかならないのではすぐに魔力が枯渇しても仕方ないだろう。
 魔法に関する基礎的なことをアドバイスできない俺ではこの問題を解決に導くことはできない。

 であるなら、牽制攻撃の代替えとなり得る手段を提案するのはどうだろうか?
 それなら何も魔法攻撃に拘る必要はなくなる。

「ちょっとよろしいですか?」

 魔術士に話し掛ける。
 年齢は16か17歳ぐらいだろうか?

「ハ、ハイ」

「魔力切れみたいですが、槍で攻撃してみませんか?」

「槍……ですか……」

 収納から最近全然使わなくなった槍を渡す。

「あなたが攻撃参加することで他の仲間もかなり助かると思うのです」

 本当は俺達が昇格するためだけどね。

「……や、やってみます」

 受け取った槍で素振りをする魔術士。
 まるっきり素人という感じはしないぞ。

「ひょっとして以前使ってました?」

「実戦経験はありませんが、道場に通っていた時に一通り習いました」

 魔術士なのに道場に通うものなのだろうか?
 いずれにせよ過去に習っていたのなら素人の俺が口出しするべきではないだろうな。

「ロザリナ!」

 事情を話して後の指導を任せた。



 魔術士が槍で攻撃参加するようになったリュードパーティーは、最初こそ連携が乱れていたものの徐々に慣れていき、その日の終わり頃には魔力の回復した魔術士が槍と併用して魔法でも攻撃してオーク撃破に大きく貢献できるようになった。


 初日のスコア
 ウェルツパーティー …14体
 ムドゥークパーティー…13体
 リュードパーティー …11体

 明日1日中狩りができるのなら、ウェルツパーティーとムドゥークパーティーは明日中にノルマを達成できるかもしれない。
 リュードパーティーも3日目にはなんとか……


 夕食は皆にルルカとディアの作ったシチューを振る舞い、テントなどを設営して夜間見張りをする順番を決めた。

 テントと言っても現代風の一般的な個人用の三角の物ではなく、遊牧民系の中が広いパーティー単位で使うタイプだ。
 かなりしっかりとした造りなので値段もそれなりで、8万ルクもした。
 休憩用の小屋くらいなら魔法で簡単に作れる俺にとってはそんな高価な物は必要とは思わなかったが、1ランク下の価格帯の物と比較すると材質からしてかなり差があったので購入に踏み切った。
 今後、魔法を使うことがはばかられる状況とかがあるかもしれないので持っておいて損はないだろう。
 組み上がった状態で収納に入れておくので、地面に杭を打つだけで即使用できるのは大変便利だ。

 一方で収納持ちの魔術士がいないパーティーはどうしてるのかと言うと、駆け出しの頃は俺が王都への護衛でやったような寝袋か最悪そのまま地面に寝たりする。
 テントを持参できるようになってもパーティーで分担して持ち運ばなくてはいけないし、野営の都度組み立てて出発する際は分解しないといけないのでかなり手間が掛かる。
 上の等級のパーティーでも魔術士がいないと寝袋で野営なんて割と普通で、戦力度外視で収納魔法が使えるというだけで下の等級の魔術士をパーティーに加えるケースもある。


 見張りは6等級の各パーティーにロザリナ達と俺1人の5交代制で、リュードパーティーを1番手にしてウェルツパーティーから1人念のため応援として加えさせた。
 2番手に1人少ないウェルツパーティー、3番手がムドゥークパーティー、4番手にロザリナ・サリアさん・ゼアータさん、最後が俺である。

 前線の森の中での野営は初めてだったが、夜間だからといって魔物が凶暴になるわけでも活発化するわけでもなく、集落や集団が近くにない限りは特別危険ということはないらしい。
 もちろん絶対ではないので警戒を疎かにすることはできないが。
 夜行性の動物もいるがこちらが集団だと襲ってはこないとのこと。

 最初ロザリナに聞いていたのだけど、途中サリアさんとゼアータさんも説明に加わって来た。
 1人だけ布団を敷いて寝るわけにもいかず、寝袋も当然ながらロザリナとは別々なので、テントの中で女性3人に男1人という状況もあり少しだけ悶々としてしまった。
 2人から見えないようにロザリナと手を繋ぐ。そのまま指を絡ませながら眠りに落ちていった……




……

…………


「少しいいだろうか?」

 ロザリナに起こされて3人と見張りを交代して30分ほど経った頃、同行しているギルド職員のコーディスが声を掛けてきた。
 こちらが頷くと焚き火を挟んだ対面に腰を下ろした。
 コップを出して果汁水を注いで渡す。

「すまない」

 雑談しに来たって感じではないな。
 わざわざ俺が1人になるのを狙って早く起きてきたっぽい。

「特殊個体に関する君の意見を聞きたくてね」

 特殊個体……黒オーガのことだった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
申し訳ありません
今回も明日の朝に加筆修正します
7時~9時頃を予定しています

追記)加筆修正完了しました
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。 しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。 全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。 クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

処理中です...