異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 黒オーガか? あるいは高技量型か?
 タークさん達には避難してもらわないと…………待てよ。ここで俺が言うのも、スキルの存在を知らない彼らからしたらおかしな話だし。

「…………! ……?!」
「……!!」

 前方から微かに声が聞こえてきた。
 別のパーティーが戦っているのか?

 最前列のエルさんが手で合図してパーティー全体が停止する。

「何かしら?」

 悩んでる時間はないか。
 よしっ!
 もう出たとこ勝負だ!

「ロザリナ!」

「は、はぃ?!」

「タークさん達を連れて北へ向かえ!」

「ツトム様、一体どうされ…………」

 ロザリナからの返事の途中で南へと飛んだ。



 極めて近距離の飛行なので最高速度に到達するまでもなく一瞬で到着する。

「…………ジスぅぅ!!」
「逃げてっ!?」
「く、くそぅ!」

 (やはり黒オーガかっ!!)

 奴だ!
 両手にトンファーブレードを持つ二本角の黒オーガ。
 盾持ち冒険者を斬り伏せたところだった。

 俺は着陸態勢に入って飛行魔法を切り、すぐさま零式改の発動準備に入る。
 初っ端にぶっ放して倒してしまおう、という計画だ。


 昨日からこの二本角との戦闘を頭の中で何度もシミュレートしてみたのだが、コートダールで二本角を倒した時のような土甲弾を連射して押し込んだ状態にしてから零式改を放つ、という攻撃方法が通用しないだろうとの結論に至った。
 理由は、この二本角が獣人の獣化移動並みの高機動で動くことができるからだ。
 しかも!
 獣人の場合は獣化移動中だと攻撃も防御もできないが、この二本角は高機動中に攻撃することが可能なのだ。(防御に関しては不明)
 まさに獣化移動の上位版といった感じだ。
 前回戦闘時の高機動による攻撃は、その時一緒に戦っていたグリードさんの機転で何とか回避できたが、今回の戦いは自分1人だけなので回避はまず不可能と思うべきだろう。

 その戦いの時もそうだったが、斬られたからといって必ずしも死ぬわけではない。
 まして俺には回復魔法がある。皆の反応から推し測るに、この世界でトップクラスの回復魔法を扱えてると思われる。
 即死または意識さえ手放さなければ、まず間違いなく治癒は可能だ。
 だが…………
 この二本角は俺が回復魔法を使うことを知っている。
 なので一太刀でこちらの命を絶ちに来ることも考えられる。
 よって二本角に攻撃させない、これを大前提として戦い方を組み立てることにした。


 零式改の発動準備をしながら着地して…………

 (ぐっ?!)

 ここは平坦な地面ではない。森の中の凹凸のある地面だ。
 地中から顔を覗かせてる木の根に引っ掛かってしまったのだろう。
 右足に激痛が走った。
 ケガのことはとりあえず後に回して、

「逃げて!」

 着地に失敗して片膝を着いた姿勢だったが、構わずに零式改を発動させた!

 ヴォォォォンッ!!

 発動後すぐさま足に回復魔法を掛ける。

 (くそっっ!!)

 黒オーガは倒せなかった。

 零式改は風槍9個分の魔法力を途中まで超圧縮して撃ち出すのだが、拡散気味に放出する感じなので敵に与えるダメージが非常に不安定なのだ。
 それに片膝を着いたままの姿勢で撃ったのも悪かったかもしれない。
 もっともまったくの無傷ということはないだろうから、本来ならどの程度のダメージを与えたのかじっくりと観察したいところである。
 だが、

 ギロッ!!

 黒オーガが俺を睨み付け、トンファーブレードを構えようとした瞬間に、

 ズドォォォォン!! ズドォォォォン!! ズドォォォォン!! ズドォォォォン!! …………

 土甲弾を連射して………………………………飛行魔法で逃げた。



 一撃離脱。
 これが今回俺が思い描いた戦い方だ。
 二本角に攻撃させないとなると、この方法しか思い付かなかった。
 零式改で与えたダメージによっては止めを刺すことも考えていたが、パッと見て目立ったダメージは無さそうだったので退くことにした。
 念のために数発の土甲弾を二本角の足元に放ち、土煙を発生させて煙幕としている。前回コイツが退く際のやり方を真似させてもらった。
 戦い方としては若干の後ろめたさを感じるものの、模擬戦ではなく命懸けの実戦なので甘い考えはしないように気を引き締める。


 北へと飛んですぐに、さっき逃がしたパーティーを見つけた。
 5人パーティーみたいで、ケガ人の両脇を2人で抱えて移動している。そのせいで早歩き程度の移動スピードになってしまっていた。

 (マズいな…………)

 二本角からの距離が近過ぎる。
 地図(強化型)スキルはまだ二本角を捉え続けている。動きは止まってるようだが…………

 5人パーティーの所へと着地した。

「オ、オマエは!?」
「彼を助けて!」

 (ああ、そうか。斬られた傷口を抑えながらだったから遅かったのか)

 回復魔法を掛ける。
 とりあえず傷口は塞がったが、ずっと意識を失ったままだ。
 かなり出血してたようだし、もしかしたら助からないかも…………
 それでも今は移動が最優先だ。

「後ろは自分が守るので移動して」

「倒したんじゃないのか?」

「倒せてないから早く!!」

「わ、わかった」

 もう1人の盾持ちが装備を魔術士の収納に預けケガ人を背負った。

「行くぞ!」

 移動を再開したパーティーの後を追う。

 (そういやこの人達って…………)
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