異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 ゴォ! ゴゴォ! ゴゴォ! ゴゴゴゴォ! ゴゴゴゴォ! ゴゴゴゴォ! ……………………

「わっ! わっ?」
「ちょっ!?」
「うおぉっ?!」
「なに?」
「こ、これは?」
「キャッ?!」

 地面ごと上へと押し上げる土魔法だ。
 木々が密集してる中だとかなりの自然破壊になってしまうが、幸いにもこの森は木と木の間隔が広いので惨事には至ってない。
 というか…………

「ロザリナ、そちらから何やら可愛い悲鳴が聞こえたが?」

「…………ツトム様の気のせいかと」

「確かにロザリナの声だったんだけどなぁ」

「空耳でしょう」

 ポーカーフェイスで動じることのないロザリナ。
 ふむ…………

「この魔法は地中にむ巨大生物も引き上げてしまうことがある。
 俺たちは護衛なんだから警戒を疎かにしないように」

「は、はい!」

 もちろん大嘘である。
 警戒態勢に入ったロザリナの背後から、先端を丸くした土刺しをニョロニョロと伸ばす。
 そして無防備な脇をツンツンと、

「きゃあっ?!」

 やったぁ! と思ったのも一瞬で。
 ロザリナは素早く振り向き、土刺しの棒を一刀の下に叩き斬ってしまった。
 ずっと見てたのに、いつ抜剣したのかまったくわからなかった。

 そうなんだよな。
 ロザリナは買った当初は5等級相応の剣士だったけど、その後冒険者として活動せずに修練に専念したことで剣の腕を上げたのだった。
 武闘大会では互角とまでは言えないものの、3等級相手に堂々と戦ってさえいる。
 まぁそれはそれとして、

「(ニヤニヤ)」

 ロザリナの可愛い悲鳴を聞けて、余は満足じゃ。

「くっ…………
 存じませんでした。ツトム様がそんなに剣の修行をお望みだなんて!?」

「へっ??」

「帰ってから早速みっちりと指導しますので」

「いや…………ほら、今俺は休暇中だし?」

「ええ、承知しております。ですから時間はたっぷりとありますよね?」

「その時間は皆で過ごす時間で…………」

「そんなことはどうでもいいのよっ!!」

 本日2回目のメディーナさんの乱入だ。

「ちょっとアナタ! こんなに魔力を使って正気なの?
 確かに凄い魔法だけど…………仮にも私たちを護衛してるのでしょう!
 もしもの時に戦えなくてどうするのよっ!!」

「ツトムの魔力は無尽蔵だから平気」

 スクエラさんはちょっと黙ってようね。

「無尽蔵ではありませんが、戦闘する分には支障はないですから」

 確かにこの地面を広範囲に押し上げる魔法はアホみたいに魔力を消費するが、回復量も半端ない俺にとっては何も問題はない。

「ウソ…………
 ひょっとして国で一番というのも本当なの…………?」

「お~~い、メディーナ。食事を出してくれ。
 ツトムと教官の分も用意して欲しい」

「あっ、ハ~イ」
「タークさん、いただきます」

「付き合ってもらってるんだ。これぐらいはさせてくれ」




……

…………


「っ?!」

 メディーナさんが収納から出したスープを飲んだ際に衝撃が走った。

 (このスープは中華だ!)

 厳密にはちょっと違うが、中華料理系の味付けに近いことは間違いない。

 この世界のスープは大まかに分類すると、これまでは3種類だけだった。
 シチュー系のこってり味なスープ。主に富裕層向け。
 クズ野菜たっぷりのあっさりとした感じのスープ。庶民向けで、安価な食堂や宿屋で出て来るのもコレだ。
 そして普通の野菜を使って色々と味を調ととのえる中層階級向けのモノ。普段ルルカが作るスープでもある。

 当然地方に行けば郷土料理みたいなものがあるのだろうし、以前ルルカと訪れた漁村なんかには魚を使った汁物もあっただろう。ディアのヘクツゥーム族にも独自の料理があるようだしな。
 そういった料理に出会えないのは、これまでの俺の移動先が主に各国の中心都市かその近辺だったからと思われる。
 この国の王都に始まり、アルタナ王国のレグの街と王都、グラバラス帝国の帝都ラスティヒルにコートダールの商都とルルカの実家のあるワナーク。
 漁村のような極一部を除けば、まぁ見事に首都とその近郊ばかりだ。

「このスープはどこで?」

「王都でたまたま入った料理屋のスープよ。
 美味しかったから大量に作ってもらったの。
 夫婦でやってる小さい店でね、小国家群から逃げてきたと言っていたわ。
 帝国に住むのが嫌でこの国まで来たらしいの」

 小国家群とは大陸北西に位置する紛争地帯のことだろう。
 戦乱を嫌って逃れてきた感じか。

「帝国が嫌というのは?」

 差別でもされるのだろうか?

「そこまでは聞いてないけど、たぶん過去に帝国が小国家群を何度か攻めたからではないかしら」

 今でも敵国みたいな認識ということか。
 帝国には過激派なんてのもいるしな。

 ただ俺にとって重要なことは、中々手掛かりを見つけられずにいた白米の情報が得られるかもしれないということだ。
 小国家群と言うからには小さな国が乱立しているのだろう。
 中には米を主食とする国があるのかもしれない。

 メディーナさんに店の場所を聞く。
 王都に行った時にでもその料理屋に寄って詳しく話を聞こう。



 昼食後も狩りを続ける。
 それは午後2度目の戦闘を終えた後のことだった。
 地図(強化型)スキルに南から魔物の接近を知らせる赤点が表示される。
 これまでの魔物との遭遇時には複数だった赤点が、たった1つだけ。
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