異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 国王派(旧王子派)と姫派。
 王位を巡る両派閥の争いは姫派が敗北し、エリッツ王子が新たな国王として即位した。
 イリス姫は自らの派閥を解散して新体制へ恭順の意思を示し、王都を追われバルーカへと移ることになる。
 単身バルーカへ来られた姫様に、なぜだかわからないまま忠誠を誓って唯一の姫派となったのがこの俺だ。

 ※正確に言うと、姫様は王都から幾人かの侍女を連れて来ている。
 ナナイさん曰く、侍女は数年で入れ替わるので派閥や臣下にはカウントされないらしい。
 結婚して退職するからだろう。むしろ結婚相手を探すために侍女勤めするのかもしれない。

「姫派では出世もままなるまい。
 お主ほどの魔法の腕があれば、国王派でより高みを目指すことも可能だろう」

 出世とか1ミクロンほども興味は…………まぁ俺も男子なわけで、将軍とかへの憧れはちょっとだけある。
 でも姫様を裏切ってなんて100パーセントあり得ない。
 未だにどういう経緯なのかわからないが、俺は姫様に忠誠を誓ったのだ。
 その場の勢いでテキトーなことを言っただけとはいえ、姫様に永遠を捧げると約束したのだ。
 当然ながらここは断固拒否以外にない!!

「あの…………」

 でも待てよ。
 ここは国王派の重鎮である軍務卿の考えや思惑を探る絶好の機会ではないか?
 ロイターのおっさんの話では、国王派は勝ったのにも関わらず未だに姫様に敵意を抱いてるとのことだった。
 現在姫様の身にどのぐらい危険が迫っているのか、唯一の姫派としては確めたほうがいいだろう。

「国王陛下と殿下(=イリス姫)は御姉弟で仲が良いと伺っております。
 殿下もバルーカにおいて穏やかな日々を過ごされていますし、もう姫派とか気にしなくてもよろしいのでは?」

「ふんっ。
 今の状況や本人同士の仲など関係ないわ」

 そこはロイターのおっさんも言ってたな。

「エリッツ陛下にお世継ぎが生まれてない以上、今もイリス殿下が王位継承者筆頭であることにいささかも変わりはない」

 国王の年齢や結婚してるのかは知らないけど、この前即位したばかりなのにもう世継ぎを望まれているのか…………
 催促されながらエッチをするとか、俺にはちょっと無理だなぁ。

 ん?
 殿下が今も王位継承者筆頭か…………

「不敬なことながら、陛下に万が一のことがあった場合に殿下が後を継がれることの何が問題なのでしょう?」

「殿下が既に自らの派閥を解散させたことは知っておろう。
 事態が変化したとしても殿下の下に再び戻る者は極少数にとどまる。
 そう幾度も仰ぐ旗を変えるなどできはせぬのだ。
 臣下からの支持がなければ継承者筆頭など名ばかりでしかない」

 国王派は元姫派の動向を警戒しているとの話だったが、そこまででもなさそうだ。

「それにその時には我らは我らで別の王を擁立することになる」

「別の?」

「王位継承権を持つ者は御親戚筋にも幾人かおるのだ。
 これまでも王にお子が恵まれぬ時は、御親戚筋から王を迎えて王家を維持してきた歴史がある」

 そういや王家と高位の貴族は姻戚関係にあるのだったか。

「もうわかったであろう。
 殿下が至尊の冠を戴くことは、もはやあり得ぬということを。
 今のままではお主が日の目を見ることもない。
 我らの下へ来い」

 う~~む…………
 ここらあたりが限界かなぁ。
 結局大して探ることもできなかったけど…………仕方ないか。

「大変申し訳ありません。
 状況がどうあれ、自分はイリス殿下に永遠の忠誠を誓った身なれば」

 むっ!?
 軍務卿の眼光が鋭く…………
 太った体型からは似つかわしくないプレッシャーを感じる。
 伊達に国家の要職を担っているわけではないってことか。

「構わぬのだな?」

「はい。
 お誘いはありがたいのですが、こればかりは如何ともし難く」

「惜しいが…………致し方あるまい」

「できますれば、今後は殿下とも仲良くして頂ければ幸いなのですが。
 本当に殿下はバルーカで静かな日々を送られていますし」

「無論何事もなければ我らとてそれに越したことはない。
 何事もなければ…………な」

 うわぁ…………
 この人、何かあること前提で話してる感じだよ。
 このままだとヤバいか?
 変なことを企まないように少し釘を刺しておこうかな。
 あまり刺激しないようにほんのちょっとだけ…………

「皆一丸となって魔族と戦いましょう。
 自分も殿下の代理として全力で魔族相手に戦います。
 殿下の敵は自分にとっても敵でありますので」

「…………そうか。よく覚えておこう」

 穏便に釘を刺すことができた…………と思いたい。
 効果があるといいが…………


 チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪

 軍務卿が机の上にある鈴を鳴らした。

「お呼びでしょうか?」

「用は済んだ。
 この者を城内へ連れていけ」

「ハッ!」

 国王派に鞍替えしないなら用はない。とっとと出て行け、ってことなんだろう。

「ついて来い」

 おそらく軍人であろう人の案内で通用口から王城の中へと入る。

 中はアルタナ王国の王城と同じく、大理石みたいな高級な石材が使われているピカピカな床や、通路には何をモチーフにしたのかよくわからない芸術感満載な彫刻が置かれている。

「ここで呼ばれるまで待つように」

 2階へと上る階段の横にある待機所みたいなスペースに椅子が置いてあり、既に3人が腰掛けて待っていた。
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