366 / 454
363
しおりを挟む
二本角を捉え続けていた地図(強化型)スキルの索敵範囲ギリギリまで移動してきた。
移動の間、表示されてる赤点に動きはなかった。
(なぜ動かない?)
一向にこちらを追ってくる気配がない。
ひょっとして見た目は無事でもかなり深刻なダメージを与えていたとかだろうか?
もしそうであれば、すぐにでも引き返して討ち取ることも可能なのだけど…………
(あるいはそう思わせて俺を誘おうとする奴の罠か?)
俺が止めを刺そうと再び姿を現した瞬間に、高機動で斬り付けて一気にこちらの命を絶つ狙いなのかも。
零式改の射程は短い。
ようい、ドン! の勝負では、こちらの間合いに入る前に斬られてしまう。
先ほどのように、奇襲気味の先制攻撃でないと確実な魔法発動は…………
いや、待てよ…………二本角の視点で考えてみよう。
奴からしたら以前戦った魔術士が、突如現れて知らない魔法を撃ってすぐに退却したのだ。
果たして追いかけることができるだろうか?
俺の不自然な行動を誘いと捉えるのではないか?
(奴は動かないのではない。動けないのだ!)
こちらを追うことも退くこともできずに、また俺が攻撃してくることを警戒してその場で迎撃態勢をとっているのだ。
(それなら奴が動けないうちにこのまま安全に退却してしまおう。
止めを刺しに行って斬り殺されてもつまらないし)
二本角を表していた赤点は、索敵範囲外へと消えて行った。
俺が警戒を緩めたのが伝わったのだろうか? パーティーの移動速度が少し落ちて、リーダーらしき剣士が最後方にいる俺の傍まで来た。
「礼は言わないからなっ!」
それだけ言って前方へと戻って行った…………
このパーティーを助けたのはたまたまなので、そこまで恩を着せるつもりはない。
とは言え、あまり気分の良いことではないのは確かだ。
「彼のことは許してあげてね」
今度は女性魔術士が声を掛けてきた。
「あなたに5人抜きされた昇格試験以降、周りから結構色々と言われたのよ。
彼はリーダーだから私達以上に気にしていてね、素直になるにはもう少し時間が必要かしら」
見覚えがある人達だと思ったけど、このパーティーは5等級昇格試験の時の対戦相手だった。
色々言われたって、魔術士なんかに5人抜きされて~、みたいな感じにからかわれたのかな。
「昇格試験のこと、まだ言われてたりします?」
「今は平気よ。
ほら、あなたがメルクの3等級相手に勝ったあたりから言われなくなったわ。
試験の時はラックさん以外誰も知らなかったから」
ラックさんというのは昇格試験の時に解説する冒険者マニアなお人だ。
さっきの剣士はヤコールだったか。二刀流からの手数が多いタイプだったはず。
未だ意識が戻らないまま背負われてるケガ人がホッジスか。盾の使い方が評価されてて、タークさんパーティーのラルカスさんが憧れてるのだっけ。
ひょっとしてあの二本角に襲われてケガ人1人だけで済んでるのも、ホッジスが懸命に防いだからなのかもな。
そしてこの女性魔術士は、昇格試験の際に俺がお腹に全力で拳を叩き込んで勝った相手だ。
んん? 俺に見せるようにわざとらしくお腹をさすって…………まだ痛いってか?
「…………あなたとの試合の後でね、実は妊娠していたことがわかったの」
「ええっっ?!」
俺の大声に意識のないホッジスを除いた全員が振り返った。
ちょ、ちょっと待て。
まさか俺が拳を叩き込んだせいで流…………
「…………というのは冗談なんだけど」
オイィィィィィィ!!
例え冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろう!!
「ふふふ。
その感じなら少しは仕返しできたかしら?」
「くっ…………」
くそぉぉぉぉ!
肝が冷えた、というのはこういうことを言うのだろう。
もう金輪際、模擬戦で女性のお腹には攻撃しないと固く誓う。
「それでホッジスは助かる?」
「何とも言えないです。
傷自体は治してますので、後は本人の気力次第かと」
「そう…………」
回復魔法でも失った血液と体力を戻すことはできない。
何とか助かって欲しいが…………
…
……
…………
結局ロザリナやタークさん達と合流できたのは、森を抜けてバルーカメルク間の街道でのことだった。
そこで各々のパーティーごとに別れることになり、ヤコールパーティーはバルーカに帰還、タークさんパーティーは消耗少なくまだ日も高いことから西の森で狩りを続けることになり、俺とロザリナは壁外ギルドへと向かった。
「…………つまり、特殊個体は無傷かもしれないのですか?」
「それはないです。何らかのダメージは負ってるはずです。
ただし、軽傷の可能性はありますが…………」
「わかりました」
壁外ギルドでミリスさんに二本角との戦闘を報告した。
正規の依頼を受けたわけではないので報告などする必要はないのだが、ミリスさんには俺の担当ということで迷惑を掛けてるらしいので、一応フォローしておく。
「それでは私はこれから城内ギルドのほうにこの情報を伝えに行きます。
実際に戦われたツトムさんが直接伝えるのが良いと思うのですが…………」
「ほら、そこはミリスさんが行くことで壁外ギルドの立場を強くしてもらわないと」
「はぁ…………」
本当は避けたいだけだったりする。
レドリッチとか…………
移動の間、表示されてる赤点に動きはなかった。
(なぜ動かない?)
一向にこちらを追ってくる気配がない。
ひょっとして見た目は無事でもかなり深刻なダメージを与えていたとかだろうか?
もしそうであれば、すぐにでも引き返して討ち取ることも可能なのだけど…………
(あるいはそう思わせて俺を誘おうとする奴の罠か?)
俺が止めを刺そうと再び姿を現した瞬間に、高機動で斬り付けて一気にこちらの命を絶つ狙いなのかも。
零式改の射程は短い。
ようい、ドン! の勝負では、こちらの間合いに入る前に斬られてしまう。
先ほどのように、奇襲気味の先制攻撃でないと確実な魔法発動は…………
いや、待てよ…………二本角の視点で考えてみよう。
奴からしたら以前戦った魔術士が、突如現れて知らない魔法を撃ってすぐに退却したのだ。
果たして追いかけることができるだろうか?
俺の不自然な行動を誘いと捉えるのではないか?
(奴は動かないのではない。動けないのだ!)
こちらを追うことも退くこともできずに、また俺が攻撃してくることを警戒してその場で迎撃態勢をとっているのだ。
(それなら奴が動けないうちにこのまま安全に退却してしまおう。
止めを刺しに行って斬り殺されてもつまらないし)
二本角を表していた赤点は、索敵範囲外へと消えて行った。
俺が警戒を緩めたのが伝わったのだろうか? パーティーの移動速度が少し落ちて、リーダーらしき剣士が最後方にいる俺の傍まで来た。
「礼は言わないからなっ!」
それだけ言って前方へと戻って行った…………
このパーティーを助けたのはたまたまなので、そこまで恩を着せるつもりはない。
とは言え、あまり気分の良いことではないのは確かだ。
「彼のことは許してあげてね」
今度は女性魔術士が声を掛けてきた。
「あなたに5人抜きされた昇格試験以降、周りから結構色々と言われたのよ。
彼はリーダーだから私達以上に気にしていてね、素直になるにはもう少し時間が必要かしら」
見覚えがある人達だと思ったけど、このパーティーは5等級昇格試験の時の対戦相手だった。
色々言われたって、魔術士なんかに5人抜きされて~、みたいな感じにからかわれたのかな。
「昇格試験のこと、まだ言われてたりします?」
「今は平気よ。
ほら、あなたがメルクの3等級相手に勝ったあたりから言われなくなったわ。
試験の時はラックさん以外誰も知らなかったから」
ラックさんというのは昇格試験の時に解説する冒険者マニアなお人だ。
さっきの剣士はヤコールだったか。二刀流からの手数が多いタイプだったはず。
未だ意識が戻らないまま背負われてるケガ人がホッジスか。盾の使い方が評価されてて、タークさんパーティーのラルカスさんが憧れてるのだっけ。
ひょっとしてあの二本角に襲われてケガ人1人だけで済んでるのも、ホッジスが懸命に防いだからなのかもな。
そしてこの女性魔術士は、昇格試験の際に俺がお腹に全力で拳を叩き込んで勝った相手だ。
んん? 俺に見せるようにわざとらしくお腹をさすって…………まだ痛いってか?
「…………あなたとの試合の後でね、実は妊娠していたことがわかったの」
「ええっっ?!」
俺の大声に意識のないホッジスを除いた全員が振り返った。
ちょ、ちょっと待て。
まさか俺が拳を叩き込んだせいで流…………
「…………というのは冗談なんだけど」
オイィィィィィィ!!
例え冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろう!!
「ふふふ。
その感じなら少しは仕返しできたかしら?」
「くっ…………」
くそぉぉぉぉ!
肝が冷えた、というのはこういうことを言うのだろう。
もう金輪際、模擬戦で女性のお腹には攻撃しないと固く誓う。
「それでホッジスは助かる?」
「何とも言えないです。
傷自体は治してますので、後は本人の気力次第かと」
「そう…………」
回復魔法でも失った血液と体力を戻すことはできない。
何とか助かって欲しいが…………
…
……
…………
結局ロザリナやタークさん達と合流できたのは、森を抜けてバルーカメルク間の街道でのことだった。
そこで各々のパーティーごとに別れることになり、ヤコールパーティーはバルーカに帰還、タークさんパーティーは消耗少なくまだ日も高いことから西の森で狩りを続けることになり、俺とロザリナは壁外ギルドへと向かった。
「…………つまり、特殊個体は無傷かもしれないのですか?」
「それはないです。何らかのダメージは負ってるはずです。
ただし、軽傷の可能性はありますが…………」
「わかりました」
壁外ギルドでミリスさんに二本角との戦闘を報告した。
正規の依頼を受けたわけではないので報告などする必要はないのだが、ミリスさんには俺の担当ということで迷惑を掛けてるらしいので、一応フォローしておく。
「それでは私はこれから城内ギルドのほうにこの情報を伝えに行きます。
実際に戦われたツトムさんが直接伝えるのが良いと思うのですが…………」
「ほら、そこはミリスさんが行くことで壁外ギルドの立場を強くしてもらわないと」
「はぁ…………」
本当は避けたいだけだったりする。
レドリッチとか…………
105
あなたにおすすめの小説
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。
しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。
全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。
クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる