異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 二本角を捉え続けていた地図(強化型)スキルの索敵範囲ギリギリまで移動してきた。
 移動の間、表示されてる赤点に動きはなかった。

 (なぜ動かない?)

 一向にこちらを追ってくる気配がない。
 ひょっとして見た目は無事でもかなり深刻なダメージを与えていたとかだろうか?
 もしそうであれば、すぐにでも引き返して討ち取ることも可能なのだけど…………

 (あるいはそう思わせて俺を誘おうとする奴の罠か?)

 俺が止めを刺そうと再び姿を現した瞬間に、高機動で斬り付けて一気にこちらの命を絶つ狙いなのかも。
 零式改の射程は短い。
 ようい、ドン! の勝負では、こちらの間合いに入る前に斬られてしまう。
 先ほどのように、奇襲気味の先制攻撃でないと確実な魔法発動は…………

 いや、待てよ…………二本角の視点で考えてみよう。
 奴からしたら以前戦った魔術士が、突如現れて知らない魔法を撃ってすぐに退却したのだ。
 果たして追いかけることができるだろうか?
 俺の不自然な行動を誘いと捉えるのではないか?

 (奴は動かないのではない。動けないのだ!)

 こちらを追うことも退くこともできずに、また俺が攻撃してくることを警戒してその場で迎撃態勢をとっているのだ。

 (それなら奴が動けないうちにこのまま安全に退却してしまおう。
 止めを刺しに行って斬り殺されてもつまらないし)

 二本角を表していた赤点は、索敵範囲外へと消えて行った。



 俺が警戒を緩めたのが伝わったのだろうか? パーティーの移動速度が少し落ちて、リーダーらしき剣士が最後方にいる俺の傍まで来た。

「礼は言わないからなっ!」

 それだけ言って前方へと戻って行った…………

 このパーティーを助けたのはたまたまなので、そこまで恩を着せるつもりはない。
 とは言え、あまり気分の良いことではないのは確かだ。

「彼のことは許してあげてね」

 今度は女性魔術士が声を掛けてきた。

「あなたに5人抜きされた昇格試験以降、周りから結構色々と言われたのよ。
 彼はリーダーだから私達以上に気にしていてね、素直になるにはもう少し時間が必要かしら」

 見覚えがある人達だと思ったけど、このパーティーは5等級昇格試験の時の対戦相手だった。
 色々言われたって、魔術士なんかに5人抜きされて~、みたいな感じにからかわれたのかな。

「昇格試験のこと、まだ言われてたりします?」

「今は平気よ。
 ほら、あなたがメルクの3等級相手に勝ったあたりから言われなくなったわ。
 試験の時はラックさん以外誰も知らなかったから」

 ラックさんというのは昇格試験の時に解説する冒険者マニアなお人だ。

 さっきの剣士はヤコールだったか。二刀流からの手数が多いタイプだったはず。
 未だ意識が戻らないまま背負われてるケガ人がホッジスか。盾の使い方が評価されてて、タークさんパーティーのラルカスさんが憧れてるのだっけ。
 ひょっとしてあの二本角に襲われてケガ人1人だけで済んでるのも、ホッジスが懸命に防いだからなのかもな。
 そしてこの女性魔術士は、昇格試験の際に俺がお腹に全力で拳を叩き込んで勝った相手だ。

 んん? 俺に見せるようにわざとらしくお腹をさすって…………まだ痛いってか?

「…………あなたとの試合の後でね、実は妊娠していたことがわかったの」

「ええっっ?!」

 俺の大声に意識のないホッジスを除いた全員が振り返った。

 ちょ、ちょっと待て。
 まさか俺が拳を叩き込んだせいで流…………

「…………というのは冗談なんだけど」

 オイィィィィィィ!!
 例え冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろう!!

「ふふふ。
 その感じなら少しは仕返しできたかしら?」

「くっ…………」

 くそぉぉぉぉ!
 肝が冷えた、というのはこういうことを言うのだろう。
 もう金輪際、模擬戦で女性のお腹には攻撃しないと固く誓う。

「それでホッジスは助かる?」

「何とも言えないです。
 傷自体は治してますので、後は本人の気力次第かと」

「そう…………」

 回復魔法でも失った血液と体力を戻すことはできない。
 何とか助かって欲しいが…………




……

…………


 結局ロザリナやタークさん達と合流できたのは、森を抜けてバルーカメルク間の街道でのことだった。
 そこで各々のパーティーごとに別れることになり、ヤコールパーティーはバルーカに帰還、タークさんパーティーは消耗少なくまだ日も高いことから西の森で狩りを続けることになり、俺とロザリナは壁外ギルドへと向かった。



「…………つまり、特殊個体は無傷かもしれないのですか?」

「それはないです。何らかのダメージは負ってるはずです。
 ただし、軽傷の可能性はありますが…………」

「わかりました」

 壁外ギルドでミリスさんに二本角との戦闘を報告した。
 正規の依頼を受けたわけではないので報告などする必要はないのだが、ミリスさんには俺の担当ということで迷惑を掛けてるらしいので、一応フォローしておく。

「それでは私はこれから城内ギルドのほうにこの情報を伝えに行きます。
 実際に戦われたツトムさんが直接伝えるのが良いと思うのですが…………」

「ほら、そこはミリスさんが行くことで壁外ギルドの立場を強くしてもらわないと」

「はぁ…………」

 本当は避けたいだけだったりする。
 レドリッチとか…………
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