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次の日、ナナイさんに言われたことを考慮して昼食を食べてから王都へ向かった。
この国(=ベルガーナ王国)の王都は三重の城壁に囲まれていて、中心部の王城・貴族街と役所関連のある第1区画・住宅街と商業関連の第2区画が3つの城壁で区切られていて、城壁の外側にバルーカよりも大規模な壁外区が広がっている。
第2区画までは自由に飛ぶことが許されているので、第1区画の城門のところで降りて王城へと歩いていく。
これまで王城には2回足を運んでいるが、その2回とも魔術研究所に立ち入る許可を申請しに軍務部を訪れたので、王城の中までは入っていない。
※軍務部は城の周囲に幾つか建てられている塔の中の1つにあるため。
国王はイリス姫様の弟だ。確かエリッツだったか?
あの南砦奪還作戦が新国王の功績になるとかだったから、まだ即位してから日が浅いはずだ。
これからそのエリッツ陛下に、この国の最高権力者に会うことになる。
正直胃が痛くなりそうだ。
王城へ向かう足取りが段々と重たくなっていく。
家に帰りたくなる弱気な心を何とか奮い立たせて王城に到着した。
アルタナ王国の王城には正面? 正門? から入ったことがあるのだが、それはレイシス姫が一緒にいたからで、今回は端にある通用口みたいなところから入らなければならない。
受付というか詰所のようなところで召喚状を出す。
「名は?」
「ツトムと申します」
詰所の中で何やらやり取りしてるが…………
「冒険者ツトム」
「はい」
中から出てきたのは、妙に体格の良い男性だった。
衛兵にしては何も装備してないので、城の使用人だろうか?
「ついて来い」
言い方や態度が一々上からだな…………いや、時代背景的にはこれが普通か。日本では殿様のことを『上様』と呼ぶぐらいだし、例え使用人でも庶民に対して態度が大きくなるのだろう。
むしろバルーカの対応が丁寧過ぎるのだ。
領主である伯爵やロイターのおっさんの人柄もあるのだろうが、魔族との最前線であるバルーカは領民の理解と協力がなければ成り立たないという事情もあるのだろう。
※バルーカの住民の多くが軍関係者なのも大きな理由である。
ん?
案内する男は城の中へは入らずに…………この方向は軍務部がある塔に向かっている?
てっきり玉座がある荘厳な広間的なところで謁見するものだと思っていたけど違うのだろうか?
どこへ行くのか説明ぐらいしてくれてもよさそうだが、そのような丁寧な対応は期待できるはずもなく…………
男は軍務部がある塔のやや奥にある知らない塔へと入って行く。もちろん俺もそれに続く。
階段を3階まで上がる。ここが最上階みたいだ。
奥にあるかなり立派な扉の前に立つ。
コンコン!
「失礼します。
閣下、例の冒険者を連れて来ました」
「通せ」
「ハッ!
…………中へ入れ」
どうやら別の人間と会わされるみたいだ。
まぁ国王に会わなくて済むのであれば、それはそれで構わないというかむしろラッキーかも。
部屋の中へと入る。
ロイター子爵の執務室とは比べ物にならないぐらいの立派な内装の部屋だ。
派手さはないものの、一目見て高級品とわかる品々が棚に並んでいる。
バカでかい執務机の向こうに恰幅の良いおっさんが座っており、こちらを見ていた。……というか俺を睨んでる?
「報告では聞いていたが…………若いな」
なんか、褒美をもらえそうな雰囲気が何一つないんですけど。
「ワシの名はコーディ・ルーディック。この国で軍務卿を任されておる」
軍務卿ねぇ…………えっ?! 軍務卿!!
またエライ大物が出てきたな!
「初めまして。バルーカで冒険者をしておりますツトムと申します」
「うむ。
陛下との謁見の前にここへ呼んだのは、お主に聞かねばならないことがあったからだ」
げげっ?!
国王ともこの後会わなきゃいけないのか!
「単刀直入に問おう。
お主、ワシに仕えぬか?」
また勧誘かよ。
どうしてこの俺が知らないおっさんの誘いに乗るとでも思っているのだろうか?
まぁこんな時には便利な姫様バリアを…………
「申し訳ありません。
自分はイリス殿下にお仕えしていまして…………」
「知っておる。
むしろお主が殿下に仕えてるからこそ、こうしてワシ自らが誘っておるのだ」
あ、あれ??
まさかの姫様バリア通用せず?
こんな太ったおっさんに鉄壁な姫様バリアを貫通されて狼狽する俺。
ていうか、姫様に直で仕えている俺は言ってみれば旗本なわけで…………
そんな俺を引き抜こうなんて徳川将軍に対する裏切りじゃあ…………
『殿中でござる! 殿中でござる!』
…………って、これは忠臣蔵だからちょっと違うか。
うん。少し落ち着いてきた。
「つまり軍務卿閣下は…………」
い、いや、落ち着いて考えてもこれってヤバくね?
こんな王家に弓引くようなことを持ち掛けておいて、断った俺を無事に帰すだろうか?
どこかに刺客が潜んでいるかも。
どんなに魔法が強くても、心臓をズブッと一突きされれば殺されてしまうのだ。
とりあえず何かあったら一気に窓から飛び出す心構えだけはしておいて…………
「王家に反旗を掲げるおつもりなのですか?」
「なっ?!
バ、バカなことを申すな!
姫派なんぞに収まってないで、とっとと国王派に鞍替えせよと申しておるのだ!!」
あー、なんだ、そういうことか。
どうやらルビコン川は渡らずに済みそうだ。
ん? 待てよ。
これはこれで厄介事のような…………
この国(=ベルガーナ王国)の王都は三重の城壁に囲まれていて、中心部の王城・貴族街と役所関連のある第1区画・住宅街と商業関連の第2区画が3つの城壁で区切られていて、城壁の外側にバルーカよりも大規模な壁外区が広がっている。
第2区画までは自由に飛ぶことが許されているので、第1区画の城門のところで降りて王城へと歩いていく。
これまで王城には2回足を運んでいるが、その2回とも魔術研究所に立ち入る許可を申請しに軍務部を訪れたので、王城の中までは入っていない。
※軍務部は城の周囲に幾つか建てられている塔の中の1つにあるため。
国王はイリス姫様の弟だ。確かエリッツだったか?
あの南砦奪還作戦が新国王の功績になるとかだったから、まだ即位してから日が浅いはずだ。
これからそのエリッツ陛下に、この国の最高権力者に会うことになる。
正直胃が痛くなりそうだ。
王城へ向かう足取りが段々と重たくなっていく。
家に帰りたくなる弱気な心を何とか奮い立たせて王城に到着した。
アルタナ王国の王城には正面? 正門? から入ったことがあるのだが、それはレイシス姫が一緒にいたからで、今回は端にある通用口みたいなところから入らなければならない。
受付というか詰所のようなところで召喚状を出す。
「名は?」
「ツトムと申します」
詰所の中で何やらやり取りしてるが…………
「冒険者ツトム」
「はい」
中から出てきたのは、妙に体格の良い男性だった。
衛兵にしては何も装備してないので、城の使用人だろうか?
「ついて来い」
言い方や態度が一々上からだな…………いや、時代背景的にはこれが普通か。日本では殿様のことを『上様』と呼ぶぐらいだし、例え使用人でも庶民に対して態度が大きくなるのだろう。
むしろバルーカの対応が丁寧過ぎるのだ。
領主である伯爵やロイターのおっさんの人柄もあるのだろうが、魔族との最前線であるバルーカは領民の理解と協力がなければ成り立たないという事情もあるのだろう。
※バルーカの住民の多くが軍関係者なのも大きな理由である。
ん?
案内する男は城の中へは入らずに…………この方向は軍務部がある塔に向かっている?
てっきり玉座がある荘厳な広間的なところで謁見するものだと思っていたけど違うのだろうか?
どこへ行くのか説明ぐらいしてくれてもよさそうだが、そのような丁寧な対応は期待できるはずもなく…………
男は軍務部がある塔のやや奥にある知らない塔へと入って行く。もちろん俺もそれに続く。
階段を3階まで上がる。ここが最上階みたいだ。
奥にあるかなり立派な扉の前に立つ。
コンコン!
「失礼します。
閣下、例の冒険者を連れて来ました」
「通せ」
「ハッ!
…………中へ入れ」
どうやら別の人間と会わされるみたいだ。
まぁ国王に会わなくて済むのであれば、それはそれで構わないというかむしろラッキーかも。
部屋の中へと入る。
ロイター子爵の執務室とは比べ物にならないぐらいの立派な内装の部屋だ。
派手さはないものの、一目見て高級品とわかる品々が棚に並んでいる。
バカでかい執務机の向こうに恰幅の良いおっさんが座っており、こちらを見ていた。……というか俺を睨んでる?
「報告では聞いていたが…………若いな」
なんか、褒美をもらえそうな雰囲気が何一つないんですけど。
「ワシの名はコーディ・ルーディック。この国で軍務卿を任されておる」
軍務卿ねぇ…………えっ?! 軍務卿!!
またエライ大物が出てきたな!
「初めまして。バルーカで冒険者をしておりますツトムと申します」
「うむ。
陛下との謁見の前にここへ呼んだのは、お主に聞かねばならないことがあったからだ」
げげっ?!
国王ともこの後会わなきゃいけないのか!
「単刀直入に問おう。
お主、ワシに仕えぬか?」
また勧誘かよ。
どうしてこの俺が知らないおっさんの誘いに乗るとでも思っているのだろうか?
まぁこんな時には便利な姫様バリアを…………
「申し訳ありません。
自分はイリス殿下にお仕えしていまして…………」
「知っておる。
むしろお主が殿下に仕えてるからこそ、こうしてワシ自らが誘っておるのだ」
あ、あれ??
まさかの姫様バリア通用せず?
こんな太ったおっさんに鉄壁な姫様バリアを貫通されて狼狽する俺。
ていうか、姫様に直で仕えている俺は言ってみれば旗本なわけで…………
そんな俺を引き抜こうなんて徳川将軍に対する裏切りじゃあ…………
『殿中でござる! 殿中でござる!』
…………って、これは忠臣蔵だからちょっと違うか。
うん。少し落ち着いてきた。
「つまり軍務卿閣下は…………」
い、いや、落ち着いて考えてもこれってヤバくね?
こんな王家に弓引くようなことを持ち掛けておいて、断った俺を無事に帰すだろうか?
どこかに刺客が潜んでいるかも。
どんなに魔法が強くても、心臓をズブッと一突きされれば殺されてしまうのだ。
とりあえず何かあったら一気に窓から飛び出す心構えだけはしておいて…………
「王家に反旗を掲げるおつもりなのですか?」
「なっ?!
バ、バカなことを申すな!
姫派なんぞに収まってないで、とっとと国王派に鞍替えせよと申しておるのだ!!」
あー、なんだ、そういうことか。
どうやらルビコン川は渡らずに済みそうだ。
ん? 待てよ。
これはこれで厄介事のような…………
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