異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 王を含めた5人が一斉に俺のことを見た。

 (何というプレッシャーをかけてくるんだ?!)

 まるで黒オーガと対峙してる時のような物凄い圧を感じる。
 少なくとも軍務卿と誰だかわからない人以外の3人には、戦闘経験なんかないだろうに。

「構わぬ、申してみよ」

「は。
 特殊個体を討ち取れたのは、自分1人だけの手柄ではありません。
 現地コートダール軍が、身を賭して突撃してくれなかったら討ち取れなかったです」

 これだけはきちんと言っておかないとな。
 自分だけの手柄にしてしまっては、亡くなった人に申し訳がなさ過ぎる。

「コートダールからの書簡では、そのようなことは書かれてなかったが…………」

「気を遣ったのでしょうな。
 先ほども申しましたが、あちらでは帝国の手前この者の功績を喧伝することができませぬ。
 その穴埋めとして全面的にこちら側の手柄とする、ということかと」

「ならば、あちらへの返書ではその件に関して触れておかねばなるまいな。
 …………とはいえ、だ」

 国王は一旦言葉を切って、この場の全員を見た。

 本当にこの若者は自分とそう歳の変わらぬ年齢なのだろうか?
 一睨みされただけで尋常ならざる圧を放ってくる。
 精神的な年齢においてはかなりの年下なはずなんだが…………
 まだ魔族が擬態していると言われたほうが納得できるぐらいだ。(当然ながらそのような反応はないけど)

 これが幼い頃より帝王学を修めた者との絶対的な差なのだろうか?
 …………いや。
 そこにいる軍務卿・外務卿・内務卿の3人だってそれなりの貴族で、幼少期より帝王学を修めてるはず。
 そんな3人が束になってもこの若き王1人に勝てぬのだ。
 それに日本の教育だって負けてないはずだ。
 政治や軍事面では劣るだろうが、それ以外の分野では決して劣ってはいない。
 むしろ時代差を考慮すれば勝っていてもおかしくはないぐらいだ。

 つまり、圧倒的な個人としての能力差か、あるいは器の違いというやつなのだろう。

「そちの働きが見事であった点にいささかの変わりはない。
 よって褒美を与える。
 何か望みでもあれば申すがよい」

「ありがたき幸せに存じまする。
 それでは…………」

 この展開は予想していた。
 予め用意していた回答は、『王家が秘蔵している魔道具を見せてもらう(可能であれば頂戴する)』だった。
 しかし、どうせ王様にお願いするのだったら…………

「陛下のお力でバルーカやメルクに強い者を派遣して頂けないでしょうか?」

「ほぉ…………強者をのぉ…………」

「本来であれば、自分のような若輩者がこの場に呼ばれること自体おかしな事と思いますゆえ」

 黒オーガと戦闘可能な者と手を組めれば、それほどリスクを負わずとも倒すことが可能なはず。
 ゲルテス男爵が持つ魔剣クラスの魔道具なんかは望んでもくれないだろうから、微妙な効果の魔道具をもらうよりもましな選択だと思う。

「冒険者ギルドは内務卿の管轄であったな」

「は。
 前王時代にギルド長を呼び出し、類似の要請を行っております。2ヵ月ほど前のことです」

 割と最近のことじゃないか。
 もしかして、本部が2等級のチェイスを派遣してきたのも、国からの要請に端を発したことなのかもしれない。
 だったらもう少し強いパーティーを寄こしてもらいたいものだが。

 そして冒険者ギルドの管轄は内務卿になるのか。
 イメージ的には上は軍なんだが、街中の依頼も多いし商業ギルドも絡んでいるしで、内務卿の監督下にあるのも妥当なことなのかもしれない。

「その時は、他国に比して冒険者の活動が活発でないことと、軍への負担を軽減させることが主な理由でありました。
 ギルド側からも努力する旨の回答を得ております」

「ふむ、まだ2ヵ月ではここで余が新たに、というわけにもいかぬな」

 冒険者ギルドではなく、軍から強い人を派遣して欲しい! とは、とてもじゃないが言い出せる雰囲気ではない。
 発言力無き身の悲しさか…………

「そちの要望は心に留めておくが、例えこれを叶えたとて褒美とは言えぬであろう。
 改めて望みを申すが良い」

 改めてと言われても…………

 ここで俺の脳裏に浮かんできたのは、姫様のお美しいお姿だ。
 この謁見の前に軍務卿と話したことが大きいのだろう。
 国王自身はともかく、その臣下が姫様の排除を望んでいるのであれば…………

 別に俺がもらったとしても良くない?

 果たしていけるだろうか?
 国王からしたら姉をくれと言われるわけで、逆鱗げきりんに触れてしまうことにならないだろうか?

 これは賭けだな。
 国王にまた会える機会なんてこの先あるかどうかわからないのだから、ここで大勝負をするのは理にかなってるはずだ。
 分の悪い勝負であってもその見返りが姫様であれば、危険を冒す価値は十二分にある!

 よ、よし。言うぞ。
 激怒されたら無礼討ちされる前に一気に外へ飛び出そう。
 窓の場所と衛兵の位置を確認して逃走ルートの確保を…………って軍務卿のとこでも同じことをしてたような…………

「いかが致した?
 望みが特にないのであれば、余のほうで用意するが」

「は、はい。それでは…………」

 言え。姫様をくれと言ってしまえ。

「畏れながら、陛下の姉君であらせられるイリス様を…………」
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